せんだい「ハツ」物語 杜の都で日本初と出会う(野球編)【宮城県仙台市】

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伊達六十二万石の城下町、仙台。               

戊辰戦争に敗れ幕藩体制が崩壊した後は、中央集権国家を目指す明治政府によって、東北地方の拠点都市として国の出先機関の設置が進められた。                        

1887(明治20)年に旧制第二高等学校、1907(明治40)年には東北帝国大学が創立され、さらに1871(明治4)年に大日本帝国陸軍の編成のひとつである東北鎮台、1888(明治21)年に陸軍第二師団が置かれた。

「学都」「軍都」という歴史を積み重ねてきた中で、仙台には「日本初」や「発祥の地」の事物が幾つも残っている。       

仙台に残るさまざまな「ハツ」を巡ってみよう。

野球の試合前あいさつ発祥の地旧制二高グラウンド跡(仙台市青葉区)

筆者が地方紙の写真部で若手として働いていたころ、夏の年中行事といえば甲子園の取材だった。全国高等学校野球選手権大会に出場する東北の代表校6チームを全て取材するが、東北人にとって灼熱の甲子園球場はあまりにも過酷すぎた。ダッグアウト脇のカメラ席で三脚に望遠レンズ付きのカメラをセットし、汗だくで試合開始を待つ。プレイボール前に両チームの選手と審判団がホームベースを挟んであいさつする光景を何気なく眺めていた。それが日本のアマチュア野球独特のスタイルで、地元仙台がルーツということを最近になって知った。

広瀬川の東側に位置する片平公園は、かつて旧制二高のグラウンドだった。1911(明治44)年11月、この場所で旧制二高主催の第1回東北六県中等学校野球大会が開かれ、初めて試合前あいさつが行われた。当時、沸き起こっていた「野球害毒論」に対抗して健全性を示すため、「礼に始まり礼に終わる」武道の礼式を手本として生み出されたらしい。

試合前あいさつはその後、1915(大正4)年に始まった全国中等学校優勝野球大会で取り入られるなど、全国に広まり定着した。旧制二高グラウンド跡(片平公園)は、2022(令和4)年に野球伝来150年の記念事業「聖地・名所150選」に認定されている。

片平公園の片隅に立つ「聖地・名所150選」の記念碑。野球グラウンドだった面影はない。
子どもたちの歓声が絶えない片平公園だが、野球に興じる姿を見ることは稀だ。

片平公園から程近い東北大学片平キャンパスには、旧制二高の正門が登録有形文化財として保存されている。 

ベーブ・ルースが来日初ホームランを放つ八木山球場跡(仙台市太白区)

「聖地・名所150選」には、仙台市太白区にある市立動物園「八木山動物公園」も認定されている。動物園と野球の組み合わせは意外に思えるが、もともとこの場所には八木山球場があった。地元の豪商、八木久兵衛(やぎ・きゅうべえ)が所有する土地に私財を投じて建設した野球場で、両翼100㍍、2万人収容という東洋一の規模だった。

1934(昭和9)年11月9日、八木山球場を舞台に米大リーグ選抜と全日本選抜が対戦し、3回裏に「元祖二刀流」のベーブ・ルースがスコアボード右に来日初ホームランを打ち込んだ。さらに8回裏にも第2号を打ち、本塁打王としての実力を見せつけた。「野球の神様」の活躍を後世に伝えようと2002(平成14)年、市民有志が動物園の敷地内にベーブ・ルースの銅像を建てた。

来日初ホームランの打球が落下した場所にベーブ・ルースの銅像が建てられた。

豪快なスイングの瞬間を捉えた銅像は188㌢の等身大だ。

ベーブ・ルース像はアフリカ園のクロサイ屋外展示場と向かい合っている。

佐瀬雅行

佐瀬雅行

宮城県仙台市

第7期ハツレポーター

仙台市在住。地方紙の写真記者として東北各地を取材する。2014年に独立、東北地方の風土などをテーマに撮影を続けている。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員

3 件のコメント

  1. 大谷翔平で湧くMLbで何かと話題になるベーブルースの初来日の像が、ここ仙台に存在することは最とメジャーになっても良い!
    東京在住で盆、正月のみ故郷で過ごしていますが年齢と共に地元の良さを実感しています。

    • 吉本様
      はじめましてコメントありがとうございます、ローカリティ!編集部です!
      佐瀬さんの情報と写真はとても魅力的ですよね。地域の人だからこそ知りうる情報が満載なのがローカリティ!です。引き続きご愛読よろしくお願いいたします~♡

    • 吉本様

      コメントをお寄せいただき、ありがとうございます。
      東京での学生生活をのぞいて、ずっと仙台で暮らしてきましたが、都市機能と自然のバランスが取れた住み良い街だと実感しております。また、歴史的にも様々なエピソードを秘めながら意外と知られていません。微力ながら仙台に魅力を発信し続けますので、お読みいただければ幸いです。
      佐瀬

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