秋田にも新緑から深緑へと移行する、緑の美しい季節が今年も巡ってきた。
山菜採りに出かけるご近所さんが多いため「○○(山菜の名前)食べたか?」が、時候のあいさつになり、山菜を通してご近所付き合いが忙しくなるのがこの季節ならではの楽しみだ。
この季節の食卓を賑わす山菜といえばワラビが有名だ。おひたしや煮物や炒め物で食べられることが多く、ほんのりした苦味と風味は季節感を満たしてくれる。
秋田ではそんなワラビを叩いて食べる習慣がある。
ワラビはアク抜きをした後、たたいてすりつぶし、とろろ状にすることで旨みが増す。
今日はそんな秋田のソウルフード「わらびたたき」の調理法を紹介する。
目次
ワラビのアク抜き方法
- ワラビは、穂先を手で取り除く。(穂先も食べられるらしいが、食感がボソボソとしアクが強いため除くことが多い)
- 鍋にワラビがかぶるくらい(まだワラビは入れない)の分量の水を入れ火にかけて重曹を入れてお湯をわかす(水1リットルに対し重曹小さじ1杯程度)。
- お湯が沸いたら鍋にワラビを入れて火を止める(わらびたたきを作るときはすぐ火を止めず少し茹でるくらいがちょうどよい)。ワラビが浮いてこないように落しぶたをしてそのまま一晩おく。
- 翌日、鍋の水を捨て、新しい水を入れて十分に水洗いしこれでアク抜きが完了。
わらびたたきの作り方
アク抜き済みのワラビ約250g
味噌約大さじ1
- アク抜き済みのワラビをまな板の上にのせ綿棒などでたたく。ある程度粘りが出てきたら繊維を断ち切るように包丁でたたく。ひとまとまりになるくらい粘りが出たらすり鉢に移す。
- すり鉢で滑らかになるまで擂る。
- 最後に味噌を投入しよく混ぜ完成。味噌は味を見ながら少しづつ入れるとお好みの味に調整できる。山椒の葉を一緒に混ぜ込んでもおいしい。
ねっとりと口の中に素朴な深い旨みが広がる。
使用する調味料は味噌だけで、出汁などは一切加えない。それなのに深い旨みでごはんがいくらでも進む。もちろんお酒も進む。
「ワラビたたき」で検索すると、秋田だけではなく山形でも伝統的に食べられているようで、見た目も作り方も少し違うものがいくつか出てくる。
今回紹介したのは祖母→母→私が受け継いだ、あくまでも我が家での作り方なので、もしワラビが手に入ったら色々な食べ方を試してみていただきたい。
ワラビのように叩かれて旨くなれ!
叩くことでねばりが増したワラビは、味噌の風味と独特の苦みを包み込み、おひたしなどで食べるワラビの味のイメージとはまた違う深い旨みに生まれ変わる。
ワラビの根っこにはでんぷんが含まれていて、その昔、そこから取り出したでんぷんで餅を作り、それがわらび餅として食べられていたのは有名な話。でんぷんが関係しているかはよくわからないけれど、叩かれることでワラビに潜在しているものが旨味になるのかもしれない。
もしそうだとすれば人間にも同じことが言えそうだ。
冬の寒さに耐え、人口減少・高齢化全国トップの現実に直面し、叩かれまくっている秋田県民よ。
ソウルフードである「わらびたたき」のように叩かれてねばることで、もしかしたら自らの潜在意識を発散し人間味が深みを増して「旨く」なって底力を発揮できるかもしれない。
いや、底力が発揮できなくても「わらびたたき」は美味しいからぜひともみなさん試してみて欲しい。