傷ついた鳥を守り明日へつなぐ いのちの現場【埼玉県さいたま市】

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よく耳にする動物保護という活動。この言葉を聞くと犬や猫といった身近な動物たちを思い浮かべます。実は、鳥も保護されていることを知っていましたか?鳥はSNSの影響などにより写真映えしてかわいいし手軽に飼えると思えます。

しかし実際に飼ってみると個体により手乗りにならない、噛むといったことが起こります。このような飼育の理想とギャップにより遺棄される現実があるのです。

捨てられている鳥の現実に正面から向き合っている保護団体「小鳥レスキュー会」。鳥のしあわせのために私たちができること、保護活動の実際について取材しました。

鳥を捨てる理由は人の身勝手さ。鳥にも感情がある

埼玉県さいたま市に所在するNPO法人「小鳥レスキュー会」。ビルの一室内ではセキセイインコやコザクラインコ、文鳥などの鳥たちが暮らしており力強いさえずりが響き渡ります。

今回取材に応じてくださった理事の古俣(こまた)さんにお話を伺いました。

ー小鳥レスキュー会というNPO法人を設立されたきっかけはなんですか

犬や猫の保護施設は多くありますが鳥についてはほとんどなかったです。2000年頃より代表が自費で鳥の保護活動を行ってきました。継続的に活動を行い、またより多くの方々の協力を得るため2015年にNPO法人を設立しました。

小鳥レスキュー会の活動内容を詳しくお聞かせいただけますでしょうか。また保護の実際についても教えてください

「小鳥レスキュー会」の活動は広範です。迷子、飼育困難鳥の引き取りや保護をはじめ放置鳥のレスキュー、保護鳥の里親探し、動物愛護法、鳥獣保護法についての普及推進活動などにわたります。

「小鳥レスキュー会」は、迷子として警察署に届けられたり飼い主さんの事情により飼育困難になったりした鳥を保護しています。飼い主さんが高齢のため鳥の面倒を見きれなくなってしまった、離婚により生活や環境が変わった、また、収入の減少や転勤転職に伴う移転といった理由で保護することもあります。しかし最近ではオカメインコがメスで歌わないのでいらない、孵卵器でたまごをかえすという動画を見た人が実際に孵化させ、にわとりが大きくなったらオスで鳴きだしたのでうるさくていらない、SNS映えしないから、他の動物を飼うことになっていらくなったので捨てる、思った通りになつかないから、SNSで見たイメージと違うから捨てる、といった人の身勝手さが目立ちます。

レスキュー活動は20年以上を迎えました。SNSでの発信もあいまって認知度も上がりましたが一方で「小鳥レスキュー会」の前にゲージごと鳥を放置されるといった悲しい出来事も起きています。

これらは人災です。人災と聞くと、「え?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし鳥にも感情があります。一緒に暮らしていた人と離れ環境が変わることは鳥にとって大変なストレスになります。「小鳥レスキュー会」に来た子は病気であったりストレス性の毛引き症や自咬症だったりと何かしらの障害をもつ子も少なくありません。きちんとお世話をされなかったために人を怖がる子もいます。

1羽1羽のケア 長く関わるからこそ見える鳥の愛らしさ

ー過酷な現実があると知りました。それでも鳥を保護する魅力はなんでしょうか

年間約480羽(匹)の鳥や小動物を引き取っています。悲惨な現実がありますが1羽でも多くの子にしあわせになってほしいと活動を続けています。活動の中でボランティアスタッフが声がけをしながら1羽1羽ケアをするのです。すると日々、お世話の積み重ねで少しずつ人に対する不信感がやわらいでいます。

当施設にやって来た子たちは、みんなしあわせな環境で暮らしていたかというとそうではない子もいます。当施設にやってきて最初はご飯も食べられない状況の子はとても心配です。そこから、だんだん環境に慣れていき里親さんにご紹介できる状況にまで心を開いてくれる姿を見るようになるのは嬉しいです。

この施設はいろいろなボランティアの方が出入りして皆さんでお世話をしています。ここに、人慣れをせずにケージで暴れたり噛んだりする「荒鳥」の状態で来た子が手乗りになるのは難しいです。もともと手乗りだった子が迷子で怖い思いをしてつかまえられ、一時的に人間不信になったというケースはしばらくすれば手乗りに戻ります。

みんながみんな「小鳥レスキュー会」に来たらすごくフレンドリーになるというわけではないです。それでも鳥が前よりもしあわせな表情になっているのを見るのは嬉しいです。

喜怒哀楽を表現してくれる文鳥

一般的には犬や猫の方が気持ちに寄り添ってくれ表情が豊かだと言われがちです。鳥は表情もないし言葉も分からないと言われます。ですがそれは違います。私は文鳥を飼っているのですが、個体によって性格も違うのです。経験上、表情も豊かで怒っているなとか喜んでいるなとか一緒に暮らしていると分かってくるのです。

文鳥も嬉しいときは口角が上がります。目もまんまるになり非常に愛らしい顔つきで寄り添ってくれるのです。逆に怒っているときは目が細く三角になってしまったりします。お迎えした今は鳥も犬猫と、そん色ないくらい感情豊かですごく自分の気持ちを察してくれて寄り添ってくれる良いパートナーです。

過去に「桜文鳥がたくさんいて、同じように見えるけどどの子か分かりますか」と聞かれたことがありました。鳥を飼ったことがない方にはみんな同じに見えるし目が笑ったり怒ったりする風には見えないことがあるかと思います。しかし、鳥たちは実は喜怒哀楽を表現してくれて魅力的なのです。

「小鳥レスキュー会」知名度が上がる一方でジレンマも

ー活動を続ける中で活動当初と比べてどう変わっていますか

X(Twitter)での発信やクラウドファンディングをすることによって10年前より知名度は上がっています。ただ知名度が上がるにつれご寄付も増えてはきていますがその反面、鳥を引き取ってくれる施設があるという認識が浸透しているのを感じます。

活動をアピールしたい一方でそれによって安易に手放す方も出てくるのかなというジレンマがすごくあります。当施設の前にゲージごと置いていかれる事例もありました。飼ってから、なにか違うなと思ったら引き取ってもらえばいいという意識を生んでいることも事実です。

なかには家族が鳥アレルギーになってしまって一緒に住めないので泣く泣く引き取りを依頼する方もいらっしゃいます。また、他のペットを飼い始めたのでもういらないですという理由での引き取りの件数も残念ながら増えました。

本当に困っている方の引き取り依頼があればもちろんお受けします。しかし、ペットショップにて三千円ほどで買えるひなを安易に買って、飼育し始めたら思ったようになつかないのでいらないという形で引き取ることがあると残念な気持ちになります。

不幸な鳥を生まないために 難しい問題ではあるが少しでも改善の糸口を探して

ー不幸な鳥を生まないために、こうしたら改善するのではといった考えをお聞かせいただけますか

私たちのような引き取りの受け皿としての施設はあります。このような施設に鳥が1羽も居なくなるというのが理想です。しかし、現実的には迷子になる子も後を絶たず、引き取り依頼も多くなりました。ボランティアスタッフなどの人手が足りない事態になっているので、啓蒙活動を行って少しでも不幸な鳥を生まない発信をしていきたいと思います。

大型のインコとかだと何十万もするから安易には買えませんが、セキセイインコ、文鳥は手軽に飼えてかわいらしいので、おじいちゃんおばあちゃんが孫のためにプレゼントとして買ってきたケースがあります。それと同じように鳥を飼育する上で必要なことを何も知らずに飼い始める方もいらっしゃいます。

鳥を飼おうかなと思った時点でペットショップに行けば、ひながすぐに手に入りますが、鳥を飼うというのは易しいことではなく鳥の特徴や性格などをよく調べてから飼ってほしいということも発信していければと思います。例えばコザクラインコの場合、顔はかわいいけれど噛むことがある。噛まれると出血し、ものすごく痛いです。しかし、噛む反面愛情深い鳥なのです。知識を知っているのと知らないで飼い始めるのとは大きく違います。

ひなのときは噛まなかった。成長し大きくなったら嚙み始めた。だからいらないというのは鳥にとっても飼い主さんにとってもお互い不幸なので、どういう風に飼えばいいのか、鳥を飼い始める前にいろいろ調べてほしいです。

受け入れは鳥以外も。他の保護団体とも連携を持ちつづける

ー将来の展望を教えていただけますか

鳥に限らず動物全般にたいして相談や依頼があれば受け入れ、他の保護団体につなげています。基本的には鳥を専門としていますが、埼玉県の警察からは鳥以外にも小動物、爬虫類、うさぎなどの相談があるのが現状です。

他の鳥保護団体、鳥以外の団体とも横のつながりを持って協力していかないとなかなか当会だけでは行政に働きかけをすることはできません。また鳥保護団体、鳥以外の団体どちらかがなくなってしまった際、普段つながりがないと手伝うこともできません。そのため他の動物の保護団体とも連携を持ちながら活動しています。

今後も持続的な運営が可能な形で1羽でも多く小さな命をつなぐ活動を続けながら、鳥たちのしあわせのためいろいろな形で啓蒙活動もしていきたいと思います。

ひとりでも多くの方に保護鳥のことを知ってほしい

ー読者の方へメッセージをお願いします

記事を読む方は、鳥に全く興味がない方も鳥が好きで読んでくださる方もいらっしゃると思います。鳥の保護施設は国内では少ないということもあって驚かれる方も多いでしょう。今、鳥の保護施設にいる鳥たちは迷子で保護された鳥がとても多いのです。残念ながら週に1羽は受け入れているという状態で、飼い主のもとに帰れるのは20羽に1羽もいないくらいです。

犬や猫については保護施設が多く、保護施設でお迎えするという選択肢もご存じかとは思います。鳥にも実際には行き場をなくしてしまった子たちがいるという現実があるのです。また家族にお迎えするとき鳥の保護施設からお迎えするというのは、手乗りではない子もいます。そのため思っているのと違い難しいかもしれないですがこのような選択肢もあるのだよというのも知っていただきたいです。

鳥はペットとしてはマイナーなイメージではありますがひとりでも多くの方に保護鳥がいる現実を知ってもらい興味を持っていただければと思います。

また、ボランティアも募集しています。ぜひボランティア(お水交換やケージ掃除)、里親や会員として活動に関わっていただければ嬉しいです。

情報

NPO法人 小鳥レスキュー会

代表者名:上中 牧子
所在地:埼玉県さいたま市南区辻1丁目24−13 小黒ビル 2階 201号室
URL:https://kotori99.org/
お問い合わせ:〔電話〕048-877-0601〔Web〕https://kotori99.org/inquiry

活動内容:迷子 飼育困難鳥の引き取りや保護 放置鳥のレスキュー 保護鳥の里親探し動物愛護法、鳥獣保護法についての普及推進活動

足立尚典

足立尚典

1994年鳥取県生まれ 現在は埼玉県朝霞市在住
飲食店巡りや芸術、文学などの作品好き

地方も関東でも生活した目線で地域を見ることができ嬉しいです
どんな心沸く経験に会えるのか今から楽しみです

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