日本初、無垢(むく)材で建てた木造4階建てビルが長崎県壱岐市にあります。木造4階建て、通称「モクヨン」。無垢(むく)材は丸太から切り出したままの木材のことです。人工的に加工されていない、環境に配慮した素材です。また木が持つ本来の香りや木目を生かすことができるという特長があります。この度、「モクヨンビル」の設計などを担当した有限会社睦設計コンサルタントが第27回木材コンクールで農林水産大臣賞と木質開拓賞のW受賞するという快挙を成し遂げました。
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今の時代に合う建築構造に挑戦した「モクヨンビル」
2023年1月に完成した「睦(むつみ)モクヨンビル」は、1階カフェ、2階宿泊施設、3階コワーキングスペース、 4階レンタル個室となっています。
設計などを手がけた有限会社睦設計コンサルタントの一級建築士である松本隆之さんは木造で、新しい建築構造を作ってみたいという思いから、「モクヨンビル」建築に取り組んだといいます。また環境に配慮した「今の時代に合う建物に取り組みたい」という思いもあったそうです。
大臣賞もうれしいけど、材木屋や製材工場からの評価が最高にうれしい
第27回木材活用コンクールには全国から157件の作品の応募がありました。木材の「活用」が評価のポイントとなります。建築関係の大学教授や業界団体の代表などが審査をして賞が決定されます。モクヨンビルは最優秀賞の「農林水産大臣賞」を受賞。また賞の中で唯一審査員らではなく、全国会員の投票によって選ばれる「木質開拓賞」にも選出され、ダブル受賞を果たしました。
松本さんは「これまでさまざまなコンクールに応募し、今回で7つ目の受賞です。大臣賞は初めてなのでうれしい」と喜んでいます。また「全国の会員、つまり材木屋や製材工場など実際に木を扱っている人から、評価してもらえたことがとてもうれしい」と満面の笑みを浮かべました。
本来の木の香りや木目を生かす「あらわし」が評価
1階のカフェ。木の香りとコーヒーの香りの組み合わせを味わいにきてほしい。
土台、柱、梁(はり)の全てが無垢材で構成されている点、また柱やはりの木を露出させる「あらわし」といわれる構造や、田の字プランを中央に吹き抜けを持つように放射状に拡大し四つの空間を製材の柱梁で構成した点(下記写真)が意欲的な建築であると講評を受けました。まさに松本さんが「モクヨンビル」で見てもらいたいと思っていたところが評価を受けるかたちとなりました。
「一般製材(無垢材)を使うことで、本来の木の香りや木目を生かすことができる。温暖化や脱炭素など環境に配慮した建物を実現できた」と松本さんは感慨深げに話しました。松本さんはこれからも環境に配慮し、条件や要望に合った建物の設計に喜々として挑戦されることでしょう、木だけに。
下から天井を映した様子。各階の四隅に部屋を配置し、中央部分は吹き抜けとなっている。
「田の字プランを中央に吹き抜けを持つように放射状に拡大し四つの空間を製材の柱梁で構成した点」を松本さんにメモで説明してくれた。田の字プランとは住戸の居室が田の字のように4つに分けられた間取りのことをいうそう。
睦設計モクヨンインスタグラム:https://www.instagram.com/mutsmi.mokuyonn/?hl=ja
モクヨンビルD・Dカフェインスタグラム:https://www.instagram.com/mokuyonn_dd_cafe/?hl=ja
(写真はすべて筆者が2024年6月に撮影)