私たちは、いつ病気やけがをするかわかりません。
そんな時、病院や手術室ではカテーテルや人工関節、縫合糸、点滴セットなど、命を支えるさまざまな医療機器や医療材料が使われています。それらを必要な時に、必要な場所へ届けているのが、医療機器ディーラーメディアスホールディングス株式会社です。
医療機器ディーラーと聞くと、病院に必要なものを届ける仕事を想像するかもしれません。しかし、同社取締役専務執行役員 コーポレート統括本部長の芥川浩之さんのお話から見えてきたのは、それだけではない姿でした。

同社では100万点を超える医療材料を扱い、社員が疾患や治療の知識を学びながら、医療現場を支えています。また、創業以来変わらない「地域医療への貢献」という理念に共感した各地域の医療機器卸会社がグループに集まることで、その輪を広げてきました。
今回の取材では、単なる「販売」ではなく、医療を支えるチームの一員としての責任と、“医療を止めない”ために挑戦を続ける同社の取り組みについて伺いました。
目次
戦後復興期に医療材料を調達し続ける。“地域医療への貢献”という理念
メディアスホールディングス株式会社は、各地域で医療機器卸として歩んできた事業会社を統括しています。同じ理念のもとに集まった各地域の企業は、メディアスグループとして成長してきました。そのルーツは、戦後間もない昭和20年代までさかのぼります。
当時は「現代医療」という概念が立ち上がってきた黎明期でした。地方では、必要な医療機器や材料が十分に手に入らない時代。そのころ全国にいた創業者たちは、医科器械類を扱う問屋が並ぶ東京・本郷まで夜行列車で足を運び、医療機器や材料を仕入れてそれぞれの地元へ持ち帰っていたといいます。
持ち帰った後は、金属の注射針や薬包といった医療材料をクリニックや開業医などに届けることをメイン事業とし、やがて包帯や衛生材料も扱うようになり、医療機器を卸すという事業が形成されていきました。
時は進み、1970年代以降。
医療現場でディスポーザブル(使い捨て)製品が普及するようになりました。ガラス製の注射器や、金属でできた注射針は使い回しが前提のため、感染症を引き起こすリスクがあることが知られるようになったためです。同社も医療の進化に伴走しながら、ディスポーザブル製品を扱うようになります。
芥川さんは、「地方で医療を止めないために、必要なものを届け続けることが自分たちの役割だった」と語ります。
「地域医療への貢献」という同社の理念は、地域医療を支えるという創業時の強い使命から生まれたものでした。その思いは現在も変わらず、同じ志を持つ各地域の企業がメディアスグループとしてつながり、今日も“地域医療を支える輪”を全国へと広げています。
マスクから人工関節まで。100万点を超える医療材料を扱う
医療製品といって、私たちが想像しやすいのはマスクや体温計、包帯といった身近な製品です。同社では、もちろんこれらの製品も取り扱っていますが、手術などの高度医療、たとえば、縫合糸や人工関節、循環器治療に使用されるカテーテル、ステントなども扱っています。命の危機に直面する医療現場の製品です。
取り扱い製品の管理データには、100万点を超える医療材料が登録されています。
「止血に使う製品一つにしても、先生によって選ぶものは違う。長年の経験や病院ごとの流派。これらによって必要とされる製品が変わる」
だからこそ膨大なデータを管理し、必要な製品を、必要な時に届けられる体制を整えていると芥川さんは話します。
「売るだけではない」医療チームの一員として現場を支える
メディアスグループは、医療材料を卸すだけの会社ではありません。
「医療現場にどう貢献しなければいけないか」
芥川さんが話すその言葉通り、例えば、手術の前には実際に病院へ出向き、医師や看護師とのカンファレンスに参加し、事前に必要な材料を確認し、準備をします。
「現場とのコミュニケーションがないとできない仕事です」
芥川さんによると、同社へ入社した社員は主要な製品を覚えながら人体の構造や、疾患の理解を深めていくといいます。医療現場での営業経験を積みながら概要を抑えるのに約3年もの時間を要します。
その姿は、まさに医療チームの一員。医者や看護師以外の立場から、「命を助ける“縁の下の力持ち”」という意識で仕事をしています。
「医療を止めない」震災で実感したメディアスグループで成し得る力
東日本大震災では、医療機器メーカーの多くの物流拠点が被災し、関東では医療材料の供給が不足する事態になりました。そんななか、メディアスグループでは各メーカーとの協力体制や各地域にあった物流倉庫の商品を融通して、可能な限り医療機関にお届けすることができたといいます。 グループ会社同士で広域の物流ネットワークを持っていたことが、功を奏する結果となりました。
「各地域にグループが広がることで、有事の時に支え合える。利益度外視でも、医療を止めるべきではない」
芥川さんの言葉からは、災害時にも医療現場を守り抜くという覚悟が、会社全体、グループ全体、そして社員一人ひとりに浸透していることが伝わります。
コスト削減や物流改革で病院経営を支える。“売って終わりではない”
病院経営は現在、約7割が赤字と言われています。そのなかで同社は、医療材料の供給だけでなく、病院運営そのものを支える取り組みにも力を入れています。
一つ目がDXでの支援です。代表的なのが、医療費に占める医療材料コストの削減提案。昨今の価格高騰により、医療材料も値上がりをしています。そんななか、同じ効果をもたらす別のものでも安価になるものがあります。膨大な医療材料のデータを活用し、代替品の提案を行うことができます。
二つ目は物流改革です。物流現場の人材不足が進む中、同社では大手医療機器ディーラーとの共同研究を進めています。たとえば、同社と都内ディーラーの製品が同じ病院に保管されている場合、共同配送によって効率化を図るといった取り組みです。まだ試験的な段階ではありますが、医療流通のあり方そのものを見直す動きが始まっています。
「医療を止めないということを念頭に置いている」
売って終わりではなく、病院経営を支え、医療流通の裏側を下支えすること。それもまた、同社が担う重要な役割になっています。
子どもたちへ、“未来の地域医療”をつなぐ
同社グループでは、医療体験イベント「メディメッセージ」を開催しています。小学生や中学生といった将来を担う子どもたちを対象に手術室を再現した部屋で、腹腔鏡手術の模擬体験、ロボット手術の操作体験などを実施。

子どもたちが楽しみながら医療の細部の仕事に触れられる場です。「未来の地域医療への貢献につながっている」。芥川さんはこの取り組みについて説明します。
「不整脈はこういった症状です」「心臓病の治療はこのように行います」「この手術にはこんな機械を使います」など同社の社員が、病気や治療法、医療機器について説明する機会もあります。
子どもたちへ自分たちがしていることを伝えることで、社員自身が自分たちの仕事を見つめ直す機会にもなっているそうです。医療を支える仕事の価値を、地域に伝える。そして子どもたちなどの次の世代へ橋渡しを行っています。

「その先には患者さんの命がある」
医療機器卸の仕事は、病院などへ医療材料を「届ける」だけ。そう思われる方が多いかもしれません。しかし、メディアスグループの仕事は、そうではありません。
社員は医療知識や人体の構造について学習を重ねています。主要な製品を覚え、疾患や治療への理解を深め、医療職のカンファレンスなどにも参加しながら、実際の医療現場を知っていきます。
病院へ必要なものを届け続けること。
緊急時に医療材料を確保すること。
物流を止めないこと。
そのすべてが、患者さんの命につながっています。
医師や看護師のように、患者さんへ直接医療行為を行う仕事ではありません。しかし、その医療が滞りなく行われるよう支える存在です。地域医療の“縁の下”から、今日も命を支え続けています。
「その先には患者さんの命がある」
芥川さんのその言葉からは、「地域医療への貢献」という理念を、現場で実践し続ける強い覚悟が伝わってきました。
もっとも印象に残った言葉:「その先には患者さんの命がある」
聞き手:三芳洋瑛 天野崇子 構成・執筆:天野崇子 足立尚典
写真提供:メディアスホールディングス株式会社
企業情報
企業名:メディアスホールディングス株式会社
取材対象:取締役専務執行役員・コーポレート統括本部長 芥川浩之さん
企業理念:地域医療への貢献
事業内容:医療機器販売事業 ソリューション事業 介護・福祉事業
住所: 東京都千代田区有楽町一丁目2番2号 東宝日比谷ビル
HP:https://www.medius.co.jp/






