
猫や花、樹木を思わせるモチーフが、鮮やかな色彩の中で静かに息づいていた。古民家ギャラリー「小さな森の和(やわらぎ)美術館」(郡山市西田町)で2026年4月下旬、須賀川市を拠点に活動する画家・たろう(Taro Suzuki)さんの個展「森呼吸―しんこきゅう―」が開催された。
緻密な筆致と幻想的な画面構成が印象的な作品群からは、土地や人とのつながりを大切にする作家のまなざしが伝わってきた。

かつて養蚕を営んでいた古民家を改装した会場に入ると、白い壁に並んだ作品がまず目を引いた。青、緑、黄、ピンクといった強い色が大胆に使われているが、不思議と騒がしさはない。木々に囲まれた静かな環境とも響き合い、会場全体に落ち着いた空気をつくっていた。

作品に近づくと、点や線、小さな四角形が重ねられたモザイクのような筆致が見えてくる。離れて眺めると、それらが猫や花、樹木、月を思わせるかたちへと立ち上がり、一つの物語を含んだ風景のように感じられた。親しみやすいモチーフを用いながら、現実をそのまま写すのではなく、独自の感性で再構成している点が印象に残った。かわいらしさと幻想性が同居し、見ているうちに画面の奥へ引き込まれるような感覚があった。

たろうさんは1998年須賀川市生まれ。日本大学工学部を卒業後、2024年には須賀川市内の交流施設でチャレンジショップを開設。その翌年の3月にはアートと喫茶、ギャラリーを楽しめる「アトリエたろう」を須賀川市内にオープンした。
絵は独学で始め、活動は今年で3年目と語るたろうさん。大学では建築を学んだが、住宅設計よりも空間づくりや配置を重視する分野に関心があったという。「ここに何を置くと滞在時間がどう変わるか、その感覚が現在の展示にも生きている」と話す。作品単体だけでなく、どのように並べれば人が立ち止まり、どうすれば空間に流れが生まれるかまで工夫された展示だった。

今回の個展は外部会場では2回目。会場には幅広い年代の来場者が訪れ、地域の中にあるつながりが、新たな表現の場を生み出していることもうかがえた。
実際に会場で作品と向き合うと、華やかな色彩の奥に、やさしさと静けさが同居していることに気づく。私は取材を通して、地方で表現を続けながら、自らの拠点も育て、外の場にも発表の機会を広げていく姿勢に強くひかれた。個展は単なる作品発表ではなく、人と人、人と場所が出会う場にもなっていた。

色の粒が集まり、一つの像を結ぶ。そんな作品世界そのもののように、この個展もまた、地域の中のさまざまな出会いを静かにつなぎ合わせていた。これからの彼の活躍に期待したい。
※写真はすべて2026年4月26日、福島県郡山市西田町、筆者撮影
情報
個展名:森呼吸―しんこきゅう―
会期:2026年4月26日(日)・27日(月)
会場:小さな森の和美術館(福島県郡山市西田町丹伊田上石堂494)
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