沖縄県南大東島は沖縄本島の約400km東方に位置する島です。もともと無人島であった南大東島の開拓が始まったのは1900年(明治33年)。台風の多い島だけに、島の暮らしを守るため開拓者たちによって※タマヌの木が防風林として島中に植えられ大事に育てられてきました。
ごつごつとした力強い幹や枝は激しい台風の潮風からサトウキビや人々を守り続け、その面積当たりの樹木数は世界一といわれています。
※タマヌの木=和名はテリハボク。南大東島の方言でヤラブとよばれている。
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「もしこのオイルが化粧品や医薬品になるなら、宝の木になるかもしれない!」
沖縄県那覇市で合同会社結プロジェクトを運営する油井やよいさんは、南大東島とは縁もゆかりも全くありませんでした。ある時、沖縄県国頭村(くにがみそん)で事業化している「やんばる森のつばき」の創業者との縁でオイル商品に興味を持ち、またその方の縁で、タヒチやハワイなど南太平洋の島々ではタマヌの種子から油を搾って化粧品や治療薬として使用し、昔から重宝してきたという情報を入手しました。
南大東島にはたくさんのタマヌの木が植えられているにもかかわらず、タマヌの種子は苗木用以外にはまったく利用されていないことを知った油井さん。
「総本数13万4千本、総延長にして53キロで面積あたりでの植えた数は世界一。これが化粧品や医薬品になるなら、南大東島のタマヌの木は宝の木になるかもしれない」と南大東村へ提案したのが始まりだそうです。
高品質な成分のオイルが採れた!
タマヌの実は南北両大東島のみに生息するダイトウオオコウモリの大好物で、黄色く色づいた実を種を残してきれいに食べてくれます。コウモリが選んで食べる実は種にも栄養成分が多く、しかもコウモリが果肉を食べてくれることで種が乾燥しやすく殻も割りやすいというメリットが多いのだとか。
その種を拾ってよく乾燥させ殻を割り、中の白い「仁」とよばれる部分を時間をかけて丁寧に絞ることでオイルが採れるのです。現在も続けられている植林の苗木を育てるためだけに、一部だけが使用されていましたが、これまでそれ以外の種子は捨てられていたといいます。
南大東島豊かな村づくり協議会として、村とともにオイルを絞るための施設を建設し、村の人たちが丁寧に絞ったオイルの成分を鳥取大学農業部生命環境農業科で調べてもらったところ、数種類の色のバリエーションのオイルの中でも、特に黄金色のものが抗酸化力、ポルフェノールの含量、美白につながるメラニン生成の抑制する成分が多く含まれ、美容への効果が高いことがわかりました。
その結果を受け、黄金色のオイルに限って、ついに「TERIHA」ブランドとして商品化にこぎつけ、タマヌオイルの他にクリームやせっけんの販売も開始しました。
南大東島産の黄金色のタマヌオイルはとても高品質で、皮膚のケアや日焼け止めにも使用でき、アンチエイジング効果が期待され老若男女問わず愛用できるそう。
「ふるさと納税やSNSの活用、イベントへの参加や南大東へ入港するクルーズ船や航空機内での販売、機内誌への掲載、南大東商工会、観光協会などの協力で、販路拡大を進めています」と油井さん。
循環型社会のしくみを作り出す
油井さんは、タマヌオイルをきっかけに沖縄の離島である南大東島の限られた資源を有効利用し、ひとつでも多くの特産品を生みだすことで、多くの人に南大東島を知ってもらいたいという思いで日々事業を行っています。
「タマヌの木は防風林としてサトウキビや島の生活を守り、コウモリとも共生しています。また、種子を利用し地域特産品を作ることで地域が潤い循環型社会を作り出します。今後は商品化されていない黄金色以外のオイルの製品化や、葉や枝の利用も含めて特性を生かし、消費者のニーズに合ったタマヌ商品開発に力を入れていきます」
油井さんが村に提案したことにより、タマヌの木は着実に「宝の木」になり、島の人々を守り、またタマヌオイルを使用した人のお肌も守っています。
今後の新商品の開発によって、さらなる「宝の木」と成長するタマヌの木への期待に目が離せません!