ガス代0円でお湯が出る?時には熱湯、時には冷水。「太陽熱温水システム」でサバイバル生活実施中【静岡県富士宮市】

5 min 355 views
▲1箇所から勢いよく水が漏れています。

2023年4月から、筆者が静岡県富士宮市にて、作業場としてリーズナブルに借りている家があります。

「まるでおばあちゃんの家みたい」とよく言われますが、昭和の哀愁漂う畳の部屋が3つ、U時型構造の汲(く)み取りトイレとレトロタイル貼りお風呂のある畑付き平屋です。最寄り駅まで歩いて12分で、川まで50mで行ける自然豊かで便利な立地ですが、道路に面しておらず、無舗装の私道の奥にあり、軽自動車でなければ敷地内に入ることができません。

築40〜50年くらいの物件で、4〜5年程度空き家になっていたことで一気に老朽化が進んでしまったようです。浴室の前の床は抜け落ち、入り口、勝手口のドアの鍵は紛失、窓の鍵、網戸は破損、コンセントは半分以上使えません。畑は耕せば耕すほど、刃物やガラス、陶器の破片などを含む「ゴミ」が発掘され続けています。おそらく前の住人が捨てて埋めたのでしょう。

水回りの問題も深刻で、パッキンの劣化などの影響で、トイレの水漏れ、害虫大量侵入の原因を突き止められず、現在も苦戦中です。修理するにも膨大な費用がかかることは明確で、とりあえず「雨風をしのげるところ、水と電気は使える」という認識で、週の半分は過ごしています。

このように100%快適にするにはまだまだ労力のかかる物件ですが、よく晴れて、暑い日であれば「0円でお湯シャワー」を使うことができます。最初はびっくりして「ガス代0円でお湯シャワーが使えるなんて素晴らしい!」と驚きました。お湯が使えるならガスは契約しなくていいや、ということにしているため、ガスは使えません。

「太陽光温水のシステムがまだ使えるみたいだね」と大家さん。団地やマンション暮らしばかりだった筆者は、太陽光温水というシステムを知らなかったので、これは一体どういうものなのか、そして今後も使い続けられるのか、を検証してみました。

ガスなしでもお湯が出る!?一世を風靡(ふうび)していた太陽熱温水システム

大家さんの話によると、筆者の家に設置してある太陽熱温水器は、矢崎総業株式会社(YAZAKI)の太陽熱温水器【ゆワイター ゆ太郎】で、1976年〜1980年代頃に設置したものであることがわかりました。
太陽熱温水器とは、太陽熱のエネルギーで水を沸かして温水にする装置です。ビンや缶を真っ黒に塗って、太陽の下に置くと温まる、という単純な仕組みを応用したものです。太陽熱エネルギーは、化石燃料、特に石油に依存しない代替エネルギー源として、1960年代から70年代にかけて注目を集めました。日本においては、特にオイルショックの影響により、この持続可能なエネルギー源への関心が高まり、普及が進んだ背景があります。

筆者の家の太陽熱温水器は、まだ使えるといえども、配管に穴が空いており、屋根の上から霧吹きで吹いたようなミストが雨のように降ってきます。
知り合いの工務店さんに相談すると、「太陽熱温水器の耐用年数は20年程度。除去した方がいいのでは。古いシステムだし」とアドバイスをいただいたものの、「まだ使えるのであればできるだけ長く使いたい」と強く思ったのでした。

屋根に登って防水テープを巻けばなんとか水漏れは止まりそうですが、太陽熱温水器の高さまでにあがるためのハシゴがやや高価なため、二の足を踏んでおります。

水道水と温水を混ぜて適温に。天気の悪い日は「ほぼ水シャワー」

▲シャワーか蛇口かを変更する部分が真っ二つになって取れてしまったため、工具を使ってひねっています。

太陽熱温水のシステムは、水道の元栓をひねっておくと、水道水が屋根に上がって、夕方に風呂場の専用蛇口を開くと熱湯が下りてきます。そこに水道水を混ぜて、温度調整をしながら使っています。屋根からつながっている配管は熱湯で熱々になっているため、誤って触れてしまうと火傷をしそうになります。

▲この太陽熱給水をひねると、水道水が屋根の上に運ばれ、水漏れも同時に発生しています。
▲「太陽熱給湯」を回すと熱湯が屋根の上から下りてきます。やけど注意。
▲水量も、浴びられる程度には出るシャワー

0円お湯シャワーは天気に左右されます。春から夏の時期(4月〜9月)は、比較的安定的に使える日が多いです。曇りであっても、日中の温度が高ければお湯は使えます。猛暑の日はやけどしそうな熱湯が出るので、湯船に浸かることも可能です。秋から冬の時期(10月〜3月)は日差しが弱いので、太陽が出ていても光量が足りずにどうしてもぬるくなってしまいます。春、夏でも曇りや雨の日はほとんど水しか出ません。冷水を浴びるには、なかなか精神的にも肉体的にも厳しいです。「今日は水しか出ない」と確定しているような天気の日には、無理して家でお風呂に入ることは諦めました。なぜならば、もう20代の頃のような元気がなく、無理しない方向で生きていこうと誓ったからです。

青年海外協力隊時代に経験した2年間の水シャワー生活

▲トンガ王国のヤシの木

水シャワーといえば、トンガで暮らしていた時の家のお風呂を思い出します。2010年から2012年、筆者は大学を卒業後、青年海外協力隊の美術隊員として、トンガに派遣されていました。トンガは南太平洋に位置するポリネシアの島国です。ヤシの木もたくさんあり、南の島のイメージが強い国です。トンガの気候は熱帯で、年間を通じて温暖ですが、5月~11月(雨季)にかけてはハリケーンの影響を受けやすく、肌寒さを感じるため、この季節になるとトンガ人もジャケットなどを着ていました。

当時住んでいた家は、水シャワーしか出ませんでした。水もでない時もありました。暑い日は水シャワーでも問題なかったのですが、雨季は肌寒く、水シャワーをそのまま浴びることはできませんでした。外を走ったり、運動をしてほてらせた状態で無理やり水シャワーを浴びる毎日。本当に寒い日や、運動をする元気がないときはお湯を沸かして、混ぜて浴びたりしていました。水シャワーだと汚れが落ちていないような、すっきり洗い流せていないような感覚もありました。

20代半ばだったので、根気で頑張っていたものの、水シャワーには大変苦労した経験があります。それを踏まえると、太陽の熱を効果的に集めて、天気が良い日に限定されるとはいえ、長時間熱湯が出てくる太陽熱温水システムは素晴らしいと思います。太陽熱温水システムは、発展途上国でも展開しているようですが、トンガの家に太陽熱温水システムが設置してあれば、もう少し暮らしやすかったかもしれません。

寒い日に「今日は水しかでない!」時の乗り越え方

お湯が出ない日は、富士宮市内にある「アプレシオ富士宮店」というインターネットカフェのシャワーを使用しています。平日であれば、オープンカフェ席の利用で最初の30分が210円(税込)です。平日3時間コース590円(税込)で仕事をしつつ、帰りにシャワーを浴びるのが、筆者の定番です。こちらのネットカフェはタオルの貸し出しが無料で、シャンプーリンスは常備されています。悪天候の日はもっぱら使わせていただいております。お隣の富士市にも「快活CLUB 富士青葉店と富士吉原店」の2店舗があります。飲み放題カフェの料金であれば、平日で最初の30分は210円(税込)、3時間パック590円(税込)で利用することができます。

筆者は温泉・銭湯が大好きなので、「家のシャワーが冷たい」を口実に、堂々と温泉・銭湯に行っています。車で10分程度走ったところに日帰り温泉が2箇所あります。静岡県富士宮市上稲子(かみいなこ)にある「新稲子川温泉 ユー・トリオ」と、山梨県南巨摩郡(みなみこまぐん)南部町にある「佐野川温泉」です。泉質が違うので交互に楽しんでいます。自身の身体へのご褒美という観点と、健康促進のためにも定期的に温泉に行くのは好ましいことです。また、常連の方が毎日通っていたりする場所なので、地域の方との情報交換の場としても楽しみがあります。

月々の支出を減らしても豊かな暮らしは可能なのか

もちろんガスを契約すれば、毎日、どんな天気の時でもお湯が出るようになります。快適さはお金を支払えば手に入ります。しかし、給料は上がらないのに物価は上がるこのご時世の状況と、なんでもかんでも闇雲にお金で問題を解決してしまうのはどうなんだろうか、と筆者は疑問を抱えながら生きています。すべてをお金で解決できない、という懐の事情もあります。

要するに、「頑張れば解決できる可能性が1%でもあるものには、果敢にチャレンジしたい。生きていくための支出はできる限り抑え、限りなくゼロに近づけていきたい。クリエイティブに楽しみながら豊かに生きていける方法を模索したい。お金をたくさん稼ぐことより、使うお金を減らす技術の方が早く習得できそうなので習得したい」という思考が、筆者の脳内に渦巻いています。

ガスを契約しないでお湯を使うことは「光熱費の削減」への取り組みの一つですが、それ以外での支出を減らす取り組みとして、作業場の家に畑が付いてきたので、その畑でほぼほったらかしで野菜を作っています。今まで値段が高くて購入を躊躇(ちゅうちょ)していたミニトマトが大量に収穫できるようになり、夏場は毎日食べることができるようになりました。キャベツ、ケール、レタスなどの葉物野菜の栽培にも成功し、スーパーで購入する頻度が激減しました。さつまいもに関しては、調子に乗って70本も苗を植えてしまい、消費の仕方をどうするかを真剣に考えているところです。

野菜が成長する姿はとても愛おしく、集まってくる虫を観察するのも楽しく、野菜の話は共通言語として、地域の人と話す時のネタにもなることに気づき、「食費の削減」以外のメリットを享受しています。

▲70本植えたさつまいも

自給自足の割合を少しでも増やして「生きる力」を育みたい

太陽熱温水システムの活用を考えつつ、その他の自然エネルギーも活用できないかを常に考えています。作業場から50mのところに川が流れているので、災害時には濾(ろ)過の装置を用意しておけば、飲料水として活用できるかもしれません。トイレも現在は汲み取り式ですが、コンポストトイレに興味を持っています。しかし、筆者はDIYが得意ではなく、家具の組み立ても苦手です。さまざまな人と協力しながら、理想の暮らしに近づけていけたらいいなと思っています。

坂本友実

坂本友実

静岡県富士宮市

編集部記者

「生き物の精密模型」という非常に限定的な市場で、ニッチな商品を届け方を追求した経験から、いいものなのにマイナーすぎて売れない、伝えるべき人に伝えられなくて歯痒い、という問題を解決したく、媒体にぴったりなアプローチによって「伝えたい想い」を「届けるべき人」に届け、機会損失をなくしていきたいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です