アルゼンチン産の希少な「クリームはちみつ」が、大阪府高槻市にある就労支援施設へ輸入された。加工販売を通じて社会参加へのステップとする試みだ。「美味しい」を味わいながら、生産、加工、販売、消費に関わる人、全てが良くなっていく、そんな取り組みが始まった。
目次
■アルゼンチン在住の日本人養蜂家から届いた「クリームはちみつ」が、社会を変えている
熟練の技が求められる「クリームはちみつ」は、アルゼンチン在住の日本人養蜂家から精神障害者の就労支援施設(大阪府高槻市)へ輸入され商品化されている。濃厚な風味を持つ「クリームはちみつ」は、低温でも固まらないという特長を持つ。施設側では蜂蜜の加工販売を行うことで障害者の技術や工賃の向上、社会参加に繋がっている。「美味しく食べる」ことで関わる人たちを応援出来る仕組みが構築され始めている。
■40年前に単身移住した日本人が、偶然発見した「クリーム状になるハチミツ」
「これを全部売るのか」。約1トンの蜂蜜を目の前に、NPO法人フェルマータの職員は茫然としていました。6年前の2016年、原芳考さん(同法人理事長の実兄)から、「クリームはちみつ」が輸入されました。40年前にアルゼンチンへ単身移住した原さんは自分一人で養蜂業を開拓してきたそうです。「蜂蜜がクリーム状になる」ことを作業中に偶然に発見。人工物を添加せずに安定的に製造できる技術を磨いてきました。
■障害福祉施設が、6次産業化を行うことに立ちはだかった壁
一方、ハチミツが到着した当時、障害福祉サービスを提供する施設側では、食品の加工販売についてのノウハウや職員理解が追い付かない状態でした。「職員への理解や商品化の組み立てがまず大変でした。アウェイでのスタートでしたから」と商品化を進めた職員は当時の大変さを振り返る。
価格、パッケージ、販路だけでなく食品販売に必要な知識、職員理解、全てがまっさらな状態からの取り組みであった。商品を売るだけでは十分ではなく、施設利用者様へは「工賃」という形で還元される必要があ6次産業化や農福連携(農業と福祉の連携)に対して、世間の認知も現在ほどでは無かった。
■海を越えた「クリームはちみつ」には、携わった人の生き様が溶け込んでいる。
それでも、この事業を形になるまで進めてこられたのは「生産者、加工者、販売者そして消費者」それぞれの立場の人の思いを大切にしたいからだ。「良いものを作りたい」「仕事がしたい」「食べる人に笑顔になってもらいたい」
海を越えた「クリームはちみつ」には、携わった人の生き様が溶け込んでいる。この蜂蜜を食べて「美味しい」と笑顔になってもらえる瞬間に、喜びの循環が新しく生まれる。
■農業と福祉施設が地域全体で連携する「ソーシャルファーム」構想を夢見る
フェルマータでは、昨年から近隣で農地を借用し、野菜やハーブの栽培を精力的に実施し始めた。福祉の枠に留まらず、一般企業の農地にも赴き、農作業やジャム類の商品化も共同して進めている。ゆくゆくは地域の福祉事業所と人的・物的交流を図りながら地域全体で連携する「ソーシャルファーム」を描いている。
「クリームはちみつ」は、メスキートとひまわりの2種で1本1300円(税込)。高槻市ふるさと納税返礼品に選定されているほか、オンラインショップでも購入可能。
【HP】https://www.npo-fermata.com/