ローカリティ!時代の開拓者たち

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「世の中のゆがみを、事業で直していく」。人の能力を最大化し社会変革へつなぐクリーク・アンド・リバー社 井川会長【東京都港区】

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 株式会社クリーク・アンド・リバー社(東京都港区)は、映像ディレクター、ゲームクリエイター、Webデザイナー、医師、弁護士、IT人材など、専門的な力を持つ人と、その力を必要とする企業やプロジェクトをつなぐ会社です。同社はこうした専門性を持ち、社会に価値を生み出す人たちを「プロフェッショナル」と呼んでいます。人材紹介や派遣にとどまらず、必要に応じて「プロフェッショナル」のチームを組み、制作や開発、事業づくりまで支援してきました。 

創業者である井川幸広会長は、フリーランスのテレビディレクターとして働く中で、才能があっても営業や契約、業界の仕組みによって力を発揮できない人たちを見てきました。その原体験から生まれたのが、「人の能力は無限大である」という信念です。

才能ある人が、才能だけで終わらない社会をどうつくるのか。映像、ゲーム、Web、医療、IT、法曹へと分野を広げてきた同社の歩みと、井川会長の言葉から、専門性を持つ人が力を発揮できる仕組みづくりに迫ります。

「人の能力は無限大」。才能を組み合わせ、新たな価値を生み出す原体験

クリーク・アンド・リバー社の原点には、井川会長自身がフリーランスのテレビディレクターとして働いた経験があります。

当時、フリーランスという働き方は、今ほど社会的に確立されていませんでした。才能や技術があっても、仕事を獲得し、条件を交渉し、制作現場とつながり続けることは簡単ではありません。井川会長は、優れた演出家たちが、本来の力を発揮しきれない現実を見ていました。

「もともとはテレビディレクターをやっていたときに、僕なんかよりも優秀なフリーランスの演出家の人がいっぱいいたんです。けれど、仕事をするには演出力だけじゃ足りないものがあった。その分を補完するようなところがあれば、その人の演出力が生きるんじゃないかなと」

才能が足りないのではなく、才能を生かすための仕組みが足りない。井川会長が見出したのは、そこにある「世の中のゆがみ」でした。

その発想の背景には、番組づくりの現場での経験がありました。医療番組をつくるとき、ディレクターが医師である必要はありません。医師の知識を借り、それを番組として伝わる形にする。専門家の力を組み合わせれば、1人ではできない仕事ができるのです。

1人の専門性を孤立させず、必要な仕事やチームとつなぐ。異なる能力を組み合わせ、新しい価値を生み出す。その考え方が、クリーク・アンド・リバー社の事業の土台になっていきました。

才能を孤立させない。エージェンシーから広がった事業の形

井川会長の思想は、まず映像クリエイターのエージェンシー事業として形になりました。

同社が築いてきたのは、単に人を紹介する仕組みではありません。専門性を持つ人が、営業、契約、交渉、キャリア形成といった周辺業務に阻まれず、本来の力を発揮できる環境を整えることでした。

その仕組みは、映像からゲーム、Web、広告・出版へと広がります。さらに、仕事を紹介するだけでなく、必要に応じてチームを組み、制作や開発を担い、知的財産を活用する事業へと展開していきました。

フリーランスのクリエイターを支えるために始まった事業は、医療、IT、法曹、会計、建築、ファッション、食、AI/DXなどのあらゆるプロフェッショナルの力を生かす仕組みへと広がっていきました。業界は違っても、専門的な力を持つ人が孤立し、正当に評価されにくい構造は共通していたからです。

クリーク・アンド・リバー社の事業拡大は、映像分野で見つけた「才能を生かしきれない構造」を、さまざまな専門職の世界で解き直してきた歩みでもあります。その積み重ねはクリエイターとクライアント双方からの「ありがとう」につながっていきます。

クリエイターも顧客も報われる事業へ。「利益と『ありがとう』はイコールでなければならない」

同社が多様な領域へと事業を広げてきた背景には、「クリエイターと顧客からの感謝」を積み重ねるという哲学があります。

井川会長は、事業の成長を特別なものとして語りません。「良い番組をつくれば視聴率が取れ、さらに良いものをつくれば口コミが広がっていく。事業もそれと同じで、関わっている人たちから『本当にありがとう』と言ってもらうことを積み重ねていくだけの話なんです」

ただし、その「ありがとう」はクリエイターだけに向けられるものではありません。クリエイターにとっては、自分1人では出会えなかった仕事や成長機会につながること。クライアントにとっては、必要な専門性と出会い、価値ある成果を得られること。その両方が成り立ってこそ、事業は続いていきます。

「もうけることは全然悪くない。でも、もうけることと『ありがとう』がイコールにならなきゃいけないんです。誰かが損をして、それがこっちの利益になるような相反する利益構造だったら、一時的にうまくいったとしても必ず長続きはしません」

利益は否定しない。しかし、その利益が誰かの犠牲の上に成り立っていてはならない。プロフェッショナルの力が正当に評価され、クライアントの価値創造にもつながり、結果として利益になる。その循環をつくることが、井川会長の考える事業のあり方でした。

現場の声を拾い、変化に応える。「時代が変われば、『ありがとう』の定義も変わる」

「ありがとう」を積み重ねることを大切にしてきた同社ですが、その中身は時代とともに移り変わります。働き方や価値観が変われば、クリエイターやクライアントが求める支援も同じではいられません。

「人の心が変わるから、『ありがとう』の定義も変わっていくんです。 変わった定義に私たちのサービスをどんどん進化させていかないと、『ありがとう』と言ってもらえなくなり、結果的には会社の衰退につながっていきます」

たとえば、かつての映像制作の現場では、長時間働きながら技術を学ぶことが成長につながると受け止められていた時代もありました。しかし、今は同じやり方が通用する時代ではありません。

だからこそ、井川会長が重視しているのが現場の声です。ある人にとっての「ありがとう」は、より難易度の高い仕事に挑める機会かもしれません。別の人にとっては、無理なく力を発揮できる働き方かもしれません。同じサービスを一律に届けるのではなく、一人ひとりが何を価値と感じるのかを捉え続けることが、同社の事業を進化させてきました。

「右から左へ流すような効率の良い仕事の仕方ではなく、たとえ時間がかかるとしても、一人ひとりにしっかりと応えていくことを大切にしています」

「おかしい」と思った世の中のゆがみに、事業で風穴を開ける

同社は映像分野にとどまらず、医療やIT、法曹など多彩なプロフェッショナル分野へと事業を拡張してきました。その背景には、社会の中にある「おかしさ」を見つけ、それを事業として変えていく井川会長の姿勢があります。

「僕はもともとドキュメンタリーを作ったりジャーナリストになりたいと思っていたので、世の中のゆがみとかひずみがよく分かるわけですよ。 『これ、おかしいよな』というところが土台となって、それをいかに事業として解決するかに重きを置いています」

その象徴の一つが、医療分野で展開する「民間医局」です。大学医局は、長く医師の人事やキャリア形成に大きな影響を持ってきました。その領域に民間企業が入り、医師が自ら働き方や勤務先を選べる選択肢をつくることは、簡単な挑戦ではありませんでした。 

「大学医局制は、もともとはドイツから来て新しい医療技術にアプローチするために正しかった制度。でも、時代とともに既得権益化して弊害が起きていた。 誰も手を突っ込まないような制度でしたが、私たちにとってみたらやっぱりおかしいということで声を上げ、大学医局とは別に民間医局というサービスを作ってスタートしました。 最初は苦労しましたが、3年後には自分の医療技術だけでなく生活面でも豊かになることがみんな分かってきて、協力してくれる人が増えていきました」

井川会長にとって、事業とは自社だけが利益を得るためのものではありません。先に形を示すことで、同じ課題に取り組む企業が生まれ、業界そのものが変わっていく。その連鎖をつくることも、事業の役割だと考えています。

「私たちの事業というのは、世の中に対するプレゼンテーションなんです。私たちが先陣を切ることで、第2、第3の会社が出てくる。そうして業界が変わっていく」

世の中のゆがみに対して問題提起をし、事業として解決の形を示す。その姿勢が、映像から医療、IT、法曹へと分野を広げてきたクリーク・アンド・リバー社の歩みを支えてきました。

経営者もまた、「プロフェッショナル」のひとり。事業承継という日本社会のひずみに挑む 

次々と社会のひずみに光を当ててきた井川会長。現在見据えているのは、日本企業が直面する大きな課題、「事業承継」です。同社が向き合う「プロフェッショナル」は、クリエイターや医師、弁護士、IT人材だけではありません。企業を次の時代へ導く経営者もまた、専門性を持つ存在だと捉えています。 

「100年続いているような会社って、多くの人たちに親しまれている味や技能、そして理念があるんです。 それを未来永劫(えいごう)どう守っていくかが、今日本が直面している一番大きな問題です。 跡継ぎがいない会社が消滅したら、社員の未来もなくなるし、地域社会のコミュニティもぽっかり穴が開いてしまう」

「それを救うことができるのは、やはり経営者しかいない。 そこで、上場会社の役員まで登り詰めたような経営のプロフェッショナルを探してくる。 そういう人たちに再生できる会社を提供することで、経営者のプロフェッショナルの価値も上がるし、成長した会社のバリューも上がっていく。 これこそWIN-WINの関係を作る事業承継なんです」

企業の理念や技術を次世代へとつなぐ取り組みは、プロフェッショナルの生涯価値を向上させるという同社のミッションそのものです。最後に、数十年先の未来のビジョンについて伺いました。

「20年後、30年後にどんな会社になっていたいか。 大きい会社が決して強いとは思っていなくて、世の中にどんどん柔軟に変化していく会社が一番強いだろうなと。 その変化と進化の目標は、やはり関わる人を豊かにして、幸せになっていくということ。 誰かが損して誰かが成功するのではなく、みんなが豊かになっていくところに歩調を合わせながら、新しいものをどんどん生み出していく。 それがクリーク・アンド・リバー社の未来のかたちだと思います」

聞き手:ローカリティ! 副編集長 丸山夏名美 書き手:ローカリティ!編集部 猪股豪
※写真は全て2026年6月16日丸山撮影

最も印象に残った言葉

「利益と『ありがとう』はイコールにならなければいけない」

企業情報

会社名:株式会社クリーク・アンド・リバー社
代表者:代表取締役会長(CEO) 井川 幸広、代表取締役社長(COO) 黒崎 淳
公式HPhttps://www.cri.co.jp/
グループ統括理念=人の能力は、無限の可能性を秘めています。私たちは、その能力を最大限に引き出し、人と社会の幸せのために貢献します。
・Vision めざすべき社会=私たちは、プロフェッショナルを支援することで、人と社会の豊かさを創生します。
・Mission 果たすべき使命=プロフェッショナルの生涯価値の向上・クライアントの価値創造への貢献 

猪股 豪

猪股 豪

宮城県加美町生まれ・在住。地方創生に興味を持ち政治の世界へ。国会議員秘書を経てまちづくりに取り組む。

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