素材が魅せる、宮古島の良さを未来へつなぎたい!島に新たな価値を生むために挑戦するカメラマン: ハナグスクフォトグラフ【沖縄県宮古島市】

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沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。
この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

『台風前の空』。住んでいる人だけが見ることができる、独特な紫色の空。2023年8月夏撮影。

「島の消えゆく景色を未来に残し、次世代につなぎたい」との思いで写真を撮り続けている「ハナグクスフォトグラフ」の波名城優(はなしろ・ゆう)さん。宮古島の広大な海や空、何気なくも趣のある風景などを、数多く写し出す波名城さんは、生まれも育ちも宮古島。開発により激変しつつある宮古島の個性を未来に残すために、新しい挑戦を始めた波名城さんの、宮古島に対する思いはどのようなものか、いくつかの作品を通じて掘り下げてみます。

宮古島の原風景を写真に記録する

『通り過ぎる光』。2023年8月夏撮影。

とある集落で広大な大地に夏の日差しが移り行く瞬間を捉えた写真『通り過ぎる光』には、サトウキビの苗を植える人と、その奥にあるアダン林が日差しに照らされている様子が見え、今までと変わらない、自然の中にある島の人の暮らしを感じることができます。

転勤で地元を離れていた2016年から2019年の3年間に、帰郷の度に島の開発に伴う自然破壊を目の当たりにした波名城さん。実家近くの集落や空き地などにあった、昔からある宮古島らしさまでもが消え、無かったことになるのではないか?と、強い危惧を覚えたといいます。

気づかないものにある価値を見い出す

『漁具の風景』。2023年6月初夏撮影。

なじみのある何気ない風景の中の、新たな発見と深い感動を捉えた瞬間の写真『漁具の風景』には、池間島にかかる池間大橋が見え、海は遠くから続く青色のグラデーションがかかり、浅瀬は白い砂が透けて見えます。突き刺さっているのは、島もずくの網を支える棒で、「海という環境を活用し、大いなる自然と調和する人間の歴史を感じ、そのマッチ具合にしばらくあ然とした」と、波名城さんは語ります。

身の周りにあるものや、見過ごしてしまいがちな瞬間を、カメラで捉える波名城さんの原動力のひとつは、島で暮らす人たちと島言葉で交わり相通じることです。ここで、とっておきの、心温まるエピソードを紹介します。

サシバでつながる、宮古島への思い

『サシバ』。2023年2月冬、息子さんが撮影。

毎年10月ごろ、越冬の中継地として宮古島に飛来するタカの仲間である渡り鳥「サシバ」の撮影に小学2年生の息子さんと一緒に出かけたある日のこと。

波名城さんは近くにいた、ひとりの年配の男性に声をかけました。その男性は急にサシバのことを聞かれて始めは驚いた様子でしたが、「昔のサシバはどんな風だったか」など話し出すと止まらず、懐かしい思い出を次々と語りました。

「自分が子どもの頃はもっとたくさんのサシバが飛んできた」「昔は射って食べたものだった」「群れで来るサシバははるばる遠くから体力を使って飛んで来るからおいしくない」「2月頃まで居着くサシバもいる」などと、島言葉で話すその男性はよくぞ話を聞いてくれたと、うれしそうな顔をしていたとのことでした。

「昔から島に住んでいる人たちは、立ち行く若い世代の人たちから声をかけられることが少ない」と、波名城さんはいいます。

サシバのいる宮古島に居合わせた、その年配の男性と波名城さんが、島言葉を通じて思いを共有できたのは、「宮古島の人たちはシャイだけど心優しい」からではないでしょうか?

ちなみに、サシバは宮古島の唄や民話に登場し、宮古島市のマンホールにも描かれるなど、宮古島との関わりは深く、島の人たちにとっても大きな存在ですが、近年、自然環境の変化により絶滅の危機を迎えているのだそうです。

サシバが宮古島に飛来しなくなる日が来ないように、と願うばかりです。

楽しみながら、自分の特性を生かす

『月桃』。方言名はサンニン。2023年4月春撮影。

親身になって島の人の心を開き、思いを共有すること、そして島を誇りに思う気持ちを大切にする波名城さんは、宮古島の未来へ向けて新しい取り組みに挑戦し始めています。

以前から趣味で続けていた写真撮影は、写真素材のオンライン販売を経て、その後関わったあるプロジェクトをきっかけに、現在は「自らの素材を提供できるWEBデザイナー」を目標に、スキル向上の方法を模索しています。

写真や動画、音源など幅のある素材を自ら手がけて生かせる点は、波名城さんの大きな強みとなるでしょう。

地域の行事や人との関わりにより、場所と時間を共有することが好きな波名城さんは、仕事以外にもさまざまな活動を通じて、宮古島らしさを身をもって実感しているのではないでしょうか。

沖縄の郷土研究家である伊波普猷(いは・ふゆう)がドイツ哲学者ニーチェの箴言(しんげん)を琉歌に翻案した『深く掘れ己の胸中の泉 餘所たよて 水や汲まぬごとに』という言葉が、波名城さんのお気に入りです。

自分が今立っている足元、地元の良さを掘り下げながら、宮古島の良さを未来へつなぐ新たなステップへ、波名城さんは進んでいきます。

島への思いを、未来へつなぐために

『夏の思い出』。島の人々の憩いの場である「崎田川」で遊ぶ息子さん。2023年8月夏撮影。

地域貢献に向けた活動の第一歩として、職能資格「初級地域政策構築士」プログラムを受講中の波名城さんは、地域課題解決型のビジネスモデルを実践することで「宮古の若者が生まれたことに誇りと自信を持ち、宮古島で出来る仕事の選択肢を増やしたい」と、語ります。

さらに、「宮古島にしかない良さを周りに伝え、宮古島だからできることを生み出して、島の発展に向けて活動する人たちと交流し、行動することが今後の私の使命です」とも。

地元・宮古島への熱量あふれる波名城さんの思いはやむことなく、自らと島の未来を切り開くエネルギーとなり続けることでしょう。

『夕凪と子供たち』。2022年10月秋撮影。

ハナグスクフォトグラフ

Instagram:https://www.instagram.com/hanagusuku.photographs/

田畑詞子

田畑詞子

秋田県秋田市

第1期ハツレポーター

1978年秋田県生まれ。清泉女子大学文学部英語英文学科卒。東京で就職後、いったん帰秋。2017年、横浜在住時にライター養成講座に通い、その後地元秋田でWeb記事の取材・執筆活動に携わるようになる。
日々の暮らしをブログに綴ったり、親しい仲間や縁遠くなった友人へ手書きのZINEを書いて送ったりと、書くことが好き。エッセイや小説へも関心がある。

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