皿うどんといえば、細くてパリパリに揚げた麺の上に、とろりとした五目あんがかかっているものだと思い込んでいました。関西出身の筆者は、長崎市内の中華街で「本場の皿うどん」を食べようと注文したところ、目の前に現れたのは“あんかけ焼きそば”!?えっ、これが皿うどん!?そこから、私の“皿うどん観”が大きく揺れ動いたのです。
パリパリじゃない!?本場で出会った意外な皿うどん

地元の人にも、観光客にも人気の長崎新地中華街の「江山楼(こうざんろう)」
2024年1月筆者撮影
長崎市内の中華街で皿うどんを注文したときのこと。てっきり、細い揚げ麺にとろみのあるあんがかかった「パリパリ」スタイルを想像していた筆者の前に出されたのは、しっかり焼き色のついた“太い麺”。その上にはおなじみのあんかけ具材がたっぷり。見た目はまるで「あんかけ焼きそば」のようで、思わず「これ、皿うどんですか?」と店員さんに聞きたくなりました。ここで初めて、“皿うどん=パリパリ”という筆者の常識が、ここでは通用しないことを知ったのです。
大阪の「常識」、長崎の「日常」
筆者の出身・大阪では、町中華や家庭でも“皿うどん”といえば、パリパリの揚げ麺が主流です。市販されている皿うどんセットももちろんパリパリ麺。さらに、全国チェーンのリンガーハットでも、皿うどんは細くてパリッとした麺がスタンダードなのでは?
だからこそ、長崎で出会った皿うどんに驚いたのです。ところが、これこそが元祖なのだと知り、さらに驚きました。
本来の「皿うどん」は、太麺だった!?
農林水産省のサイト「うちの郷土料理」によれば、そもそも皿うどんは、明治32年に「ちゃんぽん」を考案した中華料理店『四海樓(しかいろう)』の店主が作った“汁なしちゃんぽん”がはじまり。その麺はちゃんぽんと同じく太く、焼き付けてあんをかけるスタイルだったとのこと。現在よく食べられているパリパリの細麺タイプは後から派生したもので、長崎では「太麺皿うどん」と「細麺皿うどん」が明確に区別されているそうです。
“本場”の味に触れる楽しさと、違いを知るおもしろさ

長崎大学の近くの「有華飯店」。ほんのり甘いあんがよくからんでおいしい。こんなところに行列が!?と驚く名店
2025年1月筆者撮影
“パリパリが正解”と思っていた皿うどんが、実は“焼きちゃんぽん”のような姿だった。長崎で初めて太麺の皿うどんを食べた筆者は、そのモチモチ感と香ばしさ、そして太麺とあんの相性の良さは、パリパリの揚細麺とは違ったおいしさがあります。
地域に根付いた食文化には、時に「知っているつもり」を揺さぶる驚きがあります。旅行や食の醍醐(だいご)味は、そんな“常識のゆらぎ”に出会うことかもしれません。次に長崎を訪れるときは、ぜひ「太麺派」か「細麺派」か、食べ比べてみてはいかがでしょうか?