宿場町や農村風景に癒される、私の生まれ育った町が大変身を遂げている。移住者が移住者を呼んでいるという現象が起きている地域である。
兵庫県丹波篠山市福住(たんばささやましふくすみ)地区は、豊かな緑に包まれた西京街道の宿場町と農村地域であり、古代は山陰道の駅家(うまや)として、小野駅が設置され、中世の戦国時代には山城が築城されていたが、明智光秀の丹波攻めを受けて落城(1577年)。
近世には西京街道と大阪を繋げる街道(能勢街道)が合流する交通の要所として、参勤交代で訪れた大名が宿泊する本陣と脇本陣が置かれ、篠山城へ入る前の宿場町として繁栄していた。
近代では鉄道が敷設されたことで旅客は減少し、近代化の影響を大きく受けなかったことで街並みが今日まで残ることとなった。平成24年(2012年)12月に全国で99番目の伝統的建造物群保存地区に選定されてから10年が経過。これまで41件の改修工事が行われ、移住者は地区周辺を含めると45名を超えている。
近年移住した人の生業を見てみると、イタリアンレストラン、珈琲専門カフェ、ブルワリー、無農薬パン製造、農業、IT業、ガラス作家、クラフト雑貨ショップ、革工芸作家、プロカメラマン等々クリエイティブな職種が多い。
現在は、リモートワークが推奨されていることもあり、市外からの移住者が途絶える気配はない。 保存地区がこうした状況に至るには、空き家活用委員会の活動、地域のまちづくり計画やお試し住宅の整備等、福住の魅力発信をつづけた結果とも言える。
さらに、伝統的建造物群保存地区の制度(伝建制度)事業で、修理した空き家物件を活用した店舗が増えてきており、市外から福住に移住した人々が中心となって活用が進んでいる。地域の歴史や伝統を継承していくとともに、伝建制度をうまく地域の活性化に結び付け、元気で住みやすいまちにしていきたい。
森田忠さんの投稿