日本風力開発株式会社は、1999年に設立され、陸上風力を主軸に風力発電所の開発や発電事業に取り組んできた企業です。2024年1月にはインフラ事業を展開するインフロニア・ホールディングス株式会社の完全子会社となり、同グループが掲げる「総合インフラサービス企業」への転換とも重なる形で、再生可能エネルギー事業の新しいあり方を模索しています。
代表取締役社長の藤谷雅義(ふじたに・まさよし)さんは、主要事業会社である前田建設で水力発電のダム建設現場に携わり、その後、再生可能エネルギー事業の企画、開発、投資、運営に関わってきました。計画通りにいかない現場に向き合い、風力発電所を「つくって終わり」にせず、地域と関係を築いていく会社へ。日本風力開発がいま進める挑戦について、藤谷さんにお話を伺いました。

目次
ゼロからつくり、安全に稼働させ続けるところまでを含めた事業づくり
日本風力開発の事業は、風力発電所をゼロから開発するところから始まります。
土地を確保し、必要な許認可を取り、調査や設計を行い、発電所を完成させる。さらに日本風力開発グループには、運転・保守を担う会社もあり、完成後に安全に稼働させ続けるところまで含めて事業としています。
もともと藤谷さんは、準大手ゼネコンの前田建設で、山岳土木の現場で水力発電に関わってきました。その後、本社で再生可能エネルギー事業の企画、開発、投資、運営に携わるようになります。
日本風力開発の経営に関わることになったのは、インフロニアによる子会社化がきっかけでした。再生可能エネルギー事業を理解し、開発と運営の経験を持つ人材は限られていたといいます。藤谷さん自身も、かつて日本風力開発と前田建設が共同で進めた案件に関わっていたことが、藤谷さんが日本風力開発の経営を任される一因となったと話します。
「全く知らない会社ではなかった」
経営を担うことになった会社には、かつて同じ現場に向き合った人たちがいました。藤谷さんは、現場と事業投資の両方を知る立場から、この会社の次の姿を考えています。
開発屋でも修理屋でもなく、エネルギーを支えるインフラ企業になる
日本風力開発がいま挑んでいるのは、ビジネスモデルの転換です。
藤谷さんによると、子会社化される前の同社は「発電所を開発し、完成または着工の段階で事業を売却し、その資金を次の開発に投じる『エグジット型』に近いビジネスモデル」。開発会社としては、土地を確保し、許認可を取り、契約をまとめ、完成させるところまでが大きな役割でした。
その後、建設するだけでなく、保有し、運営し、維持管理し、発電所を長く安定して動かすことが、いまの日本風力開発の挑戦です。インフロニアが掲げる「総合インフラサービス企業」という方向性とも重なります。
藤谷さんは、これからの同社を「開発屋や修理屋ではなく、エネルギーを支えるインフラ企業へ変えていきたい」と話します。
「完成後の発電所をいかに安定的に運営するか。稼働率をどう高めるか。故障の予兆をどう把握し、いつ手を入れるのが最もよいのか。長く保有し、運営していくことを見据え、常に考え続けています」
多様な人材とデータで、発電所を安全に動かし続ける
同社の強みとして、藤谷さんは経験値、運転・保守のデータ、多様な人材を挙げます。
1999年創業の日本風力開発は、日本の風力発電の黎明(れいめい)期から開発に携わってきました。さらに、グループ内の運転・保守会社は長く現場のメンテナンスに関わっており、蓄積されたデータがあります。
風力発電の運営で重要なのは、壊れてから直すことだけではありません。設備の状態を正確に把握し、故障の予兆を早くつかみ、どのタイミングで手を入れれば発電所の稼働率を最も高められるのかを考えることです。その判断には、過去の故障、点検、運転のデータが欠かせません。
もう一つの強みは、人材の多様性です。
同社は創業から四半世紀あまりで大きく成長しました。短期間で事業を広げるために、さまざまな分野から即戦力人材を迎えてきました。開発、金融、技術、運営、地域対応。風力発電所をつくり、動かし続けるには、単一の専門性では足りません。
藤谷さんは、多様な人材が集まっていることを、会社の大きな財産と見ています。

風車を建てる前に、まず地域と続く関係をつくる
藤谷さんは、太陽光発電をめぐって各地で生じた懸念にも触れながら、「再エネ事業において地域との対話が重要になっている」と話します。
発電所は、誰もいない空間につくられるわけではありません。そこには暮らしがあり、漁業や農業があり、景観や安全への不安があります。再生可能エネルギーは社会に必要だとしても、地域の人が置き去りになれば、信頼は生まれません。だからこそ、自治体、地域、パートナー企業と関係をつくり、長く続く事業として受け止めてもらうことが求められます。
取材では、青森県での洋上風力開発に関連して、地域の漁業者と向き合う取り組みも語られました。漁業者が抱える不安や、地域の産品をどう販売していくかという悩みに対し、協議会のような形で一緒に考える。最初は同社も関わりながら、いずれ地域主体で育っていくことを目指しているといいます。
地域との関係づくりは、再生可能エネルギーを持続可能な事業にするための土台でもあります。
計画通りにいかないものを、そういうものだと考える
藤谷さんの原点には、山岳土木の現場で学んだ感覚があります。
「山の中の土木現場では、掘ってみて初めて見えるものがあり、何度も計画を修正し、現場に合わせて進めていきます。土地を確保し、風を調べ、許認可を取り、地域と向き合い、完成後も長く運営していく。風力発電所の開発も同じです」
「大切なのは、計画通りにいかないことを、“そういうものだと考える”ことです」
その言葉には、再生可能エネルギーを単なる設備ではなく、地域とともに育つインフラとして捉える視点があります。
風は、地域に吹きます。
その風を電気に変えるだけでなく、地域の資源として育てられるか。日本風力開発の挑戦は、再エネ事業の次の段階を示しています。

聞き手、執筆:木場晏門
写真はすべて日本風力開発株式会社提供
最も印象に残った言葉:
「大切なのは、計画通りにいかないことを、“そういうものだと考える”ことです」
会社概要
会社名:日本風力開発株式会社
取材対象者:代表取締役社長 藤谷雅義さん
設立年月:1999年7月26日
事業内容:風力発電所の開発、発電事業、運転・保守など
所在地:東京都千代田区霞が関三丁目2番5号 霞が関ビルディング15階
URL:https://www.jwd.co.jp/






