まもなくシーズンの終わりを迎える秋田県の稲刈り。その稲刈りは、こんな場所でも。今月初め、県内を走る鉄道沿線で、乗客の旅情に華を添えてきた「田んぼアート」の稲刈りが行われた。見納めの日、たまたま列車に乗り合わせた客も、車内から手を振って惜しんだ。全国を見渡せば、コロナ禍で田んぼアートを中止する地域もあったが、田植えや稲刈りに関わった団体代表は「観光客や地域の人が楽しんでくれたので、やってよかった」と安堵の表情を浮かべた。
「田んぼアート」の稲刈りは、今月初め、鷹巣駅(北秋田市)から角館駅(仙北市)までを結ぶ秋田内陸縦貫鉄道の沿線各地で行われた。このうち、仙北市の上桧木内(かみひのきない)駅前の田んぼでは、2日、田植えに関わった地元住民などでつくる「秋田内陸線を守る会」や市の職員など、約20人が稲刈りに汗を流した。
田んぼアートは、色の異なる品種の苗を計画した図案に沿って植え、高台から見た時に、育った稲が絵柄となって現れるアート作品。少し小高くなった線路沿いには毎年、様々な絵柄が登場し、今年は人気キャラクターの「チコちゃん」や「ハローキティー」もお目見えした。秋田内陸活性化本部が列車を「展望台」に見立て、車窓からの眺めを楽しんでもらおうと企画している。稲が育ち、見頃となった7月から9月上旬には、観光で訪れた多くの乗客が車内から写真を撮るなどして楽しんだ。
上桧木内駅前にお目見えしたのは、約760平方メートルに広がった「秋田犬」と毎年2月に開かれる小正月行事「上桧木内の紙風船上げ」の田んぼアート。実際の紙風船上げは、新型コロナウイルスの影響で、来年の中止が決まった。
稲刈りは午前10時ごろに始まった。途中、鷹巣方面行きの列車がホームに停車した。作業する人たちが稲刈りの手を止め、列車に向かって手を振ると、乗客も笑顔で振り返し、見納めとなった田んぼアートを惜しんだ。稲刈りは約1時間ほどで完了した。
全国的には、新型コロナウイルスの影響で田植えや観覧が「密になる」などとして、田んぼアートを中止する地域もあった。守る会の鈴木英二会長(68)は、「当初はコロナ禍でやらないと思ったが、無事、田植えから稲刈りまで行うことができた。観光客や地域の人が楽しんでくれて、今年もやってよかった」と話し、安堵の表情を浮かべた。