
2025年に創業100周年を迎えた株式会社ミスターマックス・ホールディングス。ラジオパーツ店から家電専門店、そして総合ディスカウントストアへと姿を変えながら、「普段の暮らしをより豊かに、より便利に、より楽しく」という理念のもと、人々の暮らしを支え続けてきました。
次の100年を見据え、組織づくりの最前線に立つのが、上席執行役員 人事・ブランド戦略部門管掌 兼 ブランド・コミュニケーション部長の平野 泰啓(ひらの やすひろ)さんです。
店舗や商品の改革を支えるのは人。だから、従業員を大切にすることで会社を変える――。
その背景には、入社後に目の当たりにした「どこか明るさが足りない職場の雰囲気 」がありました。
「従業員が前向きに働ける会社こそ、お客様の暮らしを豊かにできる」との信念を基に「暮らしのエンパワメント・カンパニー」として、次なる未来へ向かっています。
目次
普段の暮らしを支える100年企業
ミスターマックス(MrMax)は、九州、中国、関東地区を中心に展開している総合ディスカウントストアで、それを運営するのが株式会社ミスターマックス・ホールディングスです。
「今のミスターマックスを一言で表すなら、『普段の暮らしを支えてきた会社』だと思っています」
平野さんは、100年企業となった自社をそう表現します。
ミスターマックスは、泰啓さんの曾祖父が自宅の1階でラジオパーツ店として、創業したところから始まります。それから家電専門店、総合ディスカウントストアへと時代とともに事業を変化させてきました。それは「どうすればお客様の暮らしをより豊かにできるか」という問いを持ち続けてきた結果です。

小売は単なる手段。「豊かさとは何か」の問いに向き合う
しかし、泰啓さんは現在、小売業そのものが大きな転換点を迎えていると感じています。
ドラッグストアが食品を扱い、ECでは時間も場所も問わず買い物ができるようになりました。かつて総合ディスカウントストアが強みとしてきた品揃えや価格訴求、買い物の利便性は、さまざまな業態へ広がっています。
「ディスカウントストアというビジネスモデルの価値は、相対的に下がってきていると思っています。だからこそ、お店の在り方や会社の在り方を見直していかなければいけない。『豊かさ』って何なんだろうというところから考え直したいと思っています」
だからこそ泰啓さんは、小売という業態そのものにこだわってはいません。
「結局、小売は手段でしかないんですよね。私たちが本当にやりたいのは、普段の暮らしをあと押しして、豊かさに貢献することです。そこに直結するビジネスであれば、将来的には小売という枠を超えてもいいと思っています」
ミスターマックスが掲げる「暮らしのエンパワメント」という言葉には、商品を売ることではなく、人々の暮らしそのものを支える企業でありたいという思いが込められています。
小売を学んでいない自分ができること。働く人も笑顔に

泰啓さんは大学卒業後、イギリスへ留学し、スポーツビジネスを学びました。その後はハワイへ渡り、スポーツマーケティングやイベント運営に携わります。
2021年、父である現社長の能章(よしあき)さんから突然、「会社に入らないのか」と声を掛けられ、入社を決めました。店舗で1年間、商品部で1年間勤務し、現場から会社を学びました。
そこで泰啓さんが最も驚いたのは、会社を支える人の多さでした。
「実際に店に立ってみると、当たり前なのですが店長がいて、次長(副店長)がいて、社員がいて、パートさんやアルバイトさんがいる。本当にたくさんの人が会社を支えてくれていることがわかりました。『こんなに多くの人のおかげで会社が成り立っているんだ』という感謝の気持ちが、最初にありました」
一方で、もう一つの現実にも気付きます。
「もちろん笑顔で働いている人もいました。でも、全員がそうではありませんでした」
その光景が、泰啓さんの原体験となりました。
「特に小売の勉強をしてきたわけではない僕がこの会社でできる仕事があるとしたら、働いてくれている人たちが、『ミスターマックスで働いていてよかった』『これからもここで働きたい』と思える会社をつくることだと感じました」
その思いが、後にブランド・コミュニケーション部の立ち上げ、そして人事・ブランド戦略部門へとつながっていきます。
「安く商品を提供する」から「暮らしをあと押しする」へ
従業員が「ここで働いていてよかった」と思える会社をつくる。その思いを形にするため、平野さんはブランド・コミュニケーション部を立ち上げました。
最初に取り組んだのは、経営理念の見直しです。ただし、理念そのものを変えたわけではありません。
「『普段の暮らしをより豊かに、より便利に、より楽しく。』という言葉は変えていません。創業以来、大切にしてきた理念なので、その価値は今も変わらないと思っています」
一方で、平野さんは理念の受け止められ方には課題を感じていました。
「これまでは『安く商品を提供する会社』というイメージが強かったと思います。従業員たちも、お客様に暮らしの豊かさ=「安さ」「便利さ」を追求する想いが強かった側面があります。でも、私たちが本当に届けたいのは商品そのものではなく、商品を通じて暮らしをより豊かにすること、そしてミスターマックスに関わる全ての人に『より良い明日』をお届けすることなんです」
そこで、理念の意味を改めて見つめ直し、再解釈をして理念ステートメントとして言語化をしました。その中で、ミスターマックスのあるべき姿を「暮らしのエンパワメント・カンパニー」という言葉で表現しました。
「エンパワメントには『あと押しする』という意味があります。私たちはお客様や地域の皆さんの普段の暮らしをあと押しする会社でありたい。そしてお客様だけではなく、すべてのステークホルダーのみなさまに対して豊かさをお届けする。その思いを、この言葉に込めました。これには当然、従業員も含まれますし、重要な存在だと考えています」
理念は理想ではない。現場に出向き、会社が目指す未来を伝える
泰啓さんは発表後、自ら全店舗を回り、一店舗あたり約2時間かけて説明会を開きました。会社はどこへ向かうのかを、自分の言葉で伝え続けました。
もちろん、現場からは厳しい声も上がったといいます。
「『いいことを言っているのはわかる。でも結局、何をするんですか』『会社はもっと従業員に向き合ってほしい』という声はたくさんありました」
それでも泰啓さんは、その時間にこそ意味があったと振り返ります。
「厳しいことを言ってくれる人ほど、ちゃんと向き合うと会社の話を聞いてくれるようになります。その人たちは会社への期待や愛情があるからこそ言ってくれている。だから、一人ひとりと向き合い続けることが大事なんだと実感しました」

従業員をあと押しすることが、お客様の笑顔につながる
理念を言葉だけで終わらせないため、平野さんは仕組みづくりにも取り組みました。
売上だけではなく、仲間やお客様をあと押しする行動を評価する「エンパワメント表彰」、約2千人の従業員が集まる決起大会など、会社と従業員の距離を縮める取り組みを次々と始めました。
「これまでは、『まず結果を出そう』『もっと頑張ろう』という考え方が強かったと思います。でも、環境が整っていないのに『パフォーマンスを出せ』と言われても難しいんです。同じように、『理念の通りに、あと押しし合いましょう』と言っても人の行動はなかなか変わらない。」
だからこそ、色々な角度から会社が従業員をあと押しする。
「日々の仕事が理念に繋がる仕組みづくりとして、人事制度の改革も進めています。理念を理解して行動する人がきちんと評価される環境をつくっていきます。会社が従業員をあと押しして、そのあと押しされた従業員が輝く。その人たちから価値が生まれて、お客様や地域の皆さんに届いていく。そんな循環をつくりたいと思っています」
従業員に結果を求めることから始めるのではなく、まずは会社が環境を整えて最高のパフォーマンスが出来る状態をつくる。
結局最後は人。「暮らしのエンパワメント・カンパニー」へ

100周年を迎えた今、ミスターマックスは新たな節目を迎えています。
事業環境は変わり続け、小売業も新たな価値を問われる時代になりました。
「僕は、結局最後は人だと思っています」。その言葉には迷いがありません。
「僕一人が新しいビジネスを発明することが、会社を変えるとは思っていません。『暮らしをもっと豊かにしたい』『どうしたらもっとお客様に喜んでもらえるだろう』と前向きに考える人が一人でも増えること。その人たちが新しい挑戦を生み出し、会社を成長させていくんだと思っています」
商品や店舗だけでは築けない企業の価値があります。
人をあと押しし、その人がまた誰かの暮らしを支える。そうした一つひとつの積み重ねが、これからのミスターマックスをつくっていくと泰啓さんは信じています。
100年前、人々の暮らしを支えるために始まった一軒の店は今、「暮らしのエンパワメント・カンパニー」として、未来をつくる企業へと歩み始めています。
印象に残った言葉
「特に小売の勉強をしてきたわけではない僕が、この会社でできる仕事があるとしたら、働いてくれている人たちが、『ミスターマックスで働いていてよかった』と思える会社をつくることだと感じました」
「私たちが本当に届けたいのは商品そのものではなく、商品を通じて暮らしをより豊かにすることなんです」
写真1,4枚目はミスターマックス・ホールディングス様よりご提供いただいたもの、2,3,5枚目は取材時に撮影したもの
企業情報
企業名:株式会社ミスターマックス・ホールディングス
企業理念:普段の暮らしをより豊かに、より便利に、より楽しく
取材対象者名:上席執行役員 人事・ブランド戦略部門管掌 兼 ブランド・コミュニケーション部長 平野 泰啓 氏
設立年月:1950年(昭和25年)12月
創業年月:1925年(大正14年)10月
事業内容:ディスカウントストア「MrMax」のチェーン展開を行うグループ会社の経営管理及びショッピングセンター運営事業
所在地:福岡県福岡市東区松田1丁目5番7号
URL:https://www.mrmaxhd.co.jp/






