秋田県大仙市協和に2019年7月にオープンしたカフェ・ネノリア。
店長の田澤晃子(たざわ・あきこ)さんはハンドメイド好きが高じて、ハンドメイド雑貨を委託販売するレンタルボックスを併設したカフェをオープンさせました。
しかし、順調に客足が伸びてきたオープンから半年を過ぎたころ、コロナの直撃を受けお店は閉店の危機にさらされてしまいます。
田澤さんは持ち前の明るさと、それまでの経験や機転を総動員し、肉食系のテイクアウトサービスを始めたところ、予想以上に地域の人たちに求められる人気店となりました。
そんな大きな逆転劇を成功させた田澤さんにどんな努力や工夫があったのか、田澤さんの知られざる魅力を取材してみました。
目次
■こだわりの作品が並ぶお洒落な店内
木目を基調とした落ち着いた店内には、さまざまな作家さんの魅力的な作品が所狭しと並んでいます。
ハンドメイド雑貨を扱うお店を持つことは昔からの夢だった田澤さん。
「子育ても一段落し数年前からコツコツと準備を重ね、少しだけれど資金も用意ができた。夢を叶えられるのは今しかない!」
と一念発起してのオープンだったそうです。
それまでハンドメイトは「自分の趣味」で、イベントへの出店などを主にしていたそうですが、その中でも特に人とのつながりを大切にしていた田澤さん。
田澤さんがお店を開くと聞きつけ、交流のあった作家さんが集まり、オープン当初で8人もの委託作家さんが集まってくれたそうです。
■コロナの直撃
オープンから半年が過ぎハンドメイド雑貨の品数も増え、安定してお客様が訪れるようになってきた2020年の春、コロナの影響でパッタリと客足が途絶え、お店は閉店の危機にさらされてしまいます。
作家さんを講師に招き、ワークショップなどを開催しようと動き出した矢先のことでした。
1日の売り上げがコーヒー1杯分という日もあり不安が続くなか、「自分の人生を賭けて始めたお店を潰すわけにいかない」と田澤さんは知恵を絞ります。
■「おかあさん」としてのありのままを、すべてのメニューに盛り込む
この地域にテイクアウトを提供するお店がひとつもないこと、そして、コロナによって自宅で過ごすことを余儀なくされているお客様に少しでも明るく美味しい食卓を囲んでもらいたいと、考えに考えた結果、田澤さんはテイクアウトサービスを始める決意をしました。
これまで、仕事として飲食業に関わった経験がほとんどなかった田澤さんでしたが、子育てを終え、「おかあさん」として「自分が今までやってきたありのまま」をメニューに盛り込みます。
自分の子供達が喜んだ、エビフライや唐揚げ、カツサンドやスペアリブなど、ボリュームにこだわった肉食系のメニューを次々に考案しました。
野菜などもふんだんに使用し、見た目の美しさにもこだわりました。
いろどりの美しいフルーツサンドは季節ごとの旬の果物を使用し、それぞれの果物の断面を効果的に見せたり、フルーツの甘みの邪魔をせず、たっぷりクリームを使用してもくどくならない味を研究したといいます。
Instagramなどに、美しくできたメニューの写真を撮影し発信も始めました。
そして、県や市が実施した支援策なども取り入れ、お得に便利にテイクアウトを利用できる割引制度を活用したり、スマホ決済もいち早く導入し、お客様の立場になりお客様を大切にする努力を惜しまず取り組みました。
■テイクアウトサービスが地域になくてはならない特別な存在に
高齢化が著しいこの地域では、ほとんどの飲食店が閉店しています。
そんななか始まったカフェ・ネノリアのテイクアウトサービスは、地域の人々がイベントや家族のお祝いなどで利用してくれるようになりました。
「誕生会や合格祝いなどのプライベートにも関わらせてもらう、お客様にとっての特別な存在になることができてとても嬉しい」
そう話す田澤さんの元には、ハンドメイドの作品がますます増え、現在は13人の作家さんの作品が所狭しと並び、お店は地域の人々の交流の場にもなっています。
「コロナのせいで想定外のことばかり。テイクアウト屋さんになろうとは夢にも思わなかったけれど、テイクアウトサービスを始めたおかげで店を訪れてくれる人も増えています。自分ができることを知恵を絞って、これからも地域に愛されるお店にしていきたいと思います」
人とのつながりを丁寧に、そしてそれをとても大切にしている田澤さん。
困難なことにも知恵を絞って取り組むその姿勢は、結果として大きな逆転を生み、そしてたくさんの人たちを引き寄せ、地域の活性を生み出しています。
そんな田澤さんの挑戦はこれからもまだまだ続きます。
もし近くを訪れる機会があれば、素敵な雑貨と美味しいメニューが楽しめる、カフェ・ネノリアに是非遊びに来てくださいね!
《店舗情報》
大仙市協和船岡字合貝106-1
電話018-827-7207