貝を通じて喜びを分かち合う。1万点を超える貝を展示しているから気付いた新しい貝の魅力とは【沖縄県宮古島市】

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沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催 価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

宮古島海宝館(以下、海宝館)を運営する有限会社海宝館代表取締役の幸地博美さん(写真左)と広報担当の幸地田佳代(こうち・たかよ)さん(写真右)(写真提供:宮古島海宝館)

宮古島海宝館(みやこじま かいほうかん、以下、海宝館)が開館したのは1997年11月のこと。それから27年間、「貝を通じて人との出会いを大切にしてきました」と話すのは、有限会社海宝館代表取締役の幸地博美(こうち・ひろみ)さん。シェル・ミュージアムには1万点を超える貝が展示されており、貝細工工房では貝を使ったアクセサリー作りを体験することができる。貝の魅力を伝えたくて資料館を開いたが、来館者と接するうちに考えが変わったと博美さんはいう。20年間足を運んでいる人もいるという海宝館の魅力について話を聞いてみた。

海の中の生物は大自然の宝物

子供の頃、河原に行って気になった石を持ち帰ったり、浜辺できれいな貝を拾ってきたことはないだろうか。子どもたちにとって、珍しい形の石やきれいな色の貝は特別なものであり、その日の出来事が輝きはじめるきっかけになることもある。

海宝館館長の幸地和夫さん。海宝館には和夫さんが子どもの頃から集めた貝がずらりと展示されている(写真提供:宮古島海宝館)

館長の幸地和夫(こうち・かずお)さんは宮古島で生まれ育った。子供の頃から貝の美しさに心ひかれて、浜辺に行っては貝を拾ってきた。大人になり素潜り漁を始め、宮古島から離れても海にもぐっては貝を集め続けたという。

「宮古島の美しいさんご礁ときれいな貝を子どもたちに残していきたい」

「貝に限らず海の中の生物は大自然の宝物なんです」

館長の思いが海宝館という名前にこめられている。

誰かの人生とともに貝は生きている

「貝殻の模様や断面の造形など自然が作り出す美しさを伝えたいとミュージアムを作りました」と博美さん。しかし、来館者が貝の前で嬉しそうに話したり、目的の貝を見つけて喜んで笑顔になるのを見ているうちに、貝を見たり触ったりすることで、来館者自身の思い出を引き出しているのではないかと感じたそうだ。貝をきっかけに思い出や思いの丈を打ち明けられる場所。それが海宝館なんだなと。

来館者が経験してきたことは人それぞれ。1万点を超える貝を展示していることで、多くの思い出を呼び起こすきっかけを提供しているのではないだろうか。

(写真提供:宮古島海宝館)

中には海宝館の正面にあるオオジャコガイの前で、ウェディングドレスを着て記念撮影をした方も。「小さい頃から20年間、家族で海宝館に足を運ばれていて。特別な瞬間に海宝館を選んでいただいて、涙が出そうだった」と、博美さんは思い出を話す。

時には思い入れのある貝を求めて海宝館を訪れる人もいるという。「この貝を探していました!」と喜んでもらえることもあれば、残念ながら探している貝を展示していないこともある。離島の宮古島まで来るのだから、思いの強さは想像に難くない。

「おじいちゃんがお孫さんを連れて来館されたことがありました。お孫さんが貝を探していたようです。夏休みを利用されて来たのですが、あいにく展示していなくて、、、」

彼らが海宝館を離れた後に、探していたその貝を見つけた博美さんは、その時の子供の残念そうな顔が頭に浮かんで、見つけた貝をすぐに送ったそうだ。貝が届いて喜んでもらえたという返信があった時、とても安心したという博美さん。「たまたま見つけて」と謙遜するが、館を出たあとのフォローまでは簡単にできることではない。貝を通じて新しい交流が始まった瞬間だ。

仕事ではなく、人としてお付き合いを

※アクセサリー作り体験 真剣な表情で(写真提供:宮古島海宝館)

旅の思い出として、お土産を買ったり、何かを体験したりすることは旅の醍醐味である。大切に保管して時折思い出を楽しむ人もいるだろうが、時間が経つと作ったことも忘れ、どこにしまったか忘れてしまうことも多い。

貝を使ったストラップやブレスレットを作ることができる海宝館ではどうだろうか。

(写真提供:宮古島海宝館)

「8年前に貝細工体験で作ったアクセサリーを身に着けて、毎年おしゃべりに来てくれるお客様がいます。大事にお使いいただいても、紐のような柔らかい部分は消耗したり汚れてしまうもの。気付いたら新しい紐に交換させてもらっています」(博美さん)

初めて訪れてから8年、その間に家族も増えて、今では友だちのように接しているという。

(写真提供:宮古島海宝館)

ほかにも、海宝館で購入したアクセサリーを身に着けて訪れたリピーターがいたそうだ。スタッフが声をかけると10年前に購入したものだという。「気付いてもらえたら嬉しいと思って」という、来館者のひそかなアプローチをスタッフは逃さずしっかり受け止めた。貝のアクセサリーを通じて、ここでも新しい交流が始まった。

「ふれあいというか、ぬくもりというか、最終的にはあったかみがある関係ができて、また訪れたいという場所にしていきたい」と博美さんは話す。

情報 宮古島 海宝館

宮古島海宝館ホームページ

阿部哲也

阿部哲也

宮城県仙台市

第3期ハツレポーター

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