障がいの垣根をこえて職人技を身につける【沖縄県石垣島】

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沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。

「この手の温もりを伝えたい!」ダウン症の妹の肩もみが気持ちいいと感じたことがきっかけで生まれた事業

あるまねっとのスタッフ13名

後列左から、山口航詩、島尻幸恵、平良志乃、小松潤哉、南水茜、照喜名圭太加治工寿代
前例左から、玉置あかね、入米蔵康代前盛ひとみ西銘美奈浦﨑美花川満暁
(下線がついたスタッフはセラピストです)

あるまねっとは、石垣島にある就労継続支援B型の事業所です。

就労継続支援B型とは、障がいや難病のある方が障害や体調にあわせて仕事や余暇活動をする福祉サービスのことです。 あるまねっとでは、ダウン症や知的障がい、視覚障がいのある方たちがアロマセラピストの資格を目指して勉強し、1年半から4年ほどかけて資格を取得します。

その後実際にスタッフとして店舗に立ち、お客様に施術をおこないます。

このようなサービスがはじまったのは2012年、創業者の宮良美樹(みやら・みき)さんがダウン症の妹の肩もみがすごく気持ちいいと感じ「この手の温もりを伝えたい!」と思ったことがきっかけでした。

障がいを持つ人が障がいに甘えることなく、働く場所をつくりたい

障がいのある人が、社会に出て働くことは簡単ではありません。妹と接してきた中で宮良さんは「障がいを持つ人が障がいに甘えることなく、社会に出て地域の人と触れ合いながら働く場所をつくりたい」と思うようになります。

そこで友人であり、セラピストとして働いていた川島直己(かわしま・なおみ)さんと相談をし、障がいのある方が、「胸をはって社会に出られるような場所」を一緒に作るという決意をしたといいます。

現在あるまねっとの外部講師としてセラピストの指導に当たる川島さんは、アイランドヒーリング株式会社を経営し、多くのセラピストを養成しています。沖縄県エステティック・スパ協同組合監事などを歴任し「琉球てぃんなでぃ」などの沖縄独自のエステの施術法開発にも携わっています。

そんな川島さんがあるまねっと独自の「あるまねっとハートフルタッチ」という施術法も開発し指導をしています。

「『なおみせんせいこわい』と言われることもあるんです(笑)。でもお客様に対しての礼儀や身だしなみ、社会で働く人として必要なことを厳しく指導しています。施設の利用者ではあるけれど、働く意思をもってここに通う人たちのことは敬意を込め『スタッフ』と呼んでいます」

厳しさの中で信頼関係や礼儀も学んだプロのセラピストが誕生し、あるまねっとはいよいよ順調に滑り出したように思えました。

そんななか、2019年、宮良さんが病気で他界してしまいます。

闘病中、一時はあるまねっとを閉じようかと話していた宮良さんでしたが、その後、「みんなの行き場をなくすわけにはいかない」と、川島さんやあるまねっとに関わる人たちに協力を仰ぎ、あるまねっとは事業を継続し宮良さんの意志を継ぎ、障がいのある人たちを社会に輩出しています。

お客様のありがとうが私たちのやりがい

サロン内の様子(2020年12月に移転しゆったりとした癒やしの空間を作りました)

あるまねっとに2017年に就労支援員として入社した長野弘子(ながの・ひろこ)さんは「資格取得に向けてスタッフさんにトリートメントを教えても伝わりにくくうまくいかないときもあります」と語ってくれました。しかし身振り手振りで一生懸命教え「スタッフさんが資格をとれたときが1番嬉しいです」と話してくれました。

就労継続支援事業所の利用者さんの中には知的障がいがあるため、言葉や文字がわからない方もいるのに資格取得まで教えることにすごく驚き、その熱意に筆者は胸が一杯になりました。

「障がいがあるとどうしても人のお世話になりがちで、ありがとうと言うことのほうが多いので、逆にありがとうといわれる仕事をつくりたい」創業者・宮良さんの言葉をいつも心に留めて、長野さんは日々スタッフに向き合い「ありがとうと言われる仕事」をつくるサポートをしています。

お客様から「ありがとう」と言われることが、あるまねっとのメンバーのやりがいです。

自分の特性を活かした技に磨きをかけ『技の匠』に

川満暁さんの施術の様子
「こちらへどうぞ」とお客様をご案内する前盛ひとみさん

長野さんは「ダウン症や知的障がい者の人たちは心がすごくピュアでやさしいです。そのやさしい気持ちが伝わるトリートメントを多くの人にしってほしいです」と語ります。

いま、あるまねっとの利用者のうち、ダウン症の方が4人、精神障がいの方が2人、知的障がいの方が1人、視覚障がいの方が1人、アロマセラピストの資格を取得し、セラピストとして施術をしています。

浦﨑美花さんの施術の様子

それぞれのトリートメントに個性があり、「この人にトリートメントしてほしい」とファンがふえています。

資格取得し、セラピストとしてデビューしたあともスキルを維持できるように練習や勉強を欠かしません。

また、最近新しく利用者さんたちが車の洗車をしてくれるサービスも増えました。洗車スタッフも車をピカピカにする技術を一から学び力をつけています。

洗車をしている間にアロマトリートメントを受けると洗車が割引になります。そのほかにお店ではフェルト小物などの可愛い雑貨も販売しています。

主にセラピストを指導をしている川島さんですが、他のサービスを提供するスタッフのこともとてもよく知っています。

「彼らはハンディキャップがある分ひとつの物事に長ける特性をもっているんです。ちゃんと指導することで、車をびっくりするくらいピカピカに磨き上げたり、フェルト小物を作る達人になったり。ひとりひとりが努力して、自分の技に磨きをかけています。『技の匠』、もはやプロの集団ですよ」

細部までピカピカに磨き上げる洗車チーム(手前が山口航詩さん、奥が玉置あかねさん)
スタッフが心を込めて作る、世界に一つしかないあるまねっとの羊毛フェルトの作品
(シーサー(左)、ジンベエザメ(右))

石垣島に住んでいる方や島外の方も島を訪れることがあったら、自分の技に磨きをかけるプロの集団に会って、やさしい気持ちと手のぬくもりにあふれるトリートメントをうけて癒やされ、車までピカピカになるすてきな体験をしてみませんか。

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久松公代

久松公代

和歌山県和歌山市

編集部校閲記者

第5期ハツレポーター/京都府宇治市産まれ。社会福祉士。父は大阪出身、母は東京出身で子どものころから地域による言葉の違いや風習の違いを感じてきました。和歌山市に移住して18年たちます。暮らして気づく和歌山の良さを伝えて行きたいと思います。

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