〜この記事は、株式会社JTBふるさと開発事業部と合同会社イーストタイムズが共同で取り組んでいる「ローカル魅力発掘発信プロジェクト」から生まれたハツレポです〜
旧日本軍の航空基地施設を活用した蔵には、黒い染みがついた木の桶がずらり。「この木桶が伝統のみその味を“育て”てくれているんですよ」。野田味噌(みそ)商店の4代目・野田好成(のだよしなり)さん(38)が、1928年の創業当時から変わらないみその味の秘密を教えてくれました。
ご近所さんからの“委託”が原点 みその“個性”を大切に
愛知県豊田市桝塚西(ますづかにし)町で、代々みそ屋を営んできた野田味噌商店。初代が農業のかたわらみそ作りをしており、ご近所さんから頼まれたことが始まりです。数件から始まったみそ作りの依頼は、気づけば5万軒越え。「桝塚味噌(ますづかみそ)」として、全国に名を広めていきました。
大手で大量生産されるみそは、徹底した温度管理や、発酵に欠かせない微生物をすきこむなどして作られます。一方の野田味噌商店では、木桶に棲み付いた乳酸菌や酵母菌を季節の温度差によって活発化させることでみそを作ります。創業前から合わせて150年以上使っている木桶もあり、唯一の味を受け継いできました。
自然の力によって“育て”られる桝塚味噌は、一つとして同じものはありません。気温や湿度など、ささいな影響が味わいに深みをもたらしてくれます。野田さんは、そんなみその違いを“個性”として大切にしているそう。
食育でみそを次世代へ 東京でもみそ作り教室を展開
25年ほど前から、県内の子どもたちへ地元の味や伝統製法を伝える食育も始めました。「県内の学校給食の半数は桝塚味噌」というだけあり、毎年、多くの小学生らが蔵の見学に訪れます。さらに東京でもみそ作り教室を開いているんだとか。
家庭の食卓が多様化し、みその消費量が減りゆく中でも、伝統を守り、みその魅力を発信し続けている野田味噌商店。「みそのおいしさを伝えたい」。野田さんは今日も蔵に立ちます。
(大石茜さん)