沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。
この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。
目次
理学療法士からマンゴー農家へ転身!家業を引き継ぐことへの決意
「昨年まで東京で理学療法士の仕事をしていました」と、話す久米島熱帯果樹園の山川(やまかわ)さん。
久米島熱帯果樹園は創園者である祖父・仁徳(じんとく)さんのパイナップル栽培が始まりです。その後、父・仁正(じんせい)さんがマンゴー栽培を取り入れて、現在に至っています。
過去に「農業はやりたくない!」という思いを抱えて、久米島を離れたという山川さん。
それでも、「農園を継ぐ」という決断をした経緯を話して下さいました。
「介護老人保健施設の理学療法士でした。リハビリの対象となる方はご高齢です。たくさんのご家族の『生き方』を見て、じゃあ自分の家は?自分の親の面倒は誰がみるのか?誰も面倒を見ないのは…嫌だ。農園の世代交代が現実的になってきた事も重なって、久米島に戻る決意をしました」。
自分と向き合い、葛藤を乗り越えて人生の大きな舵を取り直した山川さんの心の内には「家族」への温かく強い思いがありました。
マンゴー栽培の要は「木に逆らわないこと」
「マンゴーの木に逆らわない、無理をさせない。状態を見ながら、必要な作業を積み重ねていく。これが大事なんです」と、山川さん。
最適な栽培環境を整えるために有機肥料を使った「土づくり」への工夫も凝らしています。
「ビニールハウスの土には、山の腐葉土を使っています。なので、土に菌糸(きんし)がたくさん伸びているんですよ!」と話すその表情には喜びがいっぱいです。
「菌糸」は、土の中の菌類から出る糸のこと。これが広がっていると、土の中に菌類が定着していて栄養のある土醸が育まれているという目印になります。
「自分は農業を始めてまだ1年。栽培の中で何が良くて悪いのかも分かりません。なので、とにかく親父の農業を見様見真似で勉強しています。親父であり師匠です!」。
親子であり師弟でもある。お互いが切磋琢磨しながら「本当においしいマンゴー」を作るために、奮闘されている様子がヒリヒリと伝わってきました。
「美味しいマンゴーを食べて、久米島の自然に癒されて元気になって欲しい!」
「美味しいマンゴーは『香り、酸味、甘味』のバランスが良いです。食べたらすぐに分かりますよ」と、山川さん。農園に来た方には必ず試食してもらうそう。何十年来のお客様もいらっしゃるそうで、創園から真摯に栽培を続けて来られたことが伺えます。
「久米島は何もない島です。でも、星、夕日、海、自然が本当に豊かで美しい。だから、何もないのを求めに来てください。疲れてたら癒されに来てください。マンゴーを食べて、久米島の時間をゆっくりと使って、元気になって欲しいです。これが一番なんです」と、優しく話す山川さん。
これまで出会ってきた人、これから出会う人。「命」への労りと喜びの気持ちを沿えたマンゴーが、久米島から日本中に届けられています。