
JRと地下鉄が乗り入れる「鶴舞駅」に接する「鶴舞公園」は、明治時代にできた名古屋市最初の大公園です。洋風と和風庭園があり、花と緑あふれる市民の憩いの場となっています。歴史的な建造物も点在し、コンサートの殿堂、名古屋公会堂や中央図書館もあり、最近は飲食店エリアも充実。そんな魅力いっぱいの鶴舞公園で、秋の一日、お散歩してきました!
目次
「つるま」?「つるまい」?

「鶴舞公園」は1909(明治42)年11月19日に名古屋市が設置した最初の公園です。明治の欧化思想の影響を受けた、フランス式の洋風庭園と回遊式の日本庭園をあわせ持つ和洋折衷式の大きな公園です。サクラ、バラ、ハナショウブなどの花の名所として市民に親しまれています。面積は約24ヘクタールで、2009年7月23日には公園のほぼ全域が国の登録記念物(名勝地関係)に登録されました。一年中花が咲き乱れる、とても美しい公園です。
日本では1873(明治6)年の太政官布達により公園制度が設けられ、名古屋にも大公園を、と市民の間にも強い希望がありましたがなかなか実現できなかったそうです。しかし1905(明治38)年から精進川(現新堀川)の改修工事で土砂が余り、また1910(明治43)年に開催予定の第10回関西府県連合共進会の会場が必要となったことから、ついに長年市民が待ち望んだ大公園が生まれることになったそうです(園内配布の「鶴舞公園トリビアマップ」より)。
「鶴舞公園」は実は「つるまこうえん」と読みます。しかし接しているJRと地下鉄の「鶴舞駅」は「つるまいえき」です。これはなぜ?
名古屋市図書館の「名古屋なんでも調査団」に詳しく載っていました。もともとこの地域は「ツルマ」とカナで書かれていたのですが、鶴舞公園ができた時に「鶴舞」の漢字を当てたそうです。江戸時代の文献には「靏舞池」と「靏萬池」が載っていて、それぞれ「つるまひ」「つるま」と読み方が書いてあるそうです。
鶴舞中央図書館や鶴舞小学校は「つるま」で、これは鶴舞公園に合わせたのでは?と推測していますが、実際のところよく分からないようです。
歴史的建造物がたくさん!

鶴舞公園は明治時代にできた公園ですので、園内には明治時代から各時代の歴史的な様式の建造物が点在しています。私はレトロ建築が好きであちこちの古い建物を巡って撮影するのが趣味なのですが、鶴舞公園は絵になる風景が多く、花があふれているので絶好の撮影スポットです。
では園内を歩いてみましょう!
噴水塔

JR鶴舞駅からすぐの正面出入り口から園内に入ると、ヒマラヤスギの巨木が立つ広々とした並木道があり、その先に「噴水塔」が見えてきます。
1910(明治43)年の第10回関西府県連合共進会での正面広場を飾ったのがこの噴水塔で、以来鶴舞公園のシンボルとなっています。

噴水塔上部はローマ様式の大理石柱、下部は岩組みという和洋折衷式です。
撮影日はとてもいいお天気だったので、噴水の水が岩に落ちるところで虹が出ていました。

噴水塔は地下鉄3号線工事のため一時撤去されましたが、1977(昭和52)年に復元されたそうです。1986(昭和61)年5月27日に名古屋市指定文化財となっています。
意外と細い大理石柱が華奢(きゃしゃ)で繊細な雰囲気を醸し出していて、とても美しい噴水塔です。
ちなみにこの噴水塔、上から見るとアニメ「ポケットモンスター」に登場するアイテム、モンスターボールにそっくりだということで、スマホゲーム「ポケモンGO」の「聖地」としてこの噴水塔(と鶴舞公園)が突如大ブレークし、連日深夜まで多くの人が押し寄せたのを覚えていらっしゃる方も多いのでは? ポケモンGOが大ブームになったのは2016年だそうです。もう10年近く前になるのですね。
また噴水塔の南東には普通選挙法を記念して造られた野外劇場「普選記念壇」1928(昭和3)年があります(写真撮り忘れました・・・)。市指定文化財です。
岡谷鋼機名古屋公会堂

噴水塔の北には「名古屋市公会堂」があります。ネーミングライツで現在「岡谷鋼機名古屋公会堂」となっていますが、1930(昭和5)年に昭和天皇御成婚を記念し、名古屋市の事業として開館した約3,000人収容の大ホールです。当時としては国内最大規模だったそうです。鉄骨鉄筋コンクリート造の4階建て(地下1階)で、2020(令和2)年に国の登録有形文化財(建造物)となっています。
直線を基調にし、半円のアーチがロマネスク風の趣を与えています。どっしりと重厚感のあるデザインですが、この半円アーチが軽やかな美を添えていますね。

名古屋市公会堂は日比谷公会堂、大阪市中央公会堂と並ぶ日本を代表する公会堂建築です。コンサートホールとして有名で、国内外の一流アーティストの名古屋公演の会場として使われてきました。今も現役です。
奏楽堂

噴水塔からさらに並木道を進んでいくと、独特な形状の「奏楽堂」が現れます。1910(明治43)年の第10回関西府県連合共進会の中心的施設として建造されました。イタリアルネサンス風の円形舞台の建物ですが、細部にアール・ヌーボー風のデザインが施されています。

1934(昭和9)年の室戸台風により崩壊したため、その後デザインの違う奏楽堂が建てられていましたが、1997(平成9)年に元の姿に復元されました。

手すりは「君が代」の楽譜をデザインしているそうです。

階段の手すりの、特に右側の部分は典型的なアール・ヌーボーのデザインですね!

復元されたものなのでオリジナルではありませんが、明治時代の名古屋の紳士淑女が演奏会に集まっていた頃を思わせる、優雅なデザインです。
なお、周囲に観客席もあり、有料ですが各種イベントを開催することができます。
胡蝶ヶ池

ルネサンス様式の「ザ・洋風」の奏楽堂の隣には、このような純日本風の「胡蝶ヶ池(こちょうがいけ)」があります。鶴舞公園はここから西側はフランス風の幾何学的な洋風庭園、東側は回遊式の日本庭園になっています。この池も1910(明治43)年の共進会開催のために造られたもので、蝶が羽を広げた形になっているので「胡蝶ヶ池」と名付けられたそうです。
八幡山古墳

鶴舞公園の敷地の東端に、通りを挟んで「八幡山古墳」があります。ここまで古くても明治時代でしたが、いきなり古墳時代にタイムスリップ!
東海地方最大の円墳で、高さ10メートル、直径82メートルもあります。

1931(昭和6)年に国の史跡に指定されています。戦争中は鬱蒼(うっそう)と茂っていた松が伐採されてしまったそうですが、戦後は再び緑化されているそうです。

地図で見るとこんな感じです。隣の鶴舞小学校と比べても、かなりの大きさです。

5世紀前半から中頃の古墳だそうです。発掘調査は行われたことがないので、誰のお墓なのか不明なんですね。この辺はたまに通りますが、あまり古墳だということを意識していなかったので、改めて歴史を感じます。名古屋工業大学構内にも古墳(一本松古墳)があるなんて知りませんでした!
名古屋市のサイトによると、5世紀前半に名古屋台地を支配した豪族の墳墓とみられ、出土した埴輪(はにわ)などは戦災で失われたそうです。八幡山の名は、御器所八幡宮の奥宮があったからで、いろいろ神事がおこなわれたとも伝わっているそうです。
また現在は「吹上公園」になっている場所は元々は名古屋刑務所で、”刑務所が建てられる前には、「茶臼山古墳(ちゃうすやまこふん)」「太郎塚古墳(たろうづかこふん)」がありましたが、現在は形跡もありません”というのも初めて知りました。この辺は古墳群だったんですね。

ちょっと古墳を一周してみました。周りには堀があり、桜が植えられています。中には入れませんが、グルっと回ると確かに古墳だ! とちょっと興奮しました。周辺は静かな住宅地です。直径82メートルもあるので、一周は約257メートルです。自転車だったのでラクラクでしたが、歩いたら結構ありますね。桜の季節はお散歩にぴったり!
今後も発掘作業はしないのでしょうか? 誰のお墓か急に興味が出てきました!こんな大きな古墳をそのままにしておくのはなんかもったいない?!
鶴舞公園はお花がいっぱい!

では、今度は園内に咲き乱れるお花を見てみましょう! 噴水塔と奏楽堂の間には大きなバラ園があり、シーズンにはたくさんの人が訪れます。取材時はまだちょっとバラの見頃には早かったのですが、一部咲いていました。

これは過去に撮ったバラ園の写真です。春のバラですね。

これも過去の写真です。コスモス畑から噴水塔を望みます。

鶴舞公園は桜の名所として有名ですが(すみません、なぜか桜の写真はありません)、野球場の隣に「あじさいの散歩道」というアジサイの名所もあります。

ハナショウブが咲く「菖蒲池」です。

噴水塔の南側には温室を備えた「緑化センター」があります。緑化に関する相談・指導、各種資料の閲覧・展示、講習会・研修会を行っています。

もう終わってしまいましたが、撮影時はハロウィンシーズンだったので、緑化センターの外にはこんなフォトスポットがありました。

温室の中にもハロウィンフォトスポットが!

こんな映え狙いアーチも!

緑化センターの周りにはたくさんのお花が咲いていました。緑化センターはこのスイフヨウ(酔芙蓉)で有名だそうです。スイフヨウは朝に白色で咲いた花が、夕方にかけて徐々にピンク色に変化していくのが特徴だそうです。白とピンクの2色で綺麗ですね。

これはケイトウの一種の「ノゲイトウ」だそうです。

これは「アメジストセージ」だそうです。背景の黄色い花との配色がよかったので撮りましたが、黄色い花はボケているのでAI検索ができません・・・

これは「フウセンカズラ」だそうです。愛らしいのでパチリ。
グルメスポットも充実!

鶴舞公園は長年売店程度のお店しかなかったのですが、2023年に大リニューアルをして、「ツルマ ガーデン」という飲食店エリアが誕生しました。園内に3つのエリアがあり、一番広い「エリア1」は鶴舞駅からすぐなので、お仕事帰りにも重宝しそうです。

話題のスイーツのテイクアウトのお店や、バルなどたくさんあります。テイクアウトして公園で食べるのも最高です。

お惣菜店やプロントも! 落ち着いた雰囲気なのがいいですね。

中央の緑あふれる広場をぐるりと囲むようなレイアウトになっています。

黄色い彼岸花? が咲いていました。エリア2と3は公園のもっと奥にあります。広い公園を回ったらおなかが空きますから、ツルマガーデンで休憩!

鶴舞公園の敷地内には「鶴舞中央図書館」もあります。スポーツ施設もありますよ! 読書して、自然に親しんで、運動して、グルメも味わって、と一日中楽しめます。
鶴舞公園は名古屋市民の憩いの場で、地元の方が芝生やベンチでリラックスしているのをたくさん見かけましたが、名古屋観光のスポットとしてもおすすめしたいです。とにかく広いですし、天気のいい日は「ツルマ ガーデン」で食品を買ってピクニックもいいのでは?
鶴舞駅は名古屋駅からJR中央本線で2駅、6分で行けます。お花の好きな方も、ちょっと足を伸ばしてみませんか?
情報
鶴舞公園
住所:〒466-0064 愛知県名古屋市昭和区鶴舞1
アクセス:JR中央本線・名古屋市営地下鉄鶴舞線「鶴舞」駅 公園口・4番出口よりすぐ
参考
名古屋なんでも調査団:https://www.library.city.nagoya.jp/img/reference/chosahoukoku_07.pdf
名古屋市ホームページより:https://www.city.nagoya.jp/showa/miryoku/1021511/1021516/1021521.html
岡谷鋼機名古屋公会堂:https://nagoyashi-kokaido.hall-info.jp




