「独眼竜」伊達政宗が開いた城下町、仙台。現在の仙台市は人口約109万人と東北地方最大で、唯一の政令指定都市でもある。宮城県の中央部を奥羽(おうう)山脈から太平洋まで貫く市域は自然が豊かで、街路樹も多く「杜の都(もりのみやこ)」として知られている。
東京から東北新幹線で最速1時間30分というアクセスの良さもあり、年間を通して多くの観光客で賑わっている。しかし、仙台城(青葉城)跡を見学して牛タンとずんだ餅を味わった後は、「日本三景」松島や「陸奥国一宮(むつのくにいちのみや)」塩釜(しおがま)神社などに向かう人がほとんど。残念ながら「杜の都」の魅力を堪能しているとは言い難く、本当にもったいない。
そこで、暇にまかせてカメラ片手に仙台市内を歩き回っている筆者が、とっておきの散歩スポットをいくつか紹介したい。
仙台散歩スポット「大年寺山」
東北新幹線の下り列車が仙台駅に近づくと、左手前方に3基のテレビ塔が立ち並ぶ低山が現れる。仙台市都心部の南側に位置する標高120メートルの大年寺山(だいねんじやま)。車窓からテレビ塔が見えると仙台人は地元に帰ってきたと実感する。
1697(元禄10)年、仙台藩4代藩主の伊達綱村(つなむら)が、この地に黄檗宗(おうばくしゅう)の大年寺を創建したことから大年寺山と呼ばれるようになった。黄檗宗は江戸時代初期に中国から来た隠元禅師を開祖とする禅宗で、幕府の庇護(ひご)を受けて大名がこぞって帰依した。大年寺山の山頂付近には堂塔が並び、幕末まで歴代藩主の菩提寺であったが、明治維新の廃仏毀釈によって荒廃する。
大年寺山を訪れるなら仙台市野草園も見逃せない。戦中、戦後の混乱と戦災で荒廃した野山の山野草を保護するため、東北大学の加藤多喜雄(たきお)教授と加藤陸奥雄(むつお)教授の兄弟が植物園の設置を提言。仙台市が伊達家から取得した大年寺山の北西斜面に、多くの市民の協力も得て1954(昭和29)年7月に開園した。9.5ヘクタールの園内には、東北地方に自生する植物を中心に1100種が植栽展示されている。