
福島県郡山市(こおりやまし)出身で、昨年急逝した俳優・西田敏行さんの歩みを紹介するパネル展が、双葉町にある東日本大震災・原子力災害伝承館の1階エントランスホールで開催された。西田さんは、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故で甚大な被害を受けた福島の復興に尽力してきた県出身の人物のひとりである。俳優としての活動のかたわら、被災者や故郷に対する深い愛情を持ち、さまざまな場面で支援を続けてきた。
伝承館内の映像展示「プロローグシアター」では、来館者に向けた日本語版ナレーションを西田さんが担当しており、ひとりひとりにやさしく語りかけるような福島弁で、来館者へ震災の記憶と復興への願いを語り継ぐ存在でもあった。
今回のパネル展では、西田さんが復興支援に関わってきた足跡を伝える地元紙の記事およそ20点が展示された。報道写真や見出しを通じて、その活動の軌跡がありありと伝わってくる構成であった。また、生前に西田さんが愛用していた私物も展示され、俳優としての姿だけでなく、一人の人間としてのぬくもりが感じられる内容となっていた。
さらに、会場には「ありがとうノート」と名付けられたメッセージ帳も設置され、来館者が西田さんへの感謝や思い出を自由に記すことができた。ノートには、来場者一人ひとりの胸に西田さんの存在が深く刻まれていることがうかがえるメッセージが書き込まれていた。
廃炉作業の完了を見ることなくこの世を去ってしまった西田さんだが、展示を通して、その存在は今なお多くの人々の心の中で生き続けているように感じられた。郷土を愛し、人々に寄り添い続けたその姿勢は、震災からの歩みを振り返るうえでも大きな意味を持つものである。