日本人飛行兵が神となった廟!? 台南に残る不思議な信仰物語【台湾台南市】

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日本と台湾の間に生まれた信仰という“縁”が、台南の一隅に静かに息づいている。

台湾南部に位置する台南市は、かつての台湾の首都であり、歴史的建造物や古廟(こびょう)が数多く残る“台湾の京都”とも呼ばれる都市である。日本統治時代の面影を残す町並みや、庶民の暮らしに根ざした廟文化が色濃く残っており、グルメや文化を通して日本との不思議な縁に出会うことができる場所でもある。そんな台南の南区に、一風変わった廟が存在している。飛虎将軍廟(ひこしょうぐんびょう)である。

ゼロ戦と運命を共にした若き日本兵

この廟に祀(まつ)られているのは、第二次世界大戦中に台南近郊で戦死した日本人飛行兵・杉浦茂峰(すぎうらしげみね)少尉である。彼はゼロ戦に搭乗中、台南南区の海岸付近で墜落し命を落とした。

だがその最期の瞬間、彼は機体を住宅地に落とさぬよう進路をそらし、自らの命と引き換えに地元住民の命を救ったと伝えられている。その勇気と犠牲に心を打たれた村人たちは、彼を“守護神”として祀ることを決めた。

杉浦少尉の正体は、墜落当初は不明であった。しかし、墜落現場から遺品が発見され、のちに愛知県出身の人物であることが判明。村人たちは「飛虎将軍」と呼び、戦後も一貫して廟を守り続けてきた。

この飛虎将軍廟は、観光客向けに装飾された派手な廟とは異なり、民家の間に静かに佇む質素な建物である。しかし中に入ると、香炉の煙とともに多くの人々の祈りが感じられる空間が広がっている。

いまも続く敬意と信仰

現地の人々にとって飛虎将軍は、単なる歴史上の人物ではなく、台南を守った英雄であり、日々の無事を見守ってくれる存在である。命を懸けて守られたという伝承は世代を超えて語り継がれ、今でも多くの住民が廟を訪れ、線香を手向けている。

興味深いのは、廟には彼の写真や名前が掲げられ、日本語での説明も添えられている点である。台湾と日本、両国をつなぐひとつの「魂の交差点」がここにある。

台南という土地が持つやさしさ

飛虎将軍廟を訪れると感じるのは、台南という街の受け入れる力である。戦争の記憶をただ封じ込めるのではなく、そこに込められた想いを丁寧に受けとめ、語り継ぐ姿勢が、町全体に息づいている。

たとえば、日本統治時代に建てられた古い建物の多くは、取り壊されることなく保存され、カフェや民宿へとリノベーションされている。過去を否定せず、現在と調和させるそのまなざしには、文化と人を大切にする温かさがにじんでいる。

台南はまた、グルメの街としての魅力にも満ちている。カキオムレツやエビチャーハンといった名物料理が軒を連ね、町歩きの途中に舌と心を満たしてくれる。そんな食と歴史が共存するこの街で、飛虎将軍廟のようなスポットに出会えることは、旅の中に予想外の深みをもたらしてくれる。

台南を訪れた際は、ぜひこの不思議な「日本人の神様」に会いに行ってほしい。国境や時代を超えて、人と人とがつながってきた静かな奇跡が、確かに息づいているのである。

アクセスと基本情報

飛虎将軍廟(飛虎將軍廟)
住所:台南市南区
アクセス:台南駅からタクシーで約15分。バスも運行あり。
参拝無料・年中無休

阿部宣行

阿部宣行

山形にある探究教室の講師。子どもたちが熱中できることを見つけ、大人顔負けで実践できるように日々活動しています。ローカリティに参加してからの趣味は写真撮影。子どもたちの視野を広げるために記事を書き、写真を撮っていきます。

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