村長賞は「雪の秋田への宿泊体験」—デザイナーの活躍は地域活性を広げるかけ橋に【秋田県東成瀬村】

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2025年1月19日、秋田県東成瀬村役場にて、東成瀬テックソリューションズ株式会社(以下、なるテック)の新しい会社ロゴをデザインしたデザイナーに対し「村長賞」の授賞式が行われました。

この賞は、なるテックが全国から募集したロゴデザインコンペティションにおいて、特に優れた作品に贈られるものです。

ロゴデザインは理念を象徴する顔

なるテックは、東成瀬村が第三セクターとして2021年に設立し、地域おこし協力隊制度を活用して人材を雇用しながら、都心企業と連携しIT分野のプロフェッショナルを育成する会社です。地域課題の解決や行政支援を行い、地方創生のモデルケースとして事業拡大を目指しています。

今回のデザインコンペでは、なるテックという会社にふさわしい、創造性と技術を兼ね備えたデザインが評価されました。

東成瀬村 備前博和村長

備前博和村長は授賞式のあいさつで、「ロゴは会社の理念を象徴する顔、デザインしていただいた素晴らしいロゴに負けないよう社員もがんばる必要がある」と話しました。

また、なるテックの近藤純光社長は、「細かい要望やフィードバックに応え、工夫と改善を重ねデザインをしていただいたことを感謝します」と受賞者に感謝を述べました。

なるテック 近藤純光社長

全国からあつまったデザイナー は村の関係人口に

この取り組みでは、特に都市部などで埋もれがちな若手デザイナーの才能に焦点を当て、地方という新たな舞台で輝ける可能性を提供し、デザイン業界全体の活性化にも寄与することが期待されています。

受賞者の5人

また、今回村長賞を授賞したデザイナーには、東成瀬村での活躍の場を提供するだけではなく、ロゴの制作を通して村のことを深く知り関係人口として関わってもらうことも目的としています。

受賞者には「村長賞」の副賞として、東成瀬村のお米やトマトピューレなどの特産品が贈られました。また、授賞式への招待は秋田への宿泊体験も兼ねており、授賞式当日は秋田の郷土料理や温泉を楽しんだという声があったほか、「こんなに多くの雪を見たのは初めて」という驚きの声も多く上がりました。

村内にある集落の神社 この日は晴天で屋根の雪下ろしをする人も多くみられた

この宿泊体験を通じて、受賞者が東成瀬村の魅力や地域の文化に触れ、深く印象を受けていた様子がうかがえました。

初めて存在を知った村と、その驚くべき取り組みから受けたインスピレーション

今回の受賞者は5人。今回のデザインコンペに参加し初めて村のことを知った人ばかりでした。

中川美恵子さんが備前村長から賞状を受け取るシーン

鳥取県の日高寿樹さんは、村長が村おこしの戦略としてSNSを積極的に活用していることに言及しました。さらにデザインを取り入れて地域の活性化を目指している村、およびなるテックの勢いに注目していると話すと、なるテックが村を巻き込む活動に魅力を強く感じたと、大阪府の中川美恵子さんもその思いに同調しました。

日高寿樹さんが備前村長から賞状を受け取るシーン

千葉県に住む泉美有さんも同様に村が一体となり地域を活性化させているのを魅力としデザインに取り入れたと話したほか、食べ物のおいしさと、今回は冬に訪れたことが特に良かったと、村ならではの魅力にも触れました。

また、大阪府の山本万里絵さんは、美しい水と自然を誇るこの地域が活性化し世界に広がる可能性を感じると話した一方で、兵庫県の金子裕子さんは過疎化のイメージを持って訪れたものの、村の人々が車ですれ違う際などに声をかけ合う姿を見て、都会にはない村の人たちのあたたかさについても言及し、また訪れてみたいと話しました。

左から金子裕子さん、山本万里絵さん、泉美有さん

受賞者の言葉から、東成瀬村が持つ魅力と、なるテックの驚くべき取り組みと強い勢い、そしてその広がりが、デザインを通じてさらに多くの人々に伝わり、地域の活性化へとつながっていく様子が浮かび上がりました。

ひとりひとりの人生に寄り添い村とともに成長し世界へ。その広がりをデザインに

日本語ロゴ
英語ロゴ

 新しいロゴには中川美恵子さんのデザインが採用されました。

このロゴには地域密着型の企業として村とともに成長し、ひとりひとりの人生に寄り添う姿勢が表現されています。

また、このロゴには「地軸の傾き」が取り入れられており、地域から世界に向けてビジネスを展開するなるテックの姿勢を象徴し、地球への広がりがイメージされています。さらに、ブロック構造で「人生をかがやかせる」「一歩一歩積み重ねる」という理念が表現されています。

新しいロゴは2025年1月27日より各媒体において随時更新し、統一感のあるブランド展開を目指します。

村の活性は、デザイナーの未来も切り開く

「秋田県は全国でもっとも人口減少が進んでいる県であり、その中でも東成瀬村は人口減少が著しい村。豪雪などの厳しい環境だから『何もできない』のではなく、『ここでしかできない取り組み』を持って進むのがなるテックの理念」と、近藤社長は冒頭のあいさつで語りました。

東成瀬村役場

その理念をしっかりと受け止めて完成されたロゴは世界へと広がり、その思いとともに多くの人々に届いていくでしょう。そして、デザイナーたちにとっても、村を訪れたことが都市部では得られないインスピレーションをもたらし、創造性をさらに高める貴重な経験となります。

村内を通る国道342号

「村長賞」というキャリアの一歩を踏み出した受賞者たちが生み出したデザインは、この村の未来とともに成長し、やがて世界へと広がっていくはずです。デザイナーの活躍が、村に新たな可能性をもたらし、またデザイナー自身の未来をも切り開いていく。

ここで生まれたつながりは、地方でも都市部と同等の仕事を生み出し、東京一極集中の是正と地方分散の可能性として新たな未来を創り出す大きな一歩となるでしょう。

天野崇子

天野崇子

第1期ハツレポーター/1968年秋田県生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30余年。

ローカリティ!編集部のメンバーとして、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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