足利尊氏がかくまわれた白山城。その山頂でひっそりと咲くユウレイタケ【福岡県・宗像市】

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福岡県宗像市にある白山城(はくさんじょう)は、南北朝時代に足利尊氏が再起を図ったとされる歴史の舞台です。

京都での戦いに敗れ、九州に落ち延びてきた足利尊氏。宗像大宮司家(むなかただいぐうじけ)の当主宗像氏俊(むなかたうじとし)は彼を白山城にかくまい、軍備を立て直させたといいます。

その後、尊氏は多々良浜(たたらはま)の戦いで勝利し、やがて征夷大将軍となって室町幕府を開きました。

その白山の山頂で見つけたのは、土色の地面にぽつりと浮かぶ白いユウレイタケ。まるで、追い詰められた人の心にともる小さな希望のように見えました。

白山山頂へ

2026年4月29日、宗像市の白山で「白山祭り」が行われました。山開きの日でもあり、以前から気になっていた白山城址(はくさんじょうし)を歩いてみようと思い、朝から山へ向かいます。

白山城は、宗像大宮司家の居城として約400年間使われた山城。南北朝時代には、京都で敗れ九州へ逃れてきた足利尊氏をかくまった城としても伝わっています。ふもとには、以前取材した「足利尊氏坐禅岩(ざぜんいわ)」も残っています。

足利尊氏が坐禅したと伝わる「坐禅岩」があった!【福岡県宗像市】

登山道付近では、鳥の鳴き声が響いています。春と夏の気配が近づく空気の中、木漏れ日がゆっくりと揺れます。看板には「難攻不落の要害」の看板がありましたが、最初のうちは歩きやすく、中間地点までは比較的順調でした。

途中、木々の間から宗像市内が見渡せる場所があり、気持ちのいい登山です。歴史の山を歩いている緊張感というよりは、どこか遠足のような高揚感が入り混じっています。

木々の切れ間の景色

キエビネにいやされる

登山道の途中では、白山城址を守る会の方々によって植えられたエビネ蘭「キエビネ」も見ることができます。鮮やかな黄色の花が静かに咲いていて、険しい山道の中でほっと一息つける存在でした。

山頂付近でもみることができる

こうして地域の人たちが城址を守り続けているからこそ、今の私たちは歴史の現場を歩けるのだと思います。

「難攻不落」と言われた山城の本気

堀切(ほりきり)付近まで来ると、一気に斜面が急になります。

看板でも注意喚起

ロープをつかみ、土を踏みしめながら登るたび、足にじわじわ負荷がかかります。

「こりゃ攻め上がるのにも一苦労だ」。敵兵なら、この斜面を前にしただけで心が折れそうです。

途中には土塁(どるい)や廓(くるわ)の跡がわずかに残っています。

今は木々におおわれ静かな山ですが、かつてはここに兵が配置され、城を守っていたのでしょう。地形そのものを見ることで、教科書や書籍では感じられない“城のリアルさ”が伝わってきました。

中でも驚かされたのが、「山ノ井(やまのい)」と呼ばれる井戸跡でした。

山城にとって水は生命線です。しかし、山頂近くで水を確保するため井戸を掘る例は全国的にも珍しいです。実際に現地を見ると、「ここまでして守り抜こうとしていたのか」と圧倒されました。

山ノ井
中は立入不可

険しい山の中で、水を絶やさない工夫をしていたからこそ、白山城は長く機能し続けたのかもしれません。

そして頂上付近で、思いがけない光景に出会いました。

白山城本丸跡の看板
本丸と二の丸跡がある

ひっそりと咲くユウレイタケ

数人の登山客が、しゃがみ込んで地面を撮影している。何を見ているのだろうと思って近づくと、「ユウレイタケが咲いてますよ」と教えてくれました。

見ると、落ち葉と土の中から、白く透き通った植物がひっそり顔を出していました。

ユウレイタケ。正式には「銀竜草(ギンリョウソウ)」という。葉緑素を持たず、白い姿をしていることから、その異名で呼ばれているらしい。

緑と茶色ばかりの山の中で、その白色だけが不思議なほど際立っていました。

暗い土の上に、小さな灯(あか)りがぽつんと置かれているようにも見えます。

ふと、「足利尊氏がこの山にいた頃も、同じように咲いていたのだろうか」と考えました。

京で敗れ、先が見えず、命さえ危うかった時代。そんな尊氏が、この山のどこかで空を見上げ、そして足元には、今と同じようにギンリョウソウが静かに咲いていたのかもしれません。

もちろん、それを見て励まされたかどうかは分かりません。

ただ、土の中でひっそり光るように咲く姿は、追い詰められた人への小さな贈り物のようにも感じられました。

歴史の舞台だった白山城。その山頂近くで見つけた白い花は、戦いや権力の話とはまったく違う静けさをまとっていました。

険しい山道を登った最後に見たその姿が、今も妙に頭から離れません。

※写真は全て2026年4月29日筆者撮影

情報

白山城跡
住所:福岡県宗像市山田396-3
登山口/駐車場::山田地蔵尊(増福院)付近(宗像市山田715付近)

久田一彰

久田一彰

福岡県福岡市出身。
取材を通じて、そこにあるヒト・モノの魅力・ストーリーをお伝えします。

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