「無音」で「風」を感じる、世界で唯一のツアーを目指して【沖縄県与那国町】

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沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催 価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。
この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

「放浪の旅」から、与那国島へ

田中雅洋(たなか・まさひろ)さん。「たんぽぽ流ツアー」のオーナーであり、ガイドであり、馬を乗りこなし、空を飛び、Dr.コトーさながら電動自転車で島を疾走する。従業員は与那国馬、そして車。そんな与那国島の「未知先案内人」に会ってみたいと思いませんか?

田中さんが「たんぽぽ流ツアー」を始めたのは15年前。「とりあえずは馬が一頭いたので、馬からのスタート」だったそうです。

もともと茨城県水戸市出身の田中さんは、馬の楽園というイメージと海底遺跡のロマンにひかれて24歳の時に与那国島に移住しました。与那国島に行く前は、アジアや南米を1年半ほど放浪したそうです。エクアドル、ペルー、ボリビアを中心に、特にペルーの「コンドルは飛んでいく」のメロディに惹かれて、かの地の人たちに会いたかったそう。

「旅は旅で良かったですけど、傍観者じゃないですか。やはり僕も何者かになりたい。どこかに定住して何かやらないといけないなと」

そう考えた田中さん、国内で1番面白そうなところはどこかと考えたときに、国境に近い場所、と思ったそうです。文化がミックスして砕けた感じもあり、これから展開していく可能性があるのでは、と。そして、与那国島を選び、5年ほど働いてから独立しました。

与那国馬と共に生きる。乗馬のコースは無限大

島に興味を持つなら、本気で来てほしい、と田中さんは語ります。「与那国島の良さ、面白さ、すばらしさと厳しさ、乗馬の楽しさ、難しさまで知ってほしい」と。

よって、田中さんの牧場「与那国馬風(う)牧場」(よなぐにうま うぼくじょう)の乗馬のコースは最低でも1時間。短い「体験コース」は作りません。そしてコースの多彩さもたんぽぽ流ツアーの売りのひとつ。

「同じ場所から出発して、これだけのコースに行けるのは世界中探してもうちくらい。それは、与那国島の中でも僕が拠点としている比川(ひがわ)という集落が、世界に類を見ない幅広い引き出しを持ったところだからなんです。馬で30分以内で行けるところに海があり、山があり、草原がある」

海は、浜辺のコースや海を渡るコースなどがあり、潮の満ち引きなどの時間帯や自然条件によって使い分けて、最高の体験ができるところをお客さんに案内するそうです。

草原は、あちらこちらに馬が放たれていて草が短く保たれている、そんな「馬の伝統が今でも続いているから」できるコースで、「僕らはそこにおじゃまする」というスタンスだと田中さんは語ります。

山道のコースは、当初、整備された林道を行く普通のコースでしたが、地元の方から昔の話を聞き、山の中に、U字にえぐれた「馬のあぜ道」が残っているのを見つけて開発したり、そんなことを繰り返して面白いジャングルコースをたくさん作ったそうです。

田中さんはそのような伝統を生かして、復活させてコラボしていくことに意義を感じると言います。

そんな田中さんを支える与那国馬のスタッフは現在11人(頭?)。「まだ調教前の若造から、もうすぐ引退かというおばあちゃん」までいるそうです。

与那国馬のルーツには諸説あるそうですが、日本に8種残っている日本在来馬(和種馬)の1種で与那国町の天然記念物にも指定されています。

「与那国馬は素直で田舎の子どもみたいな魅力があるんですけど、寡黙でひたすら頑張る、粗食に耐えて、体は丈夫でいい働きっぷりで、昔の日本人みたいな、けなげさがあるんです」

と田中さん。僕のスパルタについてこられるのはあの馬たちくらいです、と愛おしそう。

神宿る島で、「無音」で「風」を感じる最高の体験を

与那国島は、簡単に「パワースポット」と謳って島を回るようなことは出来ない雰囲気、重みがある島だと田中さんは感じるそうです。ある人に勧められ、ガイド業を始めましたが「最初の5年くらいは本当に自信がなかった」とのこと。

この島は、日帰りで来るような島じゃない。ゆっくりと時間をかけて、そこに存在するものを感じてほしい。絶景も、神秘も、人や動物も、すべてが素晴らしく、その与那国島のスピリチュアルなところを感じている自分が、それをリアルな形で伝えていきたいと田中さんは語ってくれました。

また、乗馬とガイドのほかに、電動自転車のレンタルもしているたんぽぽ琉ツアー。

与那国島はジャングルや山、草原、絶壁、とアップダウンが激しい地形で、周囲約25km。電動自転車で4〜5時間で回れる、とサイズもばっちりだと思ったそうです。しかも、「風を感じる、無音を感じる」というコンセプトにも合っている。

与那国島は、ドラマ「Dr.コトー診療所」のロケ地としても知られていますが、2022年に公開された映画「Dr.コトー診療所」の中で、主人公である「コトー先生」が、田中さんの電動自転車に乗って島を颯爽と走っています。電動自転車が似合う島、なんですね。

そして、去年からスタートしたパラグライダー。これは自分の中で一つのゴールだったと田中さんは語ります。

「この島を見るとき、ガイドで見る景色があり、それより目線が高い、馬から見る景色がある。でも島で飛んでる人を見たとき、空から見る景色、それが究極だな」と思った田中さん、6年前、ゼロから始めて練習を積んで、ようやくツアーの形を作りました。

パラグライダーの体験は全国にたくさんありますが、与那国島は「絶壁の孤島」です。絶壁から海に向かって飛ぶので、基本的に降りる場所がありません。同じ高さの、飛んだところに戻ってこなくてはならないのです。そういう意味で、技術も必要だし、風を読む力も必要になります。でも、そういうリスクを負って飛んだ時に見える絶景は体験の中の最高峰だと田中さんは思うそうです。

モーターをつければ安全確保になるけれど、田中さんは「無音で風を感じてほしい」からモーターは使いません。その分飛べる確率は下がるし、リスクも高まるけど、それを乗り越えて見せたいものがある。それが田中さんの信念です。

6年かけてパラグライダーをツアー化し、今は「ちょっと燃え尽き症候群」だという田中さん。ツアーの数もどんどん増えて、1人で回すのはとても大変です。今後はツアーのクオリティを上げつつ、数は絞っていく方向になるのかもしれないとのことですが、「常連さんに刺激を与えられるような、全く違うこと」もやってみたいと、夢はまだまだふくらんでいるようです。

筆者も田中さんと与那国馬に会いに、絶景の地にぜひ降り立ってみたいと強く思いました。

たんぽぽ流ツアーHP  https://www.tanpoporyu.com/h-o-m-e-1

笠原 磨里子

笠原 磨里子

千葉県浦安市

第3期ハツレポーター

東京都港区生まれ。世田谷区を経て千葉県浦安市在住。3人の男の子を育てながら、PTAや自治会、ボーイスカウトの指導者など、地域と繋がる活動をしてきました。
「食べること」「体を動かすこと」「歌うこと」「旅すること」が大好き♬
楽しく地元の魅力を発信していければと思っています!*

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