ローカリティ!時代の開拓者たち

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「変化を是とする」生産者と消費者を誠実につなぎ続ける東京青果【東京都大田区】

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青果市場は、一般の人が足を踏み入れる機会はほとんどありません。しかし、私たちの食卓に欠かせない野菜や果物を安定的に届けるための重要な役割を担っています。 

東京都中央卸売市場大田市場で青果物の集荷・販売を手掛ける東京青果株式会社(以下、東京青果)は、約80年にわたり、青果流通を取り巻く環境の変化に対応しながら歩んできました。市場法の改正や量販店の台頭、消費者ニーズの多様化によって、競りが中心だった取引は相対(あいたい)取引へと移り、市場のあり方も大きく変わっています。 市場は一般の人が足を踏み入れる機会が少ないがゆえに閉鎖的なイメージを持たれがちですが、代表取締役社長の川田光太(かわだ・こうた)さんは、「変化を是とする文化があったからこそ、ここまで続けてこられた」と話します。 

川田さんが見据える青果市場の役割は、青果物を流通させることだけではありません。消費者の暮らしや価値観の変化を読み取り、その変化を生産者へ届け、日本の農業を支えていくことです。デジタル技術も取り入れながら新たな青果流通の姿を模索する川田さんの経営哲学と、その先に描く未来について聞きました。 

生産者と販売先の間に立ち、日々変わる需給を調整する 

全国各地の産地から集められた野菜や果物は、東京都中央卸売市場大田市場に集まり、仲卸業者を経てスーパーや小売店、飲食店などへ届けられます。大田市場は青果、水産物、花きを扱う国内最大級の総合市場で、東京都に11ある中央卸売市場の中でも、青果物の取扱量はトップです(※)。また全国でみても国内最大規模を誇っており、大田市場での決定価格は全国の市場の指標ともいわれます。

東京青果は、全国の生産者から青果物を集荷し、適正な価格形成を通じて販売先へつなぐ卸売会社です。生産者と販売先の間に立ち、需給を調整するとともに、品質を見極め、市場の情報を産地へ伝える役割も担っています。

※2026年7月23日付『農経新聞』「2025年度・主要青果卸の決算動向」参照 

変わらないイメージと真逆。変わり続ける市場で根付いた「変化を是とする」文化

卸売市場といえば競りが頭に浮かびますが、現在では、競りによる取引は全体の5%にも満たないといいます。昭和40~50年代にはほぼすべてが競りでしたが、量販店の台頭に伴い、事前に価格や数量を決める相対取引が主流になりました。さらに2018年の卸売市場法改正(2020年施行)では、生産地から販売先へ直接配送する取引も可能になり、市場を取り巻く環境は大きく変わっています。

市場は一般に開放されていないためどこか閉鎖的で、昔ながらの仕組みを守り続けている業界という印象を持つ人もいるかもしれません。川田さん自身も、東京青果に入るまでは、市場に対して古い業界というイメージを持っていました。

しかし、入社後に知ったのは、その印象とは真逆の姿でした。

「私も入ってきて、競りはこれだけなのかと結構衝撃を受けました。実は市場は、変わり続けてきた業界なんです」

そうした業界の変化に対して、東京青果は昭和50年代から相対取引をいち早く取り入れるなど、時代を先読みしながら対応してきました。 

川田さんは2017年に東京青果へ入社し経営戦略室で会社全体の戦略づくりに携わった後、2023年に社長へ就任。変化の激しい青果流通の最前線に立ち、実感したのは「変化を是とする」という文化でした。

「古い業界だから変われないのではなく、変わり続けてきたから今も市場があるんです」

社会や消費者の変化に応じて、自らの仕組みを変え続けてきた姿勢こそが、約80年にわたり東京青果が歩みを続けてきた理由だと川田さんは考えています。 

収穫量と品質を見極め、青果物を安定して消費者へ届ける 

青果物は工業製品とはまったく違います。天候によって収穫量は変わり、同じ畑で育った野菜や果物でも品質には個体差があります。100ケース収穫できる予定だったものが、天候不順で70ケースになることも珍しくありません。

その場合、市場は販売先に数量を減らしてもらうのか、別の産地から不足する30ケースを探すのかを判断し、双方と交渉します。必要な量をそろえるためには、各地の生産状況を把握するだけでなく、日頃から産地や販売先との信頼関係を築いておくことも欠かせません。

さらに、出荷時には問題がなくても、市場へ届いた時点で一部が傷んでいることもあります。

「生産者さんが同じものを同じように育てても、10個のうち2個だけ傷んでいることもあるんです」

もちろん、生産者が傷んだものを意図的に送っているわけではありません。青果物にはもともと個体差があり、輸送中の温度変化や収穫時期によっても状態が変わります。たとえばイチゴは、同じ株から採れたものでも、収穫の終盤になるほど傷みやすくなることがあるといいます。

市場の役割は、青果物を右から左へ流すことではなく、日々変化する収穫量と品質を見極め、産地と販売先の間に立って、必要な量と価格を調整することです。

こうした一つ一つの判断と交渉があるからこそ、私たちは売り場で安定して野菜や果物を手に取ることができるのです。

市場は社会とともに変わる。生産者の情報拠点としての役割も

「昔は大きいスイカほど価値がありました。でも、家族構成や暮らし方が変わると、小玉スイカが人気になりました」

かつては大家族が多く、大きなスイカほど喜ばれていました。しかし、核家族化が進み、冷蔵庫のサイズや買い物のスタイルも変化すると、冷蔵庫に入りやすく、持ち帰りやすい小玉スイカの需要が高まったといいます。

さらに時代が進み、近年は、スーパーでカットスイカを購入する人が増えました。無駄なく効率的な大玉スイカの需要が再び高まり始めているのです。

「味だけでは評価できません。需要まで見なければ、本当の評価にはならないんです」

青果物に求められる大きさや形は、家族構成や販売方法、消費者の暮らし方とともに変わります。 だからこそ市場では、消費者が何を求めているのかを見極め、その情報を産地へ届けています。

市場は価格を決めるだけの場所ではありません。

消費者の暮らしの変化を読み取り、生産者へ伝える「情報拠点」でもあるのです。

誠実さは理想論ではなく、経営判断そのもの

必要以上に高く売ったり、安く買いたたいたりしても、得られる利益は限られています。それによって生産者や販売先からの信頼を失えば、毎日続く取引は成り立たないと川田さんは考えています。

だからこそ東京青果では、生産者にも販売先にもうそをつかず、誠実であることを重視しています。ただし、誠実であることは、相手に都合のよいことだけを伝えることではありません。

届いた青果物の品質に課題があれば、産地へ率直に伝えます。そのうえで、翌年は育て方や規格をどう改善するのかを生産者とともに考え、よりよい青果物の生産と販売につなげていきます。

誠実さは理想論ではなく、市場という仕事を続けるための、極めて合理的な経営判断でもあります。

青果物を適正に評価し、農業を支えるために変わり続ける「東京青果」

川田さんは、東京青果の取引を全国へ広げ、より多くの青果物が効率的かつ適正に評価される仕組みをつくりたいと考えています。 

現在力を入れているのが、デジタル技術を活用した情報連携です。産地や販売先の情報をリアルタイムで共有し、青果物を効率よく販売・輸送することで、物流コストの削減につなげようとしています。今後は、AIの活用も検討していく考えです。 

川田さんが目指すのは、生産者が適正に評価され、農業を続けたいと思える社会をつくることです。そのためには市場が社会の変化を正しく読み取り、生産者へ届け続けなければなりません。

社会が変われば、市場も変わる。そして、その変化を生産者へ届ける。

「変化を是とする」という言葉の背景には、市場の役割を守るためには、変わり続けなければならないという川田さんの考えがあります。

消費者と生産者を誠実につなぎながら、次の時代の市場をつくる。「東京青果」はこれからも変わり続けていきます。

最も印象に残った言葉

「古い業界だから変われないのではなく、変わり続けてきたから今も市場があるんです」

聞き手:丸山夏名美 書き手:田口有香
※写真は1,2,4枚目は東京青果様提供 3,5枚目は取材時に丸山夏名美撮影

企業情報

企業名:東京青果株式会社
取材対象:代表取締役社長 川田 光太さん
企業理念:市場流通の活性化を通じて広く社会に貢献する
住所:〒143-0001 東京都大田区東海3-2-1
事業内容:青果物および加工品の受託販売並びに購入販売
URL:https://www.tokyo-seika.co.jp/

田口有香

田口有香

第4期ハツレポーター/ライター兼農家の嫁であり、3人の子どもの母。生まれ育った大阪から壱岐島に家族で移住。
壱岐島は長崎県の離島ですが、福岡から高速船で65分という抜群のアクセス!!海がきれいなのはもちろん、お魚もお肉も野菜も米も焼酎もそろっておりグルメも自慢できます。

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