丹波篠山(たんばささやま)は昼夜の寒暖差が大きく、また盆地でもあることから秋から冬にかけ「丹波霧」といわれる濃い霧が発生します。時には数メートル先も見えないくらいの濃い霧が立ち込め、見慣れた街の風景は幻想的な真っ白な世界へと変わります。
“雲の中にいる”そんな経験は飛行機に乗ったとき以外、あまり体験できないと思います。それが丹波篠山では、まるで雲の中を歩くことが体験できます。実は霧と雲の違いは地表に発生すれば「霧」、地表から離れた上空に発生すれば「雲」。見る人の場所によって呼び方の変わる霧も雲は、どちらも同じなのです。太陽に照らされた霧の粒子は肉眼ではっきりと見え、粒は手で掴めるほど濃厚な霧を体で感じることができます。
霧が出る日は曇りや雨のイメージがありますが、丹波篠山では主に霧は晴れた日に発生します。低い地表に発生した霧の上空には遮る雲はなく、時間の経過と共に山肌を生き物のように流れ、太陽に照らされた霧は昼前には消えてしまいます。そして何事もなかったかのように空は青く広がります。朝、カーテンを開けると真っ白だったら今日のお天気は晴れ。地元の人は霧で今日の天気を知ることができるのです。
視界不良や湿度が100%で洗濯物が乾かないなど多くの人に敬遠されがちな霧ですが、農作物にとっては乾燥しがちな季節に潤いを与えるメリットがあります。丹波篠山の名産物である黒豆や山の芋なども霧の影響でうま味を増すといわれています。
数カ月間しか見られない「丹波霧」。丹波篠山を訪れた際は早起きして丹波篠山で雲の中を歩く経験をしてみませんか。近くの山に登れば簡単に雲海を見ることもできます。きっと幻想的な、まるで映画のワンシーンのような光景が見られることでしょう。
渡辺 克人さんの投稿