

阿蘇の広大な田園のなかに、そっと浮かぶように立つ小高い丘——小嵐山。
その頂に立てば、目の前に広がるのは千年以上前の人びとの記憶が眠る「中通古墳群」。
この場所には、観光地にはない静かな呼吸がある。風と時間の音を聴きながら、かつてこの地を見守った人たちの思いに触れる旅が始まる。
目次
第一章 小嵐山——“もうひとつの嵐山”が阿蘇にある


京都の嵐山に似た風景を持つことから名づけられた「小嵐山」。
木の手すりに囲まれた石段を一歩ずつ登ると、振り返るたびに田のきらめきが広がっていく。
途中には小さな地蔵が立ち、登山というより“祈りの道”を歩くような心地になる。
第二章 中通古墳群——阿蘇を治めた人びとの眠り


5世紀頃に築かれた前方後円墳と円墳の群れ。
阿蘇の大地を治めた豪族「阿蘇君(あそのきみ)」の墓と伝えられ、熊本県の指定史跡にもなっている。
田畑の中に点在する古墳は、まるで“島”のように浮かび、古代から続く大地との対話を感じさせる。
第三章 山頂の光景——風とともに時が止まる

山頂に立つと、阿蘇五岳が雲を背にそびえ、眼下には古墳群が広がる。
まるで地図の上に過去と現在が重なって見えるようだ。
風が頬をなで、稲穂の波がざわめく。その音が、かつてここに生き、そして眠る人々の息づかいのように感じられる瞬間がある。
結び

小嵐山は観光名所というより、“感じる場所”だ。
登るたびに見える景色が変わり、降りるころには心が少し澄んでいる。
阿蘇を訪れたなら、一度はこの小さな山を歩いてみてほしい。
時間の流れの中で、自分の呼吸と大地の呼吸が重なるのを感じられるはずだ。