「ばえる」八女電照菊と1枚の絵画で八女の今と昔がつながった【福岡県八女市】

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福岡県八女市は、「八女電照菊」の産地として知られています。夜間に電灯で光を当て、日照時間を調整することで開花時期をコントロールし、特にお盆や正月前などの需要期に大輪の白菊を周年安定して出荷しています。

私の友人が菊農家をしており、時々「花、撮って」と言いながら菊をわけてくれます。私が写真を撮るのを趣味としているので、時々頼まれるのです。

そうやって、毎年お盆とお正月に大切に育てた菊を分けてくれるのですが、おさななじみのやさしさが年々しみるようになってきました。

出荷用だけでなく、試作として育てた花もあり、今年のお正月は色とりどりの菊が手元に集まりました。

電照菊を思いのままに生けて撮影してみる

私は生花を習ったことはなく、どう生けるのが正解なのか毎回わかりません。

だからこそ、今回はその「わからなさ」をそのまま使って、豪華絢爛(けんらん)に、カラフルに、少し雑然と生けてみました。

普段飾っている場所、薄暗い室内で撮影を試みました。ストロボを使わず、デジタルカメラの感度を高め、粒子感を残して撮っています。

鮮やかで独特な色彩の花の写真や、人物のポートレート写真で有名な蜷川実花さんのように、思いのまま色を重ねてみたかったのです。

菊は花でありながら、とにかく長持ちします。冬の暖房のない部屋なら二週間は平気で、よく水を吸うから水差しさえあれば、ズボラな私とも相性がいいのです。

葉を豪快に手でしごき、必要な長さに切ると、青臭い香りが広がって気持ちがすっとします。

私は今までずっと女性ポートレートを中心にとってきたので、切り花を主役にじっくり撮ったことは友人に頼まれるまでまったくありませんでした。霧吹きで水滴をつけ、どの花を主役にするか迷いながら撮っていると、だんだんと一輪一輪の表情が浮かび上がってきます。

菊にはどこか辛気臭いイメージがありました。

でも友人をきっかけに、菊のモチーフや人物と菊のポートレートに目が向くようになっていきました。

19世紀イギリスの芸術家・デザイナー、ウィリアム・モリスの装飾文様にも菊は登場するし、フランスのファッションブランド、ポール&ジョーを象徴するテキスタイルのモチーフとしても使用されており、華やかで生命力あふれるモチーフとして使われています。

一枚の絵画の記憶

昨年末、八女市のお隣、福岡県久留米市出身の郷土の画家・髙島野十郎(たかしま やじゅうろう)の絵を福岡市内の福岡県立美術館まで見に行きました。

髙島野十郎は大正から昭和にかけて活動し、晴耕雨描を貫いた孤高の画家と言われ、緻密(ちみつ)な筆致の作品で知られています。没後の1980年代に作品が再評価され、一気に人気が高まった西洋画家です。同じく同郷で八女に縁深い坂本繁二郎、青木繁などともに福岡県久留米市が産んだ近代洋画の巨匠です。

蝋燭(ろうそく)の絵を写実的にかいたシリーズが有名ですが、私は、色とりどりの小菊が落ち着いた色調の花瓶いっぱいにいけられた絵がとても強く印象に残っています。

八女営業所のバス停近く、料亭・栗山の店先にも、いつも外から見える場所に季節の花がいけられています。

お正月を過ぎたころ、前を通りかかってはっとしました。
大きな花瓶に大量の小菊がいけられていたのです。

野十郎の生きた時代の空気が、八女にはまだ静かに残っています。

西洋かぶれの四十代の私が、少し古い西洋風景に懐かしさを覚えるのは、八女で生まれ育ったからなのかもしれません。

写真はすべて1月2日筆者撮影

中尾絵里

中尾絵里

アートや地域のこと、ものづくりが大好きな福岡県民です。ライブ行くのも好きです。よろしくお願いいたします。

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