沖縄県は2023年度、たくさんの「お宝=魅力」をもつ離島各所の事業者さんたちが、SNSなどの『デジタルツール』を利用してさらに魅力的な発信をしていけるように「沖縄県主催🌺価値を伝えて売りまくるためのデジバズ講座」という取り組みを行っています。この記事は、参加された事業者さんを対象に、「ローカリティ!」のレポーターがその輝く魅力を取材し執筆したものです。沖縄離島の魅力をご堪能ください。
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宮古島の工芸・民芸の文化を広める母娘の思いのリレー
沖縄県宮古島にある琉球COLLECTION叶は、現代表の萬矢叶子(よろずや・かなこ)さんのお母様が「高い芸術性を持った沖縄の作家さんの手仕事やこだわりのある陶芸品・民芸品を広く紹介したい」との思いを持って2005年に立ち上げた。
2021年現代表に引き継ぐまで、工芸が好きだったお母様が島内に限らず沖縄本島も含めて月に一度は様々な作家さんに出会いセレクトした商品を販売していた。現代表が引き継いだのは折しもコロナ禍。作家さんたちと直接会って話をすることもままならず先代とは違う面で苦労があったそうだ。
萬矢さんは生まれも育ちも宮古島。高校入学を機に島を離れ大学進学、就職、結婚、出産を経て事業継承のためご家族を説得して宮古島へ戻ってきた。実はお母様が地元宮古島市の教育長のオファーを受けたことで萬矢さんが引き継ぐ決意をしたのですが、もともと「子育てをするなら宮古島で」と思っていたそうで、このタイミングをとてもポジティブに捉えたという。
作品セレクトの陰にぬくもりある信頼関係づくり
帰島前は、IT企業でお勤めだった萬矢さん。「メールを開く手間さえ省きたい」くらい効率的なお仕事を目指していたそう。宮古島に帰って「その全く真逆の環境だ」とほほ笑んだ。
先代からのお付き合いのある作家さん達は、80歳を越える人生の先輩方もいるそうで、じっくりと語り合う時間の大切さを学んだという。そのような中で先代から15年以上もお付き合いが続く作家さん達から「叶さんには作品の厳選にこだわりを感じる」とのお声もある。そして、それを理解したうえでクオリティと芸術性の高い作品の提供が続いている。
創業当時からお土産物屋さんの域ではない特別な工芸・民芸の取り扱いにこだわってきた琉球COLLECTION叶の深い思いと歴史を感じる。
「宮古島の工芸文化をたくさんの方へ届けたい」
最近ではギャラリー感覚でお店を訪れる観光客が多くなってきた中で、「宮古島の作品を知りたい、宮古島の文化に触れてみたい」と来店される方も増えているそう。
例えば、宮古上布を使った商品。宮古上布は宮古島で作られている織物で苧麻(ちょま)という麻の繊維で作った糸で織られる麻織物である。糸にするところから始まって製品に仕上がるまでに何人もの人の手仕事が重なって形になる。高い希少性と芸術性を持った工芸品宮古上布を使ってオリジナルストールやアート作品の制作にも取り組んでいるそう。他にも琉球ガラスの原料に宮古島の泡盛の廃瓶を使用したり、若い陶芸作家とコラボする等オリジナル食器の製作化にも力を注いでいる。
特別感のあるお土産を目指して、宮古島の材料を使い海を表現した和菓子やお香を手掛け、好評を得ているという。
現在は、萬矢さんが手作りをしているとのことで、量産が出来ないのが逆に希少価値を高めている。島内の方が島外の方へ贈る手土産としても喜ばれているそう。
島外に出たからこそ見えた宮古島の素晴しさ
萬矢さんに宮古島の好きなところを聞くと「自然と人が共生、共存しているところ、皆が助け合う文化があるところ」だと話す。また「島に帰って来て、自然と人とは切り離せないんだなぁと感じている」とも。
島外に居た時はあたり前だったこととの、真逆にある島の暮らしで「人と人が密で、良い意味で干渉し合う感じが良い」と今はその暮らしをじっくり楽しんでいる様子を感じさせる。
お店に並ぶ作品は、人気の作家さんの物になると数年先まで予定されているそうで、旅行者のみならず地元の方の気軽に楽しめるギャラリーとして、島の芸術性の高い工芸・民芸の文化を島の内外に益々広めてゆきたいと、静かな中に深い情熱を感じた。