沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。
この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。
「なるべく島産にこだわり、国産にこだわり、素材にこだわり、調味料にこだわり、体にすっと入る、体が元気になるような料理作りをしています」
そう語ってくれたのは、沖縄県石垣島で洋食店を営むビストロスマイルの戸塚泰子(とつか やすこ)さん。ご主人でもあるシェフの勝敏(かつとし)さんと2017年に始めたビストロで「美味しい」だけでなく「体に優しい」料理を日々提供しています。
目次
子どもたちに、素材のわかる、雑味のないものを食べてほしい
石垣港離島ターミナルにほど近い、石垣市登野城(とのしろ)に店を構えるビストロスマイル。20席、5テーブルの店内を訪れるのは地元の方が多く、中でも家族連れが多いそうです。和食から料理の世界に入ったシェフの勝敏さんは、その後石垣島で洋食を学び、修行を積んで、パン作りをしていた泰子さんと洋食のお店を出しました。
毎日、お店で出すパンを焼くのは泰子さんの仕事です。
「日本の粉って味が深くて美味しいので、北海道や九州の小麦を使っています。子どもたちに雑味のない、添加物の入っていないものを提供したくて、日々焼きたてを出しているんです」
そう語る泰子さん。パンに限らず、シェフと共に島産、国産の調味料や素材にこだわり続けるのは「心や体の成長には、食と向き合うことが一番大事」という信念があるからだということが、言葉の端々から伝わってきます。
「私たちが提供するもので、子どもたちが、美味しかったね、とか、次の日ちょっと元気になった、とか、そんなふうに思ってもらえるといいなあと思っています」
ローゼル栽培に養蜂。自然から教わることも多い
泰子さんはまた、忙しいお店の合間を縫って、「ローゼル」の栽培や養蜂に取り組んでいます。
ローゼルとはアオイ科フヨウ属の植物で、ハイビスカスの仲間ですが、薄黄色やピンク色がかった花を咲かせ、花が散った後にガクが肥大したものを収穫してハーブティやジャムなどにして楽しみます。
「ローゼルって捨てるところがなくて、葉っぱは炒めて食べられるし、茎はローゼルヘンプという繊維に、また油が取れたりと、地球環境にいいんです。女性に必要なアントシアニンとか、抗酸化作用もあって、体にいいし、花は南国らしくてきれいなんですよ」
とローゼルに惚れ込んだ泰子さん。そして、養蜂を始めたのも、同じような理由からだそうです。
「すべて大地からつながっていて、ミツバチたちの一生懸命な姿を見て、私たちも真摯に食に取り組んでいきたいなあと思います。自然から教わることがとても多いです」
養蜂は約8年前から始めて、レストランを始めるタイミングで本格的になったそう。蜂蜜は蜜源により味が違い、沖縄のものはふわりとお花の香りがするそうです。お店では蜜の糖度や味によって使い方を変えていますが、ダイレクトに素材にかけるなど、お客様に蜂蜜の新しい使い方を見せるアレンジをしています。
「養蜂は畜産業なんですけど、唯一殺生をしないというか、共に生きていく、命をつなぐ。なんというか、慈悲深い畜産業だと思うんです」
と語る泰子さん。ミツバチに対してどれだけいい環境を提供できるか、寄り添って想い合えるかが大切で、重労働だけどハマってしまっています、とのこと。
丁寧な手仕事の先に人の笑顔がある
「シェフがフレンチをやっていたので、ビストロと名前をつけましたが、フレンチだけじゃなくイタリアンとか、昔から日本人になじみのあるハンバーグとかオムレツとか、そういう洋食を作っています。日本の洋食文化は、昔の料理人が時間をかけて、日本人の舌に合うように努力を重ねて作り上げてきたもので、私たちはそれをダシから作っているんです」と泰子さん。
作るのに一番長く時間がかかるダシは、素材を1時間半から2時間炒める作業があって、それから8時間かけて煮込み、それを完成まで3日間続けます。
「今はライフスタイルの変化もあり、食のあり方も変わってきました。時代の流れとともに食が変わるのは当たり前のことだとは思うんです。でも、昔の人がそうだったように、化学調味料に頼らず、時間と技術を使って伝えたい思いをお皿の上に乗せたい。ちゃんと手間と時間をかけたものって美味しいねって伝えたいんです。日本人は繊細な舌を持っていて、手をかけた味を絶対わかってくれると思っています」
ビストロスマイルのインスタグラムに投稿されている料理の写真はどれもとても美味しそうですが、それだけでなくどこか懐かしい感じがするのは、シェフや泰子さんのそうした先人への思いが詰まっているからなのかもしれません。
美味しいものを美味しいと感じられる幸せ
「沖縄は人が温かい」と泰子さんは語ります。だからこそ、この場所で自分たちの提供する食事で、少しでも地元の力になりたいのだそうです。
「食を通じて、みんなが、バランスのいい健康な体を作ってほしいです。美味しいものを食べて幸せって言うけれど、それって、幸せって感じられる体があるからなので。家族でも夫婦でも1人でも、そういう食事の場で自分に向き合うことができるような、そんな料理を丁寧に作っていきたいです」
思いはあふれるほどあって、だからこそ続いていくものだけれど、それがただの思想や押しつけにならないように、「これを食べてよかった」「これを食べるために頑張ろう」とお客さんに感じてもらいたい。食を通じて人を笑顔にしたいという泰子さんと、共に歩むシェフ、勝敏さんの料理は、きっと食べる人の心と体に染みわたっていくに違いないと思います。
みなさんも、美味しい洋食を食べに、ぜひ石垣島へ。
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