
株式会社Ad-REARV 代表取締役
Hiroaki Sakai
酒井 宏聡氏
アナログゲームをVR(仮想現実)上に再現することで、業界の未来を創造する広島の株式会社Ad-REARV(アド・リアーヴ)。代表取締役の酒井 宏聡(さかい ひろあき)さんは、少年時代から「ものづくりが好き」でゲーム制作を始め、専門学校へ進学。その後カードゲームデザイナー、そして経営者へ。REALとVRをアナログゲームでつなぎ、その良さを広めたい、業界全体の活性化を目指して突き進む思いや野望を伺いました。
“ものづくりが好き”だった少年が、ゲームに出会い、やがて経営者に
キャリアスタートまでの道のりを教えてください。
小さい頃から“何かを表現したい”という思いを持った、ものづくりが好きな少年でした。小学生時代にはすでに、自作のゲーム設定をノートに書いて友人に遊んでもらっていました。自分が考えたゲームを人に楽しんでもらえるのがうれしくて、高校卒業後はゲームプランナーを目指し専門学校へ進みました。
ですが、ゲームプランナーという職種は狭き門で、企業への就活は失敗。心が折れてしまい二年間ほど自宅に引きこもり、オンラインゲームに没頭する日々を過ごしていました。そんな日々に変化をもたらしてくれたのは、この道の師匠であり、今も会社運営でお世話になっている専門学校時代の恩師からの一報でした。
“広島ものづくりジム”という塾立ち上げのお知らせが届き、ゲームへの思いが再燃。塾での学びの過程で制作したプレイヤー同士がカードで脅し合って対戦する「ギャングスターパラダイス」というカードゲームが想像以上の大ヒットとなり、ゲームデザイナーの道へとつながったのです。
ゲームデザイナーとしての活動は順調だったのでしょうか?
個人事業主のゲームデザイナーとしての私の活動はそれなりに順調でした。しかし、コロナ禍で自粛生活へと突入すると、非接触が生活スタイルの大前提となり、イベント会場でカードゲームを販売することはもちろん、人と人とが対面で遊ぶスタイルのカードゲームそのものの在り方が難しくなってしまいました。制作者、出版社、印刷所、ショップ、ゲームカフェ、そしてユーザー…アナログゲームに関わる業界全体が意気消沈してしまった様子を目の当たりにし、“何かしらの策はないだろうか”と考えるようになりました。
そんな思いを抱えていた矢先、私のカードゲームのファンの人たちがVR上でカードゲームを使って遊んでいる場面に偶然出会い、これは一つの活路になるのではないか、とひらめきました。VRであれば、非接触はもちろん、遠く離れた相手ともゲームを楽しむことができます。「REALとVRをアナログゲームでつなぐ!」「コロナ禍で困窮する業界を救いたい」。その思いを胸に、VR上でアナログゲームを展開する、VRAnalogGame(VAG)を中心とした仲介組織として、一般社団法人REARV(リアーヴ)を立ち上げました。

その後、株式会社Ad-REARV を設立したきっかけについて教えてください。
非営利団体として、VRを利用してアナログゲームで遊べる場を無償で提供する活動を始め、Twitter(現:X)で偶然知り合った株式会社Keepdryのプロデューサーの目にとまり、大人気タイトル「ガンナガン」の利用許諾をいただけることに。偶然、最初からビッグタイトルを扱えることになりました。早速ゲームファンの人たちに向けて提供したところ、大ヒットとなったのです。
その後、この作品を提供していただいたゲーム会社へ何かしらのお礼がしたい、との思いでクラウドファンディングを立ち上げたところ、予想をはるかに超える1,000万円近い金額が集まりました。一般社団法人としての活動が大きくなってきたのを認識し、非営利団体から営利を目的とする別組織としての株式会社Ad-REARVを立ち上げることを決意。2024年10月に設立しました。
Ad-REARVという社名の由来について教えてください。
理念「REALとVRをA:アナログゲームでつなぐ!」は、一般社団法人REARVのときから変えず、業界貢献と顧客実益のためにAd(アドバンテージ)を稼ぐ活動をする企業、という思いを込めてAd-REARV(アド・リアーヴ)と命名しました。
VRならではの利点を生かしてアナログゲームの上位互換を目指し、その価値を高めたい
現在の事業内容について教えてください。
VAGのアセット(ゲームを構成するプログラムや3Dモデル、アナログゲームを再現するための道具等)の開発を行っています。カード自体にもこだわり、紙の質感や厚みなど、現実に可能な限り近づけたものを制作しています。さらに、デジタルだからこそ可能になるギミック搭載で、片づけや計算がすぐにできるなど、現実よりも便利なアセットを提供しています。
また、音や空間の演出にもこだわり、ゲーム世界の魅力をさらに引き出す高い表現力を実現しています。VRという特性を生かし、表現、使用することで、アナログゲームの上位互換となることを目指しています。
既存のアナログゲームをVR上に輸入(使用)するだけでなく、新規でのVAG開発も支援し、人気作となったものをリアルでの製造流通販売に移行する、という流れも作っています。VRとリアル、相互の流れを生み出すこの一連の動きを私たちは「VAGの輸出入」と呼んでいますが、それにより、アナログゲーム業界全体が活性化する未来を描きたいと思っています。

そのほかにも、原作許諾を頂いた作品のキャラクターをモチーフにした「アバター用衣装やグッズ3Dモデル」をクラウドファンディングのリターン品として制作し、そのままデジタル通販サイトで無在庫かつ無限在庫のアパレルメーカーのような形態で販売もしています。


貴社の理念である「三つのアド。」について、思いを教えてください。
「Advantage」は、“アドバンテージを稼ぐ”。ほかの企業にないオリジナリティーによって、業界そのものを勝利へと導く、カードゲーム用語である「アド」を意識した企業として活動する。
「Advertisement」は、“広告・宣伝に尽力する”。VRアナログゲームの普及活動に留まることなく、営利を目的とする宣伝や広報活動に尽力し、業界全体の実益を増やしていく。
「Adventure」で、“新しい世界へ冒険を”。常にチャレンジ精神を持ち続け、新たな世界へと冒険する。
これら三つのAdを意識し、言葉のとおりREARVの理念にAd(=加える)という思いで業界全体の発展を目指しています。
VRアナログゲームの魁として、新たなビジネスモデルとして、10年20年先の未来を描く


これまでの事業展開で特に記憶に残っているエピソードを教えてください。
株式会社Ad-REARVを設立後、2度目のクラウドファンディングを行ったのですが、そのときも短期間で1,000万円を超える資金を集めることができました。このクラウドファンディングの成功は、とても心に響く大きなできごとでした。このことによって、VR上でアナログゲームを展開するVAGというスタイルが一時的な流行ではなく、長く支持されるビジネスモデルであると実感しました。
また、一般的なメタバースの衰退傾向とは違い、VRSNS界隈そのものが発展を続けており、同じような思いで会社を立ち上げる人たちも少しずつ増えているので、10年20年先の最先端に私たちは立てているのではないか、という未来も思い描き始めています。
今後の展望、将来のビジョンなどを教えてください。
コロナ禍で沈静化してしまったアナログゲーム業界の活性化を目指して来た先に、VRアナログゲーム業界そのものを作っていきたい、という思いが芽生えています。今後は、そうした経済圏そのものをメタバース上に作ることを目指しています。
VR上で人気の出たゲームがリアルに移行、また、アナログゲームがVR上に移行する、そうした相互の価値をVRの力でより高めたいと考えています。
アナログゲームの一番の魅力は、実際に人と人が出会って遊ぶ、ということです。VRを活用することによってその良さは残しつつ、さまざまな利便性も向上させた遊びの提供が実現しています。こういったスタイルが、次世代のアナログゲーム業界の一つの形となるのではないか、と確信しています。REALとVRをつなぐという私たちの働きかけが、業界の魁となる、私の野望であり、叶いつつある夢でもあります。
未来のクリエイターへメッセージをお願いいたします。
私がそうだったように、ニートからでも何でもできます!誰でも挑戦できる世界があります!努力と根性、そして熱意があれば、チャンスはいくらでもあるので、ぜひ、高い志を持って頑張ってもらいたいと思います。
また、企業に就職することだけがクリエイターへの道とは限りません。個人事業主として、経営者として、クリエイターへの道はさまざまですので、まずは一歩を踏み出す勇気を持ってください。
取材日:2025年5月26日
株式会社Ad-REARV(アド・リアーヴ)
- 代表者名:酒井 宏聡
- 設立年月:2024年10月
- 資本金:300万円
- 事業内容::VAGイベント開催、VAG動画配信など
- 所在地:〒733-0842 広島県広島市西区井口2丁目16−13 第2酒井ビル 102
- URL:https://www.rearv.net/
- お問い合わせ先:connect@rearv.net
この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。