「杜の都」仙台を堪能するならここに行かなきゃもったいない。閑人が独断で選ぶ散歩スポットその4【宮城県仙台市】

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「独眼竜」伊達政宗が開いた城下町、仙台。現在の仙台市は人口約109万人と東北地方最大で、唯一の政令指定都市でもある。宮城県の中央部を奥羽(おうう)山脈から太平洋まで貫く市域は自然が豊かで、街路樹も多く「杜の都(もりのみやこ)」として知られている。


東京から東北新幹線で最速1時間30分というアクセスの良さもあり、年間を通して多くの観光客で賑わっている。しかし、仙台城(青葉城)跡を見学して牛タンとずんだ餅を味わった後は、「日本三景」松島や「陸奥国一宮(むつのくにいちのみや)」塩釜(しおがま)神社などに向かう人がほとんど。残念ながら「杜の都」の魅力を堪能しているとは言い難く、本当にもったいない。

そこで、暇にまかせてカメラ片手に仙台市内を歩き回っている筆者が、とっておきの散歩スポットをいくつか紹介したい。

仙台散歩スポット「大年寺山」

▲南東の麓に建つ惣門(そうもん)は大年寺の唯一の建築遺構。享保年間に造られた高麗門(こうらいもん)形式の山門で、仙台市指定登録文化財となっている

東北新幹線の下り列車が仙台駅に近づくと、左手前方に3基のテレビ塔が立ち並ぶ低山が現れる。仙台市都心部の南側に位置する標高120メートルの大年寺山(だいねんじやま)。車窓からテレビ塔が見えると仙台人は地元に帰ってきたと実感する。

▲惣門を抜けると、うっそうとした木々の間に石段が山頂まで一直線に続く。255段もあり、周辺の中学校や高校の運動部にとって格好のトレーニング場所となっている。筆者もはるか昔、高校生の時にヘトヘトになって駆け登った記憶がある

1697(元禄10)年、仙台藩4代藩主の伊達綱村(つなむら)が、この地に黄檗宗(おうばくしゅう)の大年寺を創建したことから大年寺山と呼ばれるようになった。黄檗宗は江戸時代初期に中国から来た隠元禅師を開祖とする禅宗で、幕府の庇護(ひご)を受けて大名がこぞって帰依した。大年寺山の山頂付近には堂塔が並び、幕末まで歴代藩主の菩提寺であったが、明治維新の廃仏毀釈によって荒廃する。

▲大年寺山の山頂には伊達家の墓所が残る。「無尽灯廟(むじんとうびょう)」には4代綱村、5代、10代、12代の藩主とその夫人が眠っている

大年寺山を訪れるなら仙台市野草園も見逃せない。戦中、戦後の混乱と戦災で荒廃した野山の山野草を保護するため、東北大学の加藤多喜雄(たきお)教授と加藤陸奥雄(むつお)教授の兄弟が植物園の設置を提言。仙台市が伊達家から取得した大年寺山の北西斜面に、多くの市民の協力も得て1954(昭和29)年7月に開園した。9.5ヘクタールの園内には、東北地方に自生する植物を中心に1100種が植栽展示されている。

▲展示スペースを兼ねた野草館から入園する。開園70周年を迎えた野草園は市民にとって、豊かな自然を満喫できる掛け替えのない場所だ
▲起伏に富んだ園内を散策すれば、高山から水辺までさまざまな野草や樹木と触れ合うことができる。ケヤキの巨木がシンボルの芝生広場(中央)は家族連れでにぎわう
▲四季折々に違った表情を見せる野草園は、訪れる度に新たな出会いがある。スエコザサ(中央)は、NHKの連続テレビ小説『らんまん』のモデルとなった牧野富太郎博士が仙台市内で発見し、妻の壽衛(すえ)への感謝を込めて命名した。葉の縁が裏側にそり返るのが特徴
▲広瀬川の左岸から大年寺山を望む。テレビ塔は夜間にライトアップされ、仙台のランドマークとなっている
佐瀬雅行

佐瀬雅行

宮城県仙台市

第7期ハツレポーター

仙台市在住。地方紙の写真記者として東北各地を取材する。2014年に独立、東北地方の風土などをテーマに撮影を続けている。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員

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