あなたの感動が世界を変える。「ローカリティ!」はアジア、そしてその先へ【ロカフェス2023】~編集長に聞くこれからのローカリティ!<前編>~

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2023年10月16日で3周年を迎える「ローカリティ!」では、地域の魅力を深く知る「魅力発掘発信レポーター(ハツレポーター)」が、「魅力発掘発信レポート(ハツレポ)」を通じてそれぞれが愛するローカルの魅力を発信しています。

「ロカフェス」は、年に1度の「ローカリティ!」のアニバーサリー記念のフェスティバルで、3周年を迎えた今年も「ロカフェス2023」を開催することができました。

オープニングトークとして行われた、「ローカリティ!」編集長であり「ローカリティ!」の運営会社イーストタイムズ代表社員CEOの中野宏一と「ローカリティ!」副編集長 兼 イーストタイムズ執行役員Evangelistの畠山智行のトークセッションの様子を前編、後編に渡ってお届けします。

ローカルには魅力がないと言われる現状の中で、発信の問題に着目し、「あなたの驚き感動発見には価値がある」をテーマにして始まった「ローカリティ!」。現場性を大切にし、そこにいる人が見て感じたことが発信される世の中を目指すローカリティは日本に留まることなく、アジア、そしてその先へと向かうメディアとなっていきます。前編では、「ローカリティ!」が始まった経緯から目指す姿について考える内容となりました。編集長が考えるこれからの「ローカリティ!」はいったいどんな姿なのでしょうか。

中野宏一(なかのこういち)合同会社イーストタイムズ代表社員CEO 兼 「ローカリティ!」編集長。1984年、秋田県湯沢市生まれ、埼玉県育ち。東京大学 法学部卒、東京大学 公共政策大学院修了。朝日新聞東京本社にて校閲記者を3年間経験後、社会トレンド分析ツールを開発するベンチャー企業に入社し、企業、政党等にソーシャルPRのコンサルティングを行う。その後仙台に移住し、2015年、震災報道と地域報道を行う独立系報道機関としてTHE EAST TIMESを創業。現在、ローカルに限らず地域や企業のブランディングやプロモーション事業を展開。

「ローカルには何もないと言われる理由は『魅力の発信』にある」ローカリティ!が始まった経緯とは

畠山>ローカリティ!は2020年に誕生したメディアで「あなたの驚き発見感動には価値がある」をテーマに運営して、3周年を迎えます。現在ではハツレポーターは400人、ハツレポはまもなく1000投稿、掲載自治体は239自治体、全国の自治体の13%をカバーしています。まず、そもそもローカリティってどういう経緯ではじまったの?というところに触れていきたいのですが、いかがでしょうか。 

中野>私は2015年に仙台で個人事業主として起業をしました。起業した当初はYahoo!と契約をしてYahoo!ニュースでローカルの記事を書きまくっていました。結果、1か月で1200万アクセスを記録しました。よく地方には魅力がないと言われますが、やっぱりローカルには魅力があって、伝わるような書き方さえすれば、その魅力は伝わるよねと思いました。その時、ローカルには魅力があるにもかかわらず、発信されていないからローカルにはなにもないと思われて、衰退していると思ったんです。

当時は私ともう1人の2人でやっていましたが、ローカルの魅力を網羅しようとすると到底2人では書ききれないと思いました。そこで、現場にいる住民の方に自分たちの技術を教えて、その人たちがローカルの魅力を発信するメディアができないかと考えるようになりました。それが現在のローカリティ!となっています。

ローカリティ!が目指す、「現場にいる住民が見て感じたことが発信される世の中」

畠山>そんな感じで紆余曲折あったわけですね。そうなると起業から8年ぐらいがたっているわけですが、そもそもローカリティが目指していることってなんでしょうか。

中野>ローカルの魅力が全然発信されていないという課題感があるという中で、ローカルの魅力の発信の担い手はプロの記者がやる時代は終わったんじゃないかと考えています。

なぜかというと、ニュースとして一番大切なことは現場性だからです。つまり、現場にいてそこにいる人が実際に見て感じて、これは誰かに伝える情報だと思って伝えるのがジャーナリズムだと思っています。

それを行うのはプロである必要がないと思っていて、私は遠くのプロよりも現場の素人だと思っています。現場は取材の記者が来てくれるまで待っていて、取材が来たら発信されるような時代は終わりました。なので、現場にいる住民が実際に見て感じたことが発信される世の中になっていくことをローカリティ!として実現したいですね。 

畠山>災害報道や戦争の情報などテレビでも現場のSNSを取り上げることがありますよね。今後、大きなメディアをかませる必要がなくなってくる可能性はありますね。

中野>この変化はここ5〜6年で起きたんですよ。私が朝日新聞の記者だった時代はSNSをソースにニュースを書くのは恥でした。「SNSで 見たものをそのまま書くな!」という時代でした。だけど、この10年ですごく変わって、戦争の報道などでもSNSと照らし合わせて報道をするという報道機関もあります。なので、ローカリティ!はそもそもローカルの魅力を発信するのは、遠くにいるプロよりも現場にいてスマホを持っている人の方が良いんじゃないかというのが、思想のコアになっています。

畠山>なるほど。では、そういうようなレポーターが増えていくと世の中はどうなっていくのでしょうか。

中野>阿佐ヶ谷のコロッケ現象が起きなくなります!

畠山>何ですかそれ?(笑)

中野>これは僕が作った言葉なんですが、テレビをつけるとこんなシーンをよく見かけると思うんです。タレントさんが阿佐ヶ谷の街を歩いて、コロッケを食べて、「おいしい!」と発言するといったシーン。その情報をみると、全国の人たちが阿佐ヶ谷のコロッケっておいしいんだと思い、それで阿佐ヶ谷に行ってみようかなとなると思うんです。

でもたぶん、コロッケのおいしいところって日本全国にあると思うんですよね。けど、テレビでそう報じられるのはなぜでしょうか。 

これは、東京のキー局が予算をかけずに行ける範囲での取材をしているだけなのです。東京ばかり報道されて、自分の地元は報道されないから魅力がないと思ってしまうんです。それを解決できるのはローカリティ!だと思っています。

「ローカルとは地理的概念じゃない。心の中で自分が大切に思っている人や場所、モノこそローカルだ」

畠山>あと、よく出るのが「ローカリティ!が考えるローカル」って何?という議論。これはどう考えていますか?

中野>ローカルは地理的な概念じゃないと思っています。ローカルは自分が大切に思う存在、自分がなぜかひっかかっていること、人や場所、モノを指します。

ローカルの直訳は地元という意味ですが、場所的な意味だけではなく、そこに含まれている得も言えぬもの、きっても捨てきれないものをローカルと言うと思っています。

畠山>なかなか抽象的な話でしたけど、今話題のイスラエルの話がまさにそうですよね。中世とかだとユダヤ人は土地を持っていませんでした。土地的なローカルは持っていない中で心の中にローカルがあったということですよね。

中野>ローカルは必ずしも土地でなくてよくて、その人が心の中で思っている価値が私はローカルであると思っています。私は、「ローカリティ!スクール」という魅力発掘発信の講座を今まで150回ほど行い、3000人ぐらいが受講しています。その際にローカルとはなにかという話をするんです。受講生の多くは誰もが知っている名所、三大○○とかじゃないといけないと思っています。でも、そうなるとほとんどが魅力のない場所となってしまいます。それでも、日本全国ではなかなか取り上げられないけど、自分はここが好きだと思っていることがたくさんあると思うんです。

今までの世の中は、自分が大切に思っている人や場所、モノがあるにもかかわらず、「それってあなたの感想だよね」って言われる社会でした。そのような社会の中では、地方は滅びます。合理的に言えば みんな東京に住むと思いますが、東京に住まないのは個人的に大切に思っている人や場所、モノがあるからです。

 SNSが発展した世の中では、それが個人の中に留まるのではなく、発信をすることによって誰かの共感を呼ぶのではないかと思っています。

「ローカリティ!」は日本に留まらない!?「あなたの驚き発見感動こそが価値であると全ての人に伝えたい」

畠山>今のようなローカルの話をすると、ローカリティ!は日本に留まっている必要はないのではないでしょうか。

中野>先ほども話したようにローカルは地理的な概念ではなく、自分が大切に思う人や場所、モノ、気持ち自体の価値であると思っています。そこに対して共感する人はもっと多くいるはずで、そう考えると日本に留まる必要はありませんね。この星に住む全ての人たちに妥当すると思うんですよ。この星に住む、全ての人に「あなたの驚き発見感動には価値がある」と伝えたいです。 

そして、その人の思う価値に「私もだよ」って共感する社会にしたいんです。そういう世の中が実現すると自爆テロなどが起こらないのではないかと思っています。

畠山>それはなぜでしょうか。

中野>自爆テロを起こすような人は現世より来世、死後の世界の方がリアリティを持ってしまうんです。一番の共感者は来世ではなく、現世に存在する必要があります。その人の気持ちを大切にしてくれる共感者が現世に存在すれば、絶望はできないと思います。

もっと言えば、ガザ地区のレポーターも欲しいですよね。戦争のことというよりも普段どういう生活をしてるのか気になりますね。

畠山>非日常の中にある日常を知りたいですよね。困難な状況の中にも幸せなことはあるはずですからね。

中野>日常の中にあるものが本当の価値ですね。非日常の中にある日常も価値があります。今回の件で、いったい彼らは何に絶望をしたんだろうか、その絶望を防げなかったのか知りたいです。パレスチナの問題は最近の話ではなく、20年ぐらい前から報道されていました。

その時、当時の私はなぜあの人たちは自爆テロをやっているんだろうと考えていました。おそらく、彼らの中には絶望があったんだと思います。なぜ絶望が生まれるのかというと、「自分の本当の気持ちがわかる人はいない」という思いがあったのではないかと思うんです。私はそういう考え方を壊したいです。あなたが思っていること、それこそ価値だと伝えたいです。そこに価値があると信じることがローカリティのあるべき姿だと考えています。

後編に続く 

ローカリティ!編集部

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