人を引き寄せる“野外美術館”~田んぼに降臨した「クセ強すぎる守り神たち」【福島県郡山市】

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毎年、個性豊かな案山子(かかし)が並ぶことで知られる『あさか野 柴宮(しばみや)案山子祭り』が、今年も福島県郡山市安積町柴宮地区で開催された。会場は地元で“かかしロード”の愛称で親しまれる田んぼ道。秋の始まりを告げるような穏やかな空の下、親子連れや近隣住民が訪れ、黄金色に染まる稲穂を背景にユーモアあふれる案山子たちを楽しんだ。

沿道には、アニメキャラクターや時事ネタ、地域の名物をモチーフにした案山子がずらり。どの作品にも創意工夫が凝らされており、まるで野外美術館のような光景が広がった。中には、思わず足を止めて見入ってしまうほど完成度の高いものも多く、訪れた人々の笑顔を誘っていた。

この祭りは今年で19回目。もともとは、安積疏水(あさかそすい)の恵みを受ける柴宮地区南側の田園地帯に感謝し、豊作を願う地域行事として誕生した。単なる観光イベントではなく、「地域を元気にしたい」「子どもたちに郷土の魅力を伝えたい」という住民の思いが原点にあるという。

企画・運営の中心は、柴宮地区の住民たち。地元の幼稚園や小学校、自治会などが協力し、案山子の制作から展示までを手がけている。世代を超えて手作りされた案山子たちは、地域の絆を象徴する存在でもある。

稲穂が風に揺れる田んぼの中に立つ案山子たちは、秋の実りへの感謝と、地域の未来への希望を静かに語りかけているようだった。
郡山の秋を告げる風物詩として定着したこの祭り。来年もまた、案山子たちが笑顔とともに秋の風を運んでくれることだろう。

写真=2025年9月、福島県郡山市、筆者撮影

昆愛

昆愛

埼玉県川越市出身。前住地は山形県鶴岡市。会社員のかたわら、地域資源の掘り起こしとその魅力発信活動に取り組む。2023年、「誰もいなくなった町。でも、ここはふるさと~原子力発電所と共存するコミュニティで“記憶”と“記録”について考える【福島県双葉郡富岡町】」で本サイトのベスト・ジャーナリズム賞を2年連続受賞、また2024年、天文活動の報告・交流等を目的としたシンポジウムでの発表「天文文化史で地元の魅力発信?九曜紋が導く新たな誘客構想とは【福島県南相馬市】」で渡部潤一奨励賞を2年連続受賞。

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