「僕は、オジーが残した宿の3代目」観光地化されていない離島に新しい命を吹き込む、神谷荘の挑戦！【沖縄県うるま市】

沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝＝魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ！」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

毎日お昼になると聞こえてくる、美しい沖縄音楽ーーーー

発信元は津堅島（つけんじま）の「民宿神谷荘（かみやそう）」。
神谷荘では、毎日午後12:00に、YouTubeとTikTokで店内パフォーマンスの様子をライブ配信している。

ライブ配信を仕掛けているのは、3代目の神谷恭平（かみや・きょうへい）さん。
曾祖父、祖父が営んでいた会社を引き継ぐことを決意し、Uターンして、早4年になる。

「観光地化が進んでいない離島は貴重。何もないからこそ、何でも生み出せると思うんです」
そう語る、神谷さんの熱き挑戦について話を聞いた。

「何もないからこそ、何でも生み出せる」

時は戦後まもなく。津堅島で初めて観光業を始めたのが神谷さんの曾祖父だった。本島から船で観光客を運んでいたことがそもそもの始まりで、島での滞在を充実させるために食堂や民謡ショーを開催し、宿も運営し始めた。宿泊者が増加するとマリンスポーツ業を展開するなど、曾祖父・祖父ともにやり手の経営者だったという。祖父の代では、兄弟8人がそれぞれの得意を生かして事業を広げ、民謡歌手だった祖父はそこに沖縄音楽のエッセンスも加えた。

神谷さん自身は沖縄本島で生まれ育ったが、小さい頃祖父のいる津堅島に行くのが好きだった。たくさんの料理メニュー、活気あふれた店内、楽しそうな兄弟たち。

地元の人からは「神谷といえば観光だよね」と言われる場所だったが、上京していた4年前に津堅島へ訪れた際、メニューはわずか3品に減り、楽しかった記憶とは裏腹に年老いていく祖父をみて、ショックを受けたという。

先祖が「神谷」という名前を大事にしていること、同時にその想いを引き継ぐ人がいないことを知り、ならば自分が、と津堅島へのIターンを決意した。

音楽でまちおこし！ミュージックアイランドを目指して

決意を持って沖縄に戻ってきた神谷さんだったが、なかなか思い通りには進まない。
新型コロナウイルス感染症の流行だ。
観光客の乗船規制がかかり、インフラが途絶えた。島全体が大打撃を受け、暗雲に包まれた。

そんな中、沖縄で三線を広めた人の生誕の地、いわば沖縄音楽発祥の島が津堅島であることを知った神谷さん。

島独自の言葉の継承は無くなり文化が消えゆく中で、音楽を通じて島の文化保存に貢献できないか。そうして始まったのが毎日のライブ配信だった。動画はたくさんの方に沖縄音楽を知ってもらうきっかけになり、乗船規制が解除されると神谷荘のファンだというリスナーが津堅島に訪れるようになった。