〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
福岡県東区にある株式会社福博(ふくはく)食品。元祖・厚切りポテトチップスを製造するこの会社には、創業から49年間変わらない塩味と4代目が挑む果敢な挑戦の知られざるストーリーがありました。
目次
「塩ひとすじ」の父との忘れられない会話
「NIKKEI STYLE『大人のポテチ』ランキング」で第4位を獲得し、大注目の福博食品の「ポテトチップス」。今回お話をうかがった松本英治(えいじ)さんは、4代目の代表です。
英治さんが代表に就任するまで、ポテトチップスの味は塩のみでしたが、先代のお父様は今でも塩味に強いこだわりを持っています。下積み時代の英治さんに対しても厳しく塩味の指導をされたそうです。その中で英治さんはこんな言葉が印象に残っているといいます。
「塩は量るな、もった感覚でふれ。それが手作りの良さなんだ」
これはお父様の鉄則です。天候や収穫時期、畑によって味や固さが異なる繊細なじゃがいもに合わせて塩の量を決める方法は、「いつでもおいしいポテトチップスを届けたい」という熱意の表れでもあります。
さらに福博食品の代名詞である「厚切り」へのこだわりは、厚さを調整する刃の設定を条件に応じて1mm単位で調整しているほど。その技術はまさに職人技です!いかに「塩味」「厚切り」に思いが込められているのか、筆者はこのお話だけでも十分に感じ取ることができました。
「まかふしぎ」なヒットの法則
今では最大で24種類ものポテトチップスの味がある福博食品ですが、新しい味のアイデアの源はなんと全てインスピレーション。現在販売中のあごだし味は、お知り合いの方と冗談で話していたことをきっかけに始めたそうです。数え切れないほどの試作品の中にはお蔵入りとなってしまうものもあり、今回はそんな苦労話も教えてくださいました。
中でもお腹を抱えて笑ったのは「黒ニンニク」。
とてもおいしそうですが、いざ試作品をお店で開封したところ「あまりのニンニク臭で会社が臨時休業に追い込まれた」という強烈なアクシデントによって、お蔵入りになってしまったそうです。
そんな数々の経験から、「商品化には法則がある」と英治さんは話します。それは「味付けの粉は目分量にするとうまいく」というものです。この代表例が、今では看板商品のゆず七味。粉をきっちり量っていた当時は鳴かず飛ばずの日々が続いていました。しかし、ある日たまたま目分量で満足のいく味ができたため出荷したところ、またたく間にヒット商品へのぼりつめたそうです。
数字よりも英治さんご自身の舌が頼りになることが証明された瞬間でした。これはオートメーション化された製造工程では決して実現できません。食べる人の感覚をリアルに持ち、わずかな調整でそれを実現している福博食品ならではの強みといえます。
夢は 「福岡といえばポテトハウスのポテト」といわれること ポテトチップスで食卓に笑顔を
2007年、福博食品は工場の隣に一般販売用の「ポテトハウス」を立ち上げました。こちらには近隣住民の方はもちろんのこと、外回りをする営業マンさんが「嫁に頼まれた」と訪れることがよくあるそうです。そんな微笑ましいシーンを見ると英治さんは、「家に帰って家族で食べるのかな?それともご夫婦で食べるのかな?」と想像を膨らませてとても嬉しくなるのだとか。
楽しいお話をたくさんしてくださったあと、「これだけは真面目に…」と切り出す英治さんの口からは、「自分の商品に自信はあるが、褒めることはしない」と真剣な言葉が。
英治さんにとってご自身の商品を褒めることは「慢心」につながるのです。さらなる高みを目指しつづける英治さんは、「自分たちのポテトチップで食卓が明るくなってほしい、ゆくゆくは『めんたい・もつなべ・とおりもん・ポテトハウスのポテト』と、福岡を代表するソウルフードの一つに数えられるような存在になりたい」と今後の目標を力強く語ってくださいました。
苦労さえも楽しい話に変えてしまう英治さんはとても魅力的で、取材があっという間に終わってしまいました。地元・福岡県を心から愛し、リスクを恐れず挑戦を続け、つねに向上心を持つ英治さんだからこそ、「その目標は達成できるに違いない!」と確信しました。