長崎県壱岐(いき)市では、島特有の粘土の強い玄武岩土壌の性質を生かしたアムスメロン(以下、メロン)が栽培されており、毎年5月末~6月末ごろに出荷の時期を迎えます。その少し前、5月上旬~中旬にかけて野菜売り場でよく見かけるのが、メロンよりも小さいけど見た目はメロンという、その名も「摘果(てっか)メロン」。産地だからこそ販売されている小さなメロンは、漬物にして食べられることが多いです。
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ほんの1カ月の間、産地でしか出回らない摘果メロン
メロンの栽培の過程に、「摘果」という作業があります。メロンの実に栄養を集中させるために、1本のつるに付く実の数を調整します。その時に摘み取られたのが「摘果メロン」です。摘果メロンが店頭に並んだ1カ月~2カ月後に、メロンが店頭に並びます。ほんの1カ月くらいの間、産地でしか出回らない摘果メロンは貴重なのです。
見た目はメロン?味もメロン?
見た目はメロンだけど、メロンよりも2まわり、3まわりほど小さな摘果メロン。包丁で縦に切ると、まるでメロンと同じように真ん中にタネがあります。メロンを切ったときのような、ふわーっと広がる甘い香りはありません。
タネを取り除き、皮を剥き、キュウリのような色のところが食べられます。香りはうっすらとメロンの甘い香りで、青臭さはありません。食感はシャキシャキ感のないキュウリのような感じです。メロンの果実の柔らかさとは違って、パリポリというような食感があります。
メロンは漬物に。
時期になるとスーパーなどでは「漬物用摘果メロン」とPOPなどに書いて販売しており、ぬか漬けやビール漬け、塩漬けなどの漬物として食べられることが多いです。食感や香りも良く、メロン出荷前の風物詩として食卓に並びます。「もうすぐメロンの時期だね」とメロンを楽しみにしながら、漬物を食べます。
我が家では生で食べるのが人気です。
子どもたちはマヨネーズでパリポリとサラダ代わりに食べます。
大人は酢味噌和えにして、お酒のあてにします。さっぱりとしていて、暑くなり始めた時期にぴったりです。
摘果メロンを経て、待ちに待ったメロン
摘果メロンの漬物を経て、待ちに待った1カ月後のメロン。メロンがデザートに出ると、「キャー!メロン」と子どもも大人も大喜び。摘果メロンの漬物の時にはなかった歓声が上がります。
メロンが甘くておいしいのはもちろんのことですが、摘果メロンを経てこそのメロンなのです。大喜びするほどではないけれど、産地に住む者にとってはなくてはならない摘果メロンなのでした。
(写真はすべて筆者が2024年6月に撮影)