「コロナがなかったらやっていなかった」夢だったコーヒー豆店で町を元気に【山形県庄内町】

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皆さんはおいしいコーヒーを飲んでいますか?秋田県秋田市で針・灸・マッサージ師として、山形県庄内町でコーヒー豆の販売という二足のわらじを履く女性がいます。移動時間はなんと車で片道2時間半。その女性の名は、今井美樹さん(34)。

しかし、コーヒー豆の販売を始めたきっかけは、実は新型コロナウイルスの感染拡大によるものでした。今では口コミやSNSで評判を呼び、庄内町の人気店となっています。ピンチをチャンスに変えた今井さんの“働き方改革”。いったいどんなやり方でコーヒー豆店を繁盛させたのでしょうか。

「私は社会に求められていないんだ」失意の中で思い出した学生時代の夢

秋田市で針・灸・マッサージ院を営む今井さん。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により治療院の客足が激減。

「私は社会に求められていないんだ、ってかなり落ち込みましたね。就職ももちろん考えましたが、主人の勧めもあって、治療院のかたわら、昔から興味のあったコーヒー専門店でアルバイトをすることにしたんです」

また、今井さんには社交ダンスをたしなむ趣味がありました。アルバイトをしながら、ダンスの教室通いにも精を出します。そこで、たまたま同じ教室に通っていたコーヒー豆の師匠と出会いました。その師匠と話す中で、今井さんは、コーヒー豆の奥深さにとりつかれ、真剣にコーヒー豆の勉強を始めました。「あ、そういえば、高校のころカフェを開くのが夢だったなって、勉強を始めてから思い出したんです」

今井さんの地元は、山形県庄内町。地元である庄内町の人に、おいしいコーヒーを飲んでほしい。夢が膨らんでいきました。

アクシデントに落ち込まない。実家の倉庫をリフォームしてコーヒー豆の店をオープン

今井さんの地元は、山形県庄内町の狩川(かりかわ)地区。人口減が進み、今井さんは、帰省するたびに寂しさを感じていたといいます。おいしいコーヒーで地元を活気づけられないか、そんな思いを持ちながら、コーヒー豆の勉強を始めてからおよそ2年が過ぎたころ、師匠のお墨付きを得ていよいよ販売にこぎつけることになりました。

「最初は、山形県庄内町の道の駅に自分が焙煎した豆を置いてもらおうとしたんですが、『秋田で作ったものでしょ?』って難色を示されちゃった。でも、そもそもコーヒーを始めた理由は、ふるさとである庄内町の人においしいコーヒーを飲んでほしいという気持ちからでした。地元で作れば地元の人に届くんだと思って、コーヒー豆の焙煎の拠点を、秋田市ではなく庄内町に置くことにしました」

 

庄内町でイベントなどがあるとコーヒー豆を販売していた今井さん。訪れるお客様たちから「店はないの?」と言われていたこともあり、それならやっちゃえ!と山形県庄内町にある実家の倉庫をリフォーム。家族や周囲の協力も得られ、2021年の夏、コーヒー豆の販売店をオープンさせます。

小さなアクシデントにいちいち落胆せず、見方を変えてみることも成功の秘訣でしょうか。現在は、今井さんは、週の半分を実家のある山形県庄内町で過ごします。

私のしたいことを詰め込みたい!そして、地元庄内町に賑わいを取り戻したい。

 

秋田市と庄内町は車で片道およそ2時間半。その距離を往復してまで、なぜここまで頑張れたのか、今井さんに伺ってみました。

「小さいころにあったお店とか、もうほとんど無いんです。私の焙煎したコーヒーで、何とか地元庄内町の地域を盛り上げたいと思って。小さい子供がいる人にも気軽に来てほしくて、駄菓子も一緒に置くことにしました。もう、私のやりたいこと、全部詰め込んだ店にしたい!って。そしたら、若いお母さんたちにも喜んでもらえたんですよ」

やりたいことをやるだけでなく、何が求められているのかを察する視点も大事なようです。

何かを始めたいなら、情報をもらうだけでなく、自分からも発信を

新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの「働く」にも大きな影響を与えました。リモートワークや起業・副業という言葉が身近になった今、何か始めたいけれどどうやって始めたらよいのか分からないという方もいるのではないでしょうか。今井さんに、そんな女性たちにアドバイスをお願いしました。

「まず、興味のあるイベントや集まりにはどんどん足を運んでみるといいと思います。そこに出会いや、新しいつながりが生まれるかもしれません。そして、情報を集めるだけでなく自分からも『これがやりたい』と発信することが大事だと思います」

明日、後悔しないように。

▲コーヒー豆の店 店内の様子

今井さんは、ここまでやれたのも、ご主人をはじめ、実家の家族、治療院のお客様やイベントを通じて知り合った方、繋いでくれた人たちの協力のおかげだといいます。

「だから人と関わるとき、誠心誠意、自分に何ができるか、どんなお返しができるかと、常に考えるようにしているんです」と今井さんは話します。治療院はもともと人と関わる仕事。いわば命に向き合う仕事。「高齢の方々へのマッサージを通じて学んだことが、何をするにもベースになっているのかな。一期一会。明日、後悔しないように、人と関わっていきたいです」

まずはオープンしたばかりのコーヒー豆の店舗を波に乗せたいと意気込む今井さん。孤軍奮闘せず、アクシデントに大げさに落ち込まない。そして常に周囲への感謝の気持ちを持つ。今井さんの、愛あふれる挑戦は続きます。

【角蔵(かくぞう)珈琲】の情報

  • 住所:山形県庄内町狩川字阿古屋65
  • 営業時間:
    月)15:30~18:00
    火~土)11:00~18:00
  • 休業日:木・日
田川珠美

田川珠美

秋田県秋田市

編集部校閲記者

第1期ハツレポーター/移住と就業促進の仕事に関わってから、知らなかった魅力や課題のあることに気づきました。雪国のあたたかく柔らかい秋田を届けたいと思っています。ライフワークはピアノを弾くこと、ワクワクするのは農道探索、そして幸せは、心のふるさと北秋田市の緑の中をドライブすることです。