東日本大震災から13年の節目を迎えた2024年3月11日、福島県内各地で犠牲者の鎮魂祈願や被災地の復興を願うさまざまな行事が行われた。
東京電力福島第一原子力発電所から約60キロ離れた郡山市のJR郡山駅前広場でも「復興の灯火プロジェクト」が開催された。風化していく震災の記憶を後世に伝えるとともに、地域とのつながりやまちづくりの発展を願って始まったプロジェクトで、今年で6回目となる。今回も市内にある短大が行政と連携し、県内各地にある復興住宅の入居者や地元の高校生などが、郡山の伝統工芸品「海老根伝統手すき和紙」で作られた灯ろう約380基に思い思いに言葉や絵を描き、その灯ろうが広場を明るく染めた。
会場では海老根伝統手すき和紙を使ったミニ灯ろう作り体験やその原料である「こうぞ」で作ったお茶の試飲、また、復興状況の紹介ブースなども設けられ、通行客が足を止める姿も多く見受けられた。
イベント後半では短大在学生による楽器演奏なども披露され、東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」の歌声が披露されると、静まり返った会場内からすすり泣きが聞こえる場面もあった。
発生から13年が経過した現在も2万5000人超の方々が県内外で避難を続け、郡山市内にも原発施設がある双葉町と富岡町が支所を設置し行政サポートにあたっている。(写真は郡山市内にあった富岡町役場郡山事務所の仮庁舎。現在は近くの別の建物に移転している。)
昨年11月には国が先行して除染などを進めてきた「特定復興再生拠点区域」の避難指示が県内6つの自治体で解除され、徐々にインフラ・生活環境の整備が進んでいる。しかし、一方で「帰らない」という選択をした避難者も多いことから新たなコミュニティづくりを模索している自治体もあり、震災の教訓をどう次世代に継承させていくか見えない課題を抱えている。