元バスガイドの知識を持って地元北海道へJターン。観光の経験を生かし、旅の魅力を伝える【北海道札幌市】

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Lemone株式会社 代表取締役

Yumiko Terai
寺井 裕美子氏

元バスガイドの経験を生かし、北海道内へJターンした寺井 裕美子(てらい ゆみこ)さん。観光業界で培った知識と企画力を武器に、旅行業を中心としたLemone(レモネ)株式会社を設立しました。結婚、出産、離婚を経験し、シングルマザーとしての挑戦や、高校生とともに開発したヒット商品など、逆境を乗り越えながら進んできた彼女の歩みとは。北海道の魅力を伝える旅のプロとして、地域に根ざした観光を創造し続ける彼女の思いに迫ります。

高校時代の海外留学と合唱部を経験。語学力と歌唱力を武器に観光バスガイドへ

立ち上げまでのキャリアを教えてください。

高校卒業までは地元の釧路で過ごしました。周りの友人が就職や進学で東京に出ていく中で、自分も何か東京で挑戦できる仕事はないかと考えました。高校時代にカナダへ1カ月ほど語学留学した経験があり、また合唱部で活動するほど歌うことが好きだったので、語学力と声のスキルが生かせるバスガイドが適職ではないかと思い、観光バス事業を展開する東京のはとバスに就職しました。
バスガイドとして数年間働いた後、フリーでバスガイドや添乗員の仕事を請け負うようになり、旅行業界の幅広い経験を積みました。その過程で旅行会社の立ち上げメンバーとして声をかけてもらい、旅行の現場だけでなく営業や企画にも携わるように。これがきっかけで、旅行業を根本から学ぶ機会を得ることができました。
この経験が、現在自分の会社を立ち上げるうえで大きな支えになっています。今、ようやく旅行業の資格を取得し、自分の事業として本格的に展開できるようになりました。

北海道に戻ってきたきっかけを教えてください。

28歳のときに結婚し、子どもができて産休や育休に入ったのですが、休み明けの復職を認めてもらえないという壁に当たりました。仕事は気に入っていたのでとても残念でしたが、運よく別の観光バス会社に就職できたんです。そこでは運行管理の仕事を任せていただき、順調に新しい仕事に慣れていきました。

しかし、ここでまた人生の転機を迎えることになります。離婚が決定し、これからは子育てとバスの仕事を一人でやらなくてはならなくなったんです。まずは保育園を探したのですが、年度の途中だったため、預けられる保育園がなかなか見つかりませんでした。ようやく見つかった保育園は、月額7万円の保育料に加え、お迎え時間が1分でも過ぎると延長料金が加算されるという厳しさ。気持ちも塞ぎがちになり、さらに2020年にコロナ禍を迎え、観光バスの仕事は激減し、生活は一気に苦しくなりました。

「このままではいけない、今の暮らしを変えなくては、自分も子どもも幸せになれない」。そう強く思うようになりました。まずは、北海道に戻ろうと思いました。東京より物価は低いし、知り合いもいる。でも車の免許がなかった私は、地元の釧路に戻っても、車がないと生活は難しい。となると、交通の便もよく、知人もいる、家賃も東京よりグッと安価な札幌に行こうと決心しました。

旅行業のセンスで高校生の挑戦をサポート!大ヒット商品「どら焼き」誕生で創業を決意

札幌に来てからはどのようなお仕事をスタートされたのですか?

いつか今までの旅行業の経験を生かして、自分の力で仕事をはじめられたら、と思っていました。そして、子どもと一緒に過ごせる時間をつくれる仕事がいいと考え、在宅でできる仕事を模索しました。手始めに自分に足りない技術を身につけようと、ライター、Webデザイナーなどさまざまな講座を受けました。それらを生かした仕事をフリーランスとしてやってみたのですが、そううまくはいきませんでした。
そこで、とりあえず女性支援の会社でパート勤めをすることにしました。旅行業ではありませんでしたが、自分自身が離婚後に子育てに苦労した経験があったので、女性支援や子ども支援に興味がありました。また、個人での仕事では、SNSの運用代行や営業の仕事を請け負っていました。

Lemone株式会社を設立したきっかけを教えてください。

昔勤めていた旅行会社から、仕事の相談を受けました。コロナ禍で交流できなくなった姉妹校の高校生たちのために、「両校の行き来ができなくても、何かオンラインでつながれる企画ができないか?」 という内容でした。
せっかくいただいたご相談だったので、私なりに旅行業時代に培った企画の経験を生かして提案させていただきました。両校が農業に携わっていたため、自分たちの作った作物で何か商品化できないかと考えました。
そこで、両校の生徒たちをオンラインでつなぎ、石垣島の特産品である黒糖と福島の米粉を使ったどら焼きを開発するプロジェクトを立ち上げました。単に商品を作るだけでなく、高校生たちの将来の選択肢を広げたいという思いから、 パッケージデザインの講義やマーケティングの講義もオンラインで実施。その結果、福島・沖縄のどちらからも「再販してほしい!」 という声が上がるほど、プロジェクトは大成功しました。
これをきっかけに、 個人事業では社会的な信用を得にくいことや、融資を受けにくいことなど、事業展開上のやりにくさを感じるようになり、法人化を決めました。

いずれは会社を立ち上げたいという思いはお持ちでしたか?

はい。父も母もそれぞれ個人事業主だったので、子どものころから自分も将来は、社長になりたいという漠然とした思いがありました。ちなみに、父はカラオケボックスを、母はネイルサロンを経営していました。

旅行業の資格を取得し、本格的に事業展開スタート。強みはガイド経験とメディア露出!

現在の事業内容について教えてください。

現在のメイン事業は旅行業で「trip link(トリップリンク)」として展開しています。旅行業は立ち上げ当初からやりたかったのですが、旅行サービス手配業の資格取得が困難で、なかなか本格的に事業展開にいたりませんでした。ですが、やはり自分に知見があり、得意な分野は旅行だなという思いを貫き、旅行サービス手配業の資格を取得。いよいよ2024年から旅行業をスタートさせることができました。
また、主に子育て世代のママをターゲットにしたイベントの企画・運営や、PRのためのSNS運用を行っています。保育園や幼稚園、習い事などの子育てに関するブースを一つの会場に集め、情報を提供する子育てイベントを実施。初回開催では500人もの集客に成功しました。こちらの事業も、ご依頼があればもちろん対応いたします。

貴社の強みを教えてください。

ガイド経験があるので、旅行先の観光情報に詳しく、土地勘もあります。北海道内だけでなく、以前東京でバスガイドをしていた経験もあるため、関東圏の観光にも知見があります。
また、私自身がシングルマザーとして会社を立ち上げたという話題性から、テレビ番組のコメンテーターなど、メディアからもよく声がかかります。

社名の由来「レモン」に込めた自身の人生と会社への思い

社名「Lemone」の由来は?

デール・カーネギーの名言「人生が酸っぱいレモンをあなたに与えたら、レモネードを作れ」からインスピレーションをいただきました。“人生に試練が訪れても、発想の転換で前向きに生きる方法はある”という意味です。まさに自分自身がそうやって乗り越えてきたので、社名にするならこれだと思いました。

今後はどのような会社にしたいとお考えですか?

今は主に社員旅行などの団体旅行の手配をしていますが、これからは自ら旅を企画して営業活動を活性化させていかなければならないと考えています。ただパッケージされたプランを売るのではなく、お客さまが望む旅をカスタマイズして企画していきます。
具体的に考えているのは、一次産業に関連した農業体験や、インバウンド向けの日本の居酒屋巡りなどを深掘りしていこうと検討中です。また、元々ガイドだったので、旅行会社から依頼を受けたガイドや添乗員としてもまだまだ活躍していくつもりです。ガイドや添乗員の概念を超えて、旅のコンシェルジュ、アテンダーのようなイメージで旅の相談ができるポジションを築いていきたいですね。

取材日:2025年3月19日

Lemone株式会社

  • 代表者名:寺井 裕美子
  • 設立年月:2022年03月
  • 資本金:400万円
  • 事業内容:旅行業【trip link】(北海道知事登録旅行業第3-896号 )・イベント企画&運営 ・ECサイト運営(準備中)
  • 所在地:〒060-0062 札幌市中央区南2条西12丁目323-19
  • URL:https://www.lemone.co.jp/
  • お問い合わせ先:011-600-6255

この記事は株式会社フェローズが運営する、クリエイターに役立つコンテンツを発信する「クリエイターズステーション」にも掲載されています。

宮本 和加子

宮本 和加子

15年間出版社に勤めた経験を活かしてフリーライターとして活動中。フェローズでは風雲会社伝の札幌を担当。普段は雑誌やWebでグルメ系や人物取材記事などを執筆している。ライター以外には、マヤ暦アドバイザーという別の顔も持つ。

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