日本最南端の岬にほど近い工房で、頑丈・高品質なバッグを製作【鹿児島県南大隅町】

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〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜

鹿児島県南部・大隅(おおすみ)半島の先端に位置する南大隅町は、桜島を擁する鹿児島湾、東シナ海、太平洋と周りを海に囲まれ、黒潮の影響で亜熱帯性の植物も多数見られる、自然豊かな地域。「ダレスバッグ工房South(サウス)」は、その名前のとおり、南大隅町にある日本最南端の佐多岬から、車で約30分の場所に位置しています。

開口部が広く収納能力が高い「ダレスバッグ」に魅了され、修理を重ねて30年以上も使い続けていたという井岡周作(いおか・しゅうさく)さんは、2016年9月から南大隅町で工房を開業し、レザークラフター(革職人)として活躍しています。

そんな「ダレスバック」への熱い思いと、「良いものを直して長く使う」というSDGsにもつながる活動を、井岡さんにうかがいました。

「無骨だけどしっかりしたバッグを作り続けたい」修理を依頼した職人に師事して、自らもレザークラフターに

「ダレスバッグ」とは、開口部ががま口のように大きく開くバッグで、容量が大きく、書類などがたくさん入るバッグのことです。アメリカの国務長官だったダレス氏が、1951年の来日時に持参したブリーフケース型のバッグが注目されたことから、名付けられました。

欧米では医師が多く使用することから「ドクターバッグ」といわれており、現在では、総革で高級質感があるワンランク上のビジネスバッグとして知られています。

井岡さんは20歳の時、憧れだった「ダレスバッグ」を、福岡市のイギリス用品専門店で購入。その後、鹿児島県垂水(たるみず)市の革職人・佐々木勅章(ささき・のりあき)さんの存在を噂で聞きつけ、修理を依頼して「ダレスバッグ」を使い続けました。

「良いものを長く使う」という革職人・佐々木さんの考えに共鳴した井岡さんは、「何でも使い捨ての時代のなか、ずっと使える丈夫で高品質なもの、無骨だけどしっかりとしたバッグを一生モノとして作り続けていきたい」と、高齢により廃業する佐々木さんの思いをつなげるため、革職人になることを決意。佐々木さんから1年間師事し、開業にいたります。

慎重さを要する作業で、世界にひとつだけのバッグが完成する

多種多様なカバンのなかでも生産数が少ないという「ダレスバッグ」を中心にラインアップしている「South(サウス)」では、「ひとつひとつ丁寧に、しっかりしたものを作っていきたい」と、オーダーメイドを基本としています。

こちらの「ダレスバッグ」は、たくさんの荷物を入れても型崩れしないようにと、ほかのバッグよりも厚い2〜3ミリの革を使用。素材は、イギリス・トーマスウェア社の「ブライドルレザー(馬具用に作られた革)」と、北米産の天然牛革「ステアハイド」をなめし、表面にろうを塗り込んでろう引きしたヌメ革の2種類。いずれの革も、血筋やシワなど天然ならではの風合いが感じられます。

「革が厚いため、作業に力が必要です。また、型紙の寸法通り正確に裁断を行うことが大事で、少し違うだけで最後にバッグの開閉口がずれてしまいます。そうならないように慎重に作っていきます」と、井岡さんは作業の苦労を語ってくれました。

オーダーメイドであるため、バッグの中にペン入れ、スマホ入れ、通帳入れなどを作って欲しいというリクエストにも対応できます。革の個性が味になり、ひとつひとつ手作りされているバッグは、まさに、ほかにはない1点モノとなります。

しかしながら、「完成まで時間がかかってしまうため、今後は在庫を多くして、なるべくお客さまを待たせないように提供していきたい」と、井岡さん。

「ダレスバッグ」は、長く使いこむほどに革の色や艶などが変化して、味わいが出てきます。同じバッグを何度も修理して使い続けることは、まさしく「SDGs」の12番「つくる責任つかう責任」に、つながります。

大好きな自然を求めて、福岡県福岡市から鹿児島県鹿屋(かのや)市、そして南大隅町へと移住した井岡さんは、「海と山に囲まれた自然溢れる場所で製作した、厚めの革を使い丈夫で長持ちするバッグを、ぜひ使ってください」と、語ります。

その言葉には、自身が「ダレスバッグ」のとりこになったように、愛情を込めて長年バッグを使い続けてもらいたいという、思いが込められていました。

森川淳元

森川淳元

秋田県秋田市

編集部編集記者

第1期ハツレポーター
秋田県北秋田市出身です。少しばかり出版や取材などに関わったことがあり参加させていただきました。レポーターになり、改めて秋田ならではの面白いところを深掘りできたらと思います。

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