「次の世代に手渡したい景色」阿蘇、5月——ゴールデンウィークの朝【熊本県阿蘇市】

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朝露に濡れた草原は、まさに“目に染み入るような緑”だ。

生命そのものが芽吹き、風に揺れる草の一本一本が、朝日を浴びてきらめいている。

その手前に広がるのは、悠久の時を経て削られた「父なる岩肌」。

火の国・阿蘇の歴史をその身に刻んだ大地のしわ。

柔らかく瑞々しい若葉の緑と、厳しくも静かな岩肌——

そのコントラストは、まるで人の一生のように胸を打つ。

自然は語らない。だが、すべてを語っている。

草原は「今を生きよ」とささやき、岩肌は「過去の意味」を静かに教えてくれる。

阿蘇スカイライン展望所から見た、地球の鼓動。

悠久の火山活動が創り上げたカルデラ、その中に広がるパッチワークのような田園風景。背後には阿蘇五岳が堂々と横たわり、「地球って生きているんだ」と語りかけてくるようだ。

風に揺れる草花、幾千年の火山の営みが刻まれた大地。ここ阿蘇は、まさに「地球の命が見える場所」である。

草原の一葉一葉、風の音さえも、命の響きを宿している。

けれど、ふと足元に目をやると——

そこにはプラスチックの袋や空き缶が、ぽつりと落ちていた。

その違和感は、まるで心に刺さる棘(とげ)のようだ。

この壮大な自然に、なんと不釣り合いな存在だろう。

自然は人間のものではない。

人間もまた自然の一部だ。

そのことを、落ちていたゴミが静かに教えてくれた。

拾いながら、私はこう思った。

「未来を拾う手になろう」

阿蘇の景色に心を動かされた、その感動を、次の行動へつなげたい。

阿蘇を守ることは、地球を守ることだ。

そして、それは自分自身の心の美しさを守ることにもつながる。

たしかに、あの風景の中に立てば、思わず一服したくなる気持ちもわかる。

雄大な景色に心をほどき、日常のストレスがふっと抜けていく。それもまた、阿蘇が与えてくれる癒しの力だ。

しかし、吸い終えた一本の吸い殻。

その小さなゴミが、美しい草原を汚し、火種にもなり得る危険をはらんでいる。

感動をくれた自然には、感謝を返すべきだ。

吸い殻はポケットに、そして心には風景を残そう。

阿蘇は、地球と出会える場所だ。その感動を、どうか次の世代にも手渡していきたい。

佐藤琢朗

佐藤琢朗

1974年(昭和49年)3月2日、熊本県阿蘇市生まれ。現在、熊本市在住。菊陽町立菊陽西小学校の理科専科。理科専科として「理科は感動だ!〜世界は不思議であふれてる〜」を実現する感動サイエンスteacherとして奮闘中。日本理科教育学会員、ソニー科学教育研究会(SSTA)会員。社会貢献として、熊本市少年少女発明クラブで講師を務め、理科好きな子を育てる活動を行なっている。たくちゃんせんせーとして、YouTuber、TikToker(@taku_oo7)の一面も持っている。

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