世界が注目する霊山 ナショナルジオグラフィックが選んだ山寺【山形県山形市】

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山形県の山寺を訪れた。訪れようと思ったきっかけは、10月21日に発表された一本の記事だった。世界的に知られる自然科学誌「ナショナルジオグラフィック」が発表した「2026年に行くべき世界の旅行先」に、山形県が日本で唯一選ばれたというのだ。その中で、蔵王温泉、銀山温泉と並んで紹介されていたのが山寺だった。記事では、山寺を「静寂に包まれる神秘的な寺社」と評していた。

これまで冬、春、夏と何度か訪れてきたが、秋はまだだった。紅葉の山寺を見てみたい。そう思い立ち、この機会に改めて足を運ぶことにした。

JR山寺駅
写真:松尾芭蕉の銅像

 山寺の正式名称は宝珠山立石寺。860年に慈覚大師円仁によって開かれた天台宗の名刹(めいさつ)であり、東北を代表する霊場である。アクセスもよく、JR仙山線・山寺駅から徒歩10分ほどで山門へたどり着く。参道の途中では、旅の途中にこの地を訪れた松尾芭蕉の銅像が出迎えてくれる。芭蕉が詠んだ「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句は、まさにこの地で生まれたものだ。周囲は幾重にも重なる巨石と杉木立に囲まれ、岩肌に刻まれた仏像や地蔵が並ぶ。立ち止まると、風と鳥の声しか聞こえない。句の情景がそのまま現実に重なるような静寂があった。

写真:山門入口

山門で拝観料500円を納め、奥の院へと続く1050段の石段を登る。この階段を上りきることで煩悩が消えるといわれており、登るほどに息は上がるが、心は次第に澄んでいく。周囲の木々が放つ湿った香りと岩肌を流れる水の音が、とても心地よい。冬は雪が積もり、階段が凍ることもあるが、その分、雪に包まれた山寺の姿は幻想的だ。

 山頂には多くの国指定重要文化財が残る。中でも崖の上に建つ納経堂は、山寺でもっとも古い建物で、写経された法華経が納められていると伝わる。岩壁に寄り添うように建つ姿は神秘的で、写真に収めると息をのむほど美しい。また、山形藩主・最上義光公の位牌(いはい)をまつる御霊屋もある。義光は直江兼続と戦い、慶長出羽合戦で勝利した武将として知られる。民を思う政治を行った人物として、今も地元で親しまれている。

納経堂

山寺は季節ごとに姿を変える。新緑の春、蝉しぐれの夏、雪に包まれる冬、そして紅葉の秋。訪れるたびに新しい表情を見せてくれる。歴史の重みと自然の静けさが溶け合うこの場所に立つと、日本の山岳信仰の原点に触れたような気持ちになる。

今回訪れたのは10月31日。紅葉はまだ始まりかけだったが、緑と赤が入り混じる山の景色が美しかった。これから色づきが深まる十一月、雪が降り始める十二月までのあいだ、山寺は一年で美しい季節を迎えるので、ぜひこの機会に訪れてみてほしい。

情報

山寺観光協会:https://www.yamaderakankou.com/index.html日本政府観光局:https://www.jnto.go.jp/news/press/20251022.html

田口雄太

田口雄太

神奈川県出身。現在は山形県で探究教室の運営に携わっています。アフリカ・ルワンダでの2年間の生活経験もあり、旅と写真を通して、その土地ならではの感動を伝える記事づくりを目指していきます。

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