厳しい冬を生き抜く雪国の人の知恵「いぶりがっこ」は冬場の貴重な食糧【秋田県大仙市】

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〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜

雪深い秋田県の内陸南部地域では、昔から各家々で秋に収穫した大根を囲炉裏(いろり)の上の屋根の梁などに干し、それを糠などに漬け込み保存食として食べていました。それがいぶりがっこの原型と言われています。

時代と共に家に囲炉裏がなくなり、いぶりがっこは家庭で作られることが少なくなってしまいましたが、昔の味を懐かしむ個人や会社が作りはじめたことで、近年人気が拡大しています。

「いぶりがっこ」は地域の雇用を生んだ

いぶりがっこを作っている桜食品

桜食品は大仙市協和稲沢地区、国道46号線を角館に向かう途中の山あいの集落にあります。

桜食品の前身は、地元農家の有志で作った組合でした。現在は同じ地区内にある3件の別の会社になり、それぞれでいぶりがっこが作られています。この取り組みは、冬場の農閑期に収入が見込めず、関東地方などへ出稼ぎに出る必要があったこの地域の雇用を生むための切り札となりました。

地域の人たちの力と技で美味しくなる「いぶりがっこ」

縄で編んだ大根は1連10本、約10kgになる

毎年10月から12月が漬け込みの最盛期。

41部屋もある燻し部屋1室につき1000本、1日当たり12〜13室に縄で編んだ大根を吊るし、三日三晩、楢(なら)の薪で燻します。燻し終わったら次は漬け込み作業に移ります。

ひとつに1000本入る!燻した大根をつけるための漬樽

高く積まれたこの大きな容器は、漬け込み用の樽。なんと、1つの樽に燻した大根が1000本も入るのだそう!大根を編むのも吊るすのも、燻すのも漬けるのも、一本一本丁寧に熟練の職人により行われます。ここに人の手間をかけることで美味しさに差が出るのだとか。

これはかなりの重労働である事は容易に想像ができます。その大変な作業が、厳しい冬の間、毎日繰り返されます。

「とにかく休みなく動け」

代表取締役の佐川真理子(さがわ・まりこ)さんは父であり会長である牧雄(まきお)さんにいつもそう言われてきたそうです。

「現在、会社を支えてくれているのは、父と同じ団塊の世代である、地域の人達がほとんどです。その力と技がなければ、美味しいいぶりがっこは作れないんです。」真理子さんはそう語ります。

新しい時代に向け「いぶりがっこ」の伝統を守っていく

そのまま食べても美味しいけれど、独特の燻香と、パリパリとしっかりとした食感は、さまざまな食材ともコラボされ人気を博しています。「いぶりがっこ レシピ」などと検索をすると実に多くのアレンジレシピが公開されています。認知度の高まりとともに、いぶりがっこの生産も増えています。

「昔ながらの『とにかく休みなく動く』必要のある、とても厳しい仕事ではありますが、会社を運営する側として、今よりもっと従業員の負担が少なく働きやすいシステムを作る必要があります。熟練の職人さんたちを大切にすることで伝統の味を守り、そしてそれを若い世代にも伝えていけるようにしたい。そして、いぶりがっこの伝統と美味しさをもっとたくさんの人に届けたいです」従業員の皆さんには感謝しかないと語る真理子さんの言葉には強さと優しさが滲みます。

出荷の作業をする佐川真理子代表

厳しい冬を生き抜く雪国の人の知恵から生まれた「いぶりがっこ」。時代の変遷と共に人との関わり方や食べ方も変わってきています。「いぶりがっこ」の香りの中にある、深い歴史や職人さんたちの愛情を感じながら、味わってみてください。

天野崇子

天野崇子

秋田県大仙市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター/1968年生まれ。東京の人と東京で結婚したけれど、秋田が恋しくて夫に泣いて頼んで一緒に秋田に戻って祖父祖母の暮らす家に入って30年。

ローカリティ!編集部の一員として、みなさんの心のなかのきらりと光る原石をみつけて掘り出し、文章にしていくお手伝いをしています。

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