沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。
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2023年2月沖縄県の久米島に小さなブルワリーが開業しました。
15年前、東京から移住した島袋陽子(しまぶくろ・ようこ)さんは、ビールの仕込みから瓶詰め、事務の仕事まで自身で行なっています。気温と湿度の高い沖縄の気候に合うようドライな飲み口のビールを製造しており、IPAやセゾンなどレギュラー5種類を揃えています。
醸造所は、久米島の伝統工芸である久米島紬から“Tumugi”と名付けられ、島の人からは“ツムギビール”と呼ばれています。島袋さんは、ビールは人と人とをつなげ、その場を楽しくするのに一番最適なお酒ではないかと考えており、ツムギビールを選んで飲んでもらえると嬉しいと話します。
フットワーク軽く久米島に移住
島袋さんは、大学三年の春休みに久米島へリゾートバイトをしにきたきっかけで、「卒業したら久米島に移住しよう」と思い立ち移住しました。「住んでみて、合わなければ帰ればいい」とフラットに考えていたため、自然体で久米島に溶け込みました。公務員として働き、結婚をし、子供もでき、気づけば15年経ちました。
東京に住んでいたときは、見栄を張ったりして、疲れてしまうこともありましたが、久米島では背伸びせずありのままでいられるとのことです。また久米島で仲良くしてくれる人たちは、皆いい人たちで、いつも助けてもらっているので、いつか恩を返していきたいと感謝の言葉を口にします。
久米島でビールを作っていけたらいいな
島袋さんは、元々ビールが好きだったため、「久米島でビールを作って生きていけたら楽しいだろうな」と思っていたとのこと。そんな折、沖縄市に小さいビール製造所があるのを知り、見学に行き、「この規模なら久米島でもできるかも」と思ったそうです。その後からビール醸造について本格的に情報収集を始め、研修を受講したり、融資の相談をしたりと動き出しました。
しかし公務員として働いており、子供もいるので、まずは夫にビールを作りたいという相談をしたところ、意外にすんなりと「いいんじゃない」と了承を得ることができました。退職した後は、ビアバーとカフェを営業しながら、設備の発注を行ったり、申請書を作成したりと醸造免許取得に取り組みました。
準備期間で最も苦しかったことは、中国から輸入したタンク4基が沖縄の税関で1か月半ほど止められてしまったことだそうです。タンクに使われているシリコンが日本の審査基準に合わなかったため、税務署の倉庫に行き、シリコンをすべて外して破棄して、タンクのみを久米島に運んだそうです。
ビールが楽しめる島にしたい
島袋さんに今後の展望について伺うと「事業を大きくしたいわけではなく、今の規模でずっと作り続けられたら幸せ」とのことです。今は瓶ビールを久米島の空港、ホテル、フェリーターミナル、スーパー二軒と野菜の直売所などに卸していますが、「島内の飲食店に置いてもらいたい」と話します。
「車えびそば、軟骨ソーキなど、各飲食店の看板メニューに合うオリジナルビールを醸造し、料理とビールを一緒に楽しめるようにしたい。 ビールの飲み比べが各飲食店でできる、久米島をビールの島にすることが大きな夢ですね」と語りました。
島袋さんは肩の力を抜きつつも一歩ずつ着実な歩みで、夢を現実にしていきました。それを支えていたのは、久米島の家族や仲間たち、そしてビールへの愛だと感じられました。いつか久米島の夕景を見ながら島袋さんの醸造したビールを味わいたいと思いました。