筆者は自宅の庭でハーブを育てている。2019年には4種類のハーブを種から育て、苗がたくさんできた。筆者と同じ秋田県秋田市桜に住む榎本ヌエ子さんは、筆者からもらったセージの苗を育て始めた。数ヶ月後、セージに花が咲いたという。見せてもらった榎本さんのセージは、背丈が大きく丈夫で、紫色のきれいな花が咲いていた。一方、筆者のセージの葉は虫に食べられ、花芽は全くつかなかった。なぜ、こうも違うのか?
榎本さんは化学肥料や農薬を使わず、野菜を育てている。榎本さんを取材して「言葉の栄養剤」が何よりも大事であることを知った。ハーブを育てる時は、「特別なことはしないが、よく声をかける」こと。さらに、私たち人間も「言葉の栄養剤」のチカラで元気になることを、榎本さんは筆者に教えてくれた。
「言葉のチカラ」について、榎本さんは30年以上経っても忘れられない出来事を話し始めた。それは、自分の家の畑にやって来た、モグラとの心通うやり取りだ。
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モグラに伝わる、愛ある言葉。
榎本さんは野菜作りを始めた頃、畑の野菜を荒らすモグラに困っていた。そこで、榎本さんはモグラ宛てに、手紙を書いた。「モグラさん、どうかこれで、最後にしてね」と。そして、直径3cmほどのおにぎりを作り、その手紙と一緒にモグラの穴の近くに置いた。その後、モグラは畑に来るのをピタリと止めたそうだ。榎本さんは、モグラにも言葉は通じることを発見した。
筆者はこの出来事を聞いて、榎本さんはどのようにして野菜や草花と関わっているのか、気になった。
「草木もちゃんと、『きいている』」
「愛情を込めて接すると、生き物は自分の気持ちに応えてくれる」と榎本さんは言う。例えば、榎本さんは自宅の畑で育つ春菊を収穫する時、「ちょっと採るけど、ごめんね。子孫を増やすためにがんばろうね」と話しかける。摘んだ春菊を水に挿して根を伸ばした後、畑に植えつけると再び、元気に育つという。
榎本さんは以前、自分の声がけが花の成長を左右することを知った。2つある花のうち、ひとつにはたくさん声をかけ、もうひとつには全く声をかけなかった。その結果、たくさん声をかけた花はよく咲き、全く声をかけなかった花は、よく咲かなかったという。
草花には目も耳もないが、私たち人間の温かい声がけをよく聞いている。この「言葉の栄養剤」は草花に効き、草花の元気を生み出すことができると筆者は知った。そして筆者は、ハーブを育てる時、手をかける以上に声をかけたほういいことを察した。
温かい言葉を、口にしよう。
社会福祉や更生保護などの活動に携わり、多忙な日々を送る榎本さんは、「言葉の栄養剤」のチカラを次のように語った。
「感謝の気持ちを、口に出すこと。相手のためは、自分のためでもある。いい言葉を口にしていれば、健康でいられる」
筆者は、今回の取材を通して、温かい言葉は人と人との繋がりにも大切なことを実感した。疲れていたり、気持ちに余裕がなくなっていたりすると、忘れてしまいがちになる感謝の言葉。「ありがとう」のひと言が、誰かの心を和ませ、自分の心をも温かくする。感謝の言葉は、私たち人間同士の絆を深め、私たちが健康に暮らすための活力を生み出す。