小さな町に広がる大きな宇宙-「夜空を楽しむ写真展」開催【福島県石川町】

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福島県南部に位置する石川町。豊かな自然に囲まれたこの町で、夜空の魅力を伝える写真展が開催されている。今回、インタビューに応じてくれたのは、展示会の出品者のひとりであり、天文愛好家の鹿岡国俊(かのおか・くにとし)さんである。本写真展には、鹿岡さんの仲間たちの作品も並び、来場者に美しい夜空の姿を紹介している。

石川町の夜空が教えてくれる、身近な「驚き」

▲展示会場がある「モトガッコ」は旧小学校舎をリノベーションした人気の施設(福島県石川町=2025年8月、筆者撮影)

「夜空を楽しむ写真展」と題された本展では、星座や天の川、流星群といった比較的身近な天体からオーロラや彗星(すいせい)といった貴重な天文現象まで、鹿岡さんをはじめとする天文愛好家たちが地元・石川町などで撮影した、自然の美に満ちた天体写真が展示されている。

澄んだ空気と、町の明かりが少ない環境は、身近な場所でも美しい星々を観測できる絶好の条件となっている。石川町の北東部に位置する千五沢(せんごさわ)ダムや、東部の景勝地「にほんぶな」から撮影された風景、さらに町明かりの中に浮かび上がる星座の姿は、都市部ではなかなか見ることができない、石川町ならではの光景である。

特に印象的だったのは、夜空を横切る光の列である。これは、衛星インターネットサービス「スターリンク」の人工衛星が、夜空を等間隔で移動していく様子を捉えたものである。肉眼でも観察可能なこの現象は、天体観測が特別な趣味ではなく、日常にも溶け込んでいることを教えてくれる。

満月も彗星も、すべては夜空からの贈り物

▲鹿岡さんは郡山市内にある科学館で天文ボランティアも務める(福島県石川町=2025年8月、筆者撮影)

鹿岡さんが捉えたのは、月のさまざまな表情である。昇る月と沈む月で異なる色の変化、月食によって地球の影が月を覆う神秘的な光景、さらには月の満ち欠けによる形の変化も、写真というメディアを通してドラマチックに表現されている。

「この写真は、月を照らす“地球照”を写したものです。月の暗い部分がうっすらと光って見えるのは、地球の反射光が月を照らしているからなのです。子どもたちに説明すると、みんな目を輝かせてくれます。わかってくると、もっと面白くなるんですよ」と、鹿岡氏は楽しそうに語る。

狙って撮るのではなく、ただそこにいることで出会える偶然の感動。夜空を見上げることで生まれるその体験は、心を豊かにする時間となる。

▲どの写真も力作ぞろい。会場内では星座の説明コーナーも (福島県石川町=2025年8月、筆者撮影)

星空が教えてくれる、新しい視点と感動

今回の写真展は、美しい星空をただ紹介するだけでなく、石川町の自然環境の豊かさ、そして宇宙の壮大さを体感させてくれる内容となっていた。鹿岡さんたちの写真からは、夜空への深い愛情と、その魅力をより多くの人に伝えたいという情熱が伝わってくる。

この写真展は8月27日(水)までの開催。石川町の澄んだ夜空を見上げ、自分だけの夜空に出会うために、ぜひ足を運んでみてほしい。

取材協力:石川町文教福祉複合施設(モトガッコ)
参考:にほんぶなの森林文化(福島県庁森林計画課)

昆愛

昆愛

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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